戸建てとマンションどっちがいいの? …一級建築士が解説するそれぞれの特徴

取材、文・伊藤順子 — 2024.3.17 — Page 1/2
戸建てとマンション、見た目の違いは歴然ですが、それぞれの特徴をしっかりと把握していますか? 一級建築士のリクドウさんがわかりやすく解説します。どちらに住むか迷っている方はもちろん、すでに決めている方も必見です。

一級建築士が教える「戸建て」と「マンション」の違い

物件 戸建て マンション 一級建築士 違い 特徴 メリット デメリット

まず最初にお伝えしておくと、戸建てもマンションもそれぞれ定義はありません。よく言われるのは、戸建てならその言葉通り、一戸の家、または独立した1つの棟のこと。マンションは集合住宅を指し、アパートとの違いもありません。

今回はおもに購入目的を前提にそれぞれの特徴をお話ししようと思います。

戸建て編

戸建てのいいところ、特徴はこちら!

1. 管理費の支払いが不要

金銭面での大きなポイントとなるのが、マンションでは必須である、修繕積立金等の毎月の管理費が戸建てではかからないということです。自分で管理しなければならないとも言えますが、例えメンテナンスが必要になったとしても自分の工夫次第で出費を抑えることが可能です。

2. 土地が個人の資産になる

戸建てですと土地、建物どちらも所有することになるので資産につながります。マンションは区分所有といって、建物すべてではなく購入した戸の部分の持ち主となり、戸は売却できても土地そのものを売ることはできません。ただ、土地に対する一定の権利は保有しているため、戸を売却する際には相応の土地権利分を含めた資産評価がされることにはなります。

3. 新築ならこだわって建てられる

土地から買って家を建てるのであれば、間取りはもちろん、採光の取り方や壁、床の素材などの細部まで自分好みに仕上げられます。知識に不安がある方は、信頼できるハウスメーカーや設計事務所を見つけてじっくり相談しながら進めましょう。

4. 中古住宅なら土地代+α(上物代)が少なくて済む

戸建ての価格というのは、土地代+上物(建物)代からなり、上物の価値は築年が経つほどに目減りします。ですから、同エリアで同坪数の新築と中古があったとしたら、中古のほうが安く購入できます。場合によっては、上物の価値がゼロで土地代だけで購入できる物件もあるんです。ただ、耐震性やライフライン等の安全性は事前に確認するのがマストです。購入後に発覚では出費がかさみ、結果新築価格と同然ということにもなりかねません。

5. 改修の自由度が高い

メンテナンスの話にもつながりますが、すべてを自分たちで決められますから、より快適な生活をするための改修も資金さえあればフットワーク軽く動くことができます。

6. 比較的「音」を気にしなくていい

上下左右に他人の住む部屋がなく独立しているので、小さなお子さんがいても周囲を気にせずに過ごすことができますし、他者の生活音も気にならないことがほとんどです。但し、立地や周辺環境によっては気になる場合があるので一概には言えません。

7. 換気がいい

6と同様に建物が独立しているので、四方から換気ができます。こちらも、立地によるので一概には言えません。

8. 日が入りやすい

こちらも四方から陽光が差し込みやすいですが、立地によるので一概には言えません。

9. 木造が圧倒的に多い

最近は鉄骨、RC造の家も出てきましたが、圧倒的に多いのは木造です。気になる耐震については、法令に従って建てられていれば問題はありません。

マンション編

マンションのいいところ、特徴はこちら!

1. 建物の価値が下がりにくい

戸建ては建物の価値が年々下がりますが、マンションは建物の価値が下がりにくく、立地によっては購入時より高く売れる場合もあります。将来的に住み替えを考えるのであれば、今後も人気が続くエリアの物件を購入し、時期が来たら売却、そのお金でさらなるよりよい物件を手に入れることも可能です。

2. メンテナンスを管理会社に任せられる

管理費を支払っているぶん、個々で行うメンテナンスはほぼ不要です。

3. セキュリティの安全性が高い

特に築年の浅い高層マンションやタワマンなどの戸数が多いマンションはセキュリティ面を重視している傾向があります。

4. 共用施設が充実している

こちらもおもに高層マンションやタワマンに言えることですが、まるで高級ホテルのようなエントランスがあったり、ジムやプール、会議室等を備えているところも多く、快適性は高いです。

5. 耐震性は十分だが避難時の不安要素がある

先にお伝えしたように、法令に従っていれば建物構造に違いがあっても耐震性に心配はありません。ただ問題なのは、地震の際に、高層マンションやタワマンでエレベーターの閉じ込めが発生した時や、エレベーターが故障した場合の避難の仕方です。近くの階に自動的に止まる仕組みになっていても、実際に被害が大きいと絶対とは言い難いですし、高層階の住民の方が階段で行き来するのは限界があります。そのあたりは十分に留意する必要があります。

6. ゴミを好きな時に出せる

すべてのマンションが該当するわけではありませんが、ゴミ出しが24時間OKのところもあります。

7. 高層階は眺望がいい

高いところほど眺めはいいですよね。非日常体験を日頃から味わえます。

8. 高層マンション、タワマンは駅が近い

第一種低層専用地域、または第二種低層専用地域などには建てられないので、結果的に商業地域や準工業地域に建設されることが多いです。それはつまり駅の近くであったり、周辺が繁華街だったりするので利便性がいいと言えます。

9. 低層マンションなら静かな環境に住める

低層マンションは第一種低層専用地域、または第二種低層専用地域など住居系用途地域にも建てられるので、周辺は住宅が多く、駅から多少離れていても、静かな環境を望む方にはいいと思います。

以上、戸建てとマンションの特徴をご紹介しました。これらがすべてではありません。どちらもメリット、デメリットがあるので、自分の好みやライフスタイル、経済面など諸々を考慮したうえで、最適な住まいを選んでください。納得のいく物件を見つけてくださいね。


窓が少なくてもできる換気の仕方についての記事はコチラをどうぞ。
https://ananweb.jp/anan/402116/

音漏れしやすい物件についての記事はコチラをどうぞ。
https://ananweb.jp/anan/405305/

地震に強い物件についての記事はコチラをどうぞ。
https://ananweb.jp/anan/403929/

教えてくれた人
リクドウさん 一級建築士。設計事務所の管理建築士。普段の仕事は、公共、商業施設の設計がメイン。住まいに対するモットーは「自分らしくいられる、憩いの空間であるべき」。


©Malte Mueller/Getty Images