クリニック院長のセクハラ・パワハラがひどすぎて… 人を傷つけて喜ぶ「院内パワハラの実態」【後編】

文・塚田牧夫 — 2022.10.1
梨花さん(仮名・32歳)は医療事務として働いていましたが、離婚を機に1年ほど休み、新たなクリニックで働き始めました。そこで、雑用をこなし、クレーム対応に追われ、お昼もろくに食べられないような日々が続いていたそう。そして、さらなる悲劇が待っていたんだとか。当時の状況を詳しく伺いました。

ストレスが溜まり続ける職場

Asian woman sitting in front of the dressing table feeling depressed

「クリニックの院長は、50代後半。普段は物静かな人で、周りの2人の看護師さんがテキパキと仕事をすることで、業務は回っていました。

看護師さんは、それぞれ40代と50代。私がモタモタしていると“遅い!”とピシっと言ってくるような厳しい人たちでした。

電話で患者さんの症状を聞くことがあるんですが、私では判断し切れないこともあり、看護師さんに対応を頼むんですね。

でも、院内が混んでいたりすると、“あとにして”と言われるんですが、伝えるのはこっちですから。イライラする患者さんと看護師さんとの板挟みで、ストレスが溜まる一方でした」

セクハラとパワハラの横行

「クリニックには、よくMRという製薬会社の人が来て、院長に挨拶したり、新薬の説明などをすることがあるんです。

そのMRさんを集め、2か月に1回ぐらいのペースで懇親会が開かれていました。お店を予約して、10人ほどが集まります。そこで、普段はおとなしい院長が、酒を飲むと豹変するんです。

まず、お気に入りの女性のMRさんを自分の両脇に置きます。そして、男性のMRさんたちをこき使い始めます。“飲め”と強制することも。その会は、セクハラとパワハラが横行していました」

地獄の懇親会

「そして院長は、MRさんたちにひとりずつダメ出しをしていくんです。MRさんたちは、営業成績にも関わってくることですから、それを聞くしかないんです。

“はい!”と返事をしながら、なおも院長をおだてていきます。すると、院長の言動はさらにエスカレート。次は、その矛先がスタッフに向きます。

しかし、看護師さんには頭が上がらないのか、不満を言いながらも言葉を濁し、別の事務の女性たちは20代と若いので、あきらめ半分で伝える程度。強い風当たりを受けるのは、私になります。

まず、私の離婚の件に触れ、夫の浮気が原因であることが晒されました。さらに、私にも原因があると言い、私生活にまで口出しされる始末。屈辱的な思いをさせられ、苦痛の時間となることが何回かありました」

転職し新しいスタートを…

Portrait of young woman on beach

「でも、あることが起きて事態が変わりました。新型コロナウィルスの流行です。コロナ禍に入り、定期的に行われていた地獄の懇親会がなくなったんです。

お昼休みも、密にならないよう別々にとるようになり、比較的自由な時間を過ごせるようになりました。とはいえ、今の環境に居続けることはできないと思い、私は転職先を探し始めました。

そこでタイミングよく、家の近くにある小児科のクリニックで医療事務を募集していることを知り、今年からそこに職場を移すことができました。

前職のクリニックとは全然違って、今は周りの人たちと協力しながら、業務をこなすことができています。子どもたちを相手に、穏やかな日々を送れるようになりました」


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セクハラやパワハラに関しては、世間も厳しくなってきたとはいえ、未だに横行している職場もあるようです。抵抗することが難しいときは、その環境から離れる選択をすることも、賢い判断と言えるのかもしれません。

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