角部屋はメリットだけじゃない!…一級建築士が明かす人気間取りの真実

取材、文・伊藤順子 — 2024.1.3 — Page 1/2
マンションやアパートなどでは、世間一般的に、真ん中の部屋よりも角部屋がいい、と言われています。理由は? そもそも本当? 一級建築士のリクドウさんが初心者の方向けに、「角部屋のメリット、デメリット」をお伝えします。

一級建築士が教える! 角部屋のメリット、デメリット

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ーー角部屋のメリット、デメリットはどんなものがあるのでしょうか。

いくつかあるのですが、角部屋のメリットは見方を変えればデメリットにもなり得るのが大きなポイントと言えます。ですので、まず角部屋の特徴を挙げて、その項目ごとにそれぞれの良し悪しをお話しますね。

角部屋の特徴1. 窓が多い

片側に部屋がありませんから、真ん中の部屋よりも窓が多い傾向があります。それによりどんな影響があるかというと…。

メリット
日当たりがいい。多くの集合住宅の角部屋では、真ん中の部屋と共通してだいたいの窓は南向きにまず1か所、そして部屋がない側、東か西にあと1か所窓がある場合が多いですから、それだけ日差しの入る時間が長くなるということですね。私はこの点が非常に魅力的だと思います。

次に、換気がいい。換気というのは空気の流れを起こしてあげることが大事でして、開口部が広いほどいいと言われています。ですが、女性のひとり暮らしですと窓をガーッと開け放つのはためらいますよね。そういう場合は、窓が1か所であるならば換気扇を回せば解決できます。でも、2か所窓があれば電気代もかからずムリなく換気ができるんですね。双方の窓を少しだけ開ければOKです(その際は100均などで売っている窓ロックを)。ウイルスだけでなく、カビやにおいの対策にもなります。

そして、眺望がいい。これはすべての角部屋に当てはまらないことではありますが、外の景色は真ん中の部屋よりも広く見えることは確かでしょう。このご時世で在宅時間が増えたでしょうから、居心地の良さを追求するには重要なメリットになると思います。

デメリット
家具の配置に苦労する場合がある。窓が多い、すなわち壁の部分が少ないと言えますから、壁に沿って置きたい本棚、テレビ、ソファ、ベッドなどがうまくハマらない、なんてことが出てきそうです。内見したらできれば幅などを計測し、そのうえで家具の購入や配置のシミュレーションをしておきましょう。

暑すぎる。日当たりがよいと、こんな問題も出てきます。特に西日はけっこうキツいかもしれません。温度上昇だけでなく、日焼け、物の色あせや変質などに注意が必要です。エアコン代も気になるところですね。遮熱、遮光カーテンをつける手もありますが、てっとり早い回避策は、物はしまい、その時間帯は在宅を避ける、でしょうか。

防犯性や、外から見られやすいことからプライバシーの確保性が下がる、という点も挙げられます。2、3階以上であればいいのでは、という油断も禁物です。二重や多重ロック、シャッター、すりガラスなどの不透明ガラス窓を採用している物件を選ぶなどが効果的と言えます。

角部屋の特徴2. 片側に部屋がない

当たり前すぎますけれども、それによる影響は…。

メリット
他人の生活音が気になりにくい。集合住宅における悩みの上位に挙がる騒音問題。曜日や時間帯を変えて複数回内見するなどして入居前に必ずクリアしておきたいですが、角部屋でしたら真ん中の部屋よりはリスクが下がります。

デメリット
逆に外の音が気になる場合もある。隣室のない側が大通りに面していたり、公園や駐車場、人が集まる施設が近くにある場合は、真ん中の部屋よりも音が聞こえやすい場合があります。こちらも内見時に周辺環境や、窓など開口部の防音性能をチェックしておきましょう。

外気の影響を受けやすい。部屋の両側に隣室というワンクッションがあれば、外気に左右されにくく、室温は一定に保てることが多いですが、角部屋ですと片側は外気にさらされますので、そうはいきません。ただ、断熱がしっかり施工されていれば大丈夫でしょう。入居前の確認はマストです。

角部屋の特徴3. もともと需要がある

デメリットを鑑みてもメリットを重視する人が多いのでしょう。そのことがどう影響するのかというと…。

メリット
単調な間取りの多い真ん中の部屋よりも、付加価値のある間取りの部屋が多い。角部屋はそもそも人気があるので、売り手、貸し手はあれこれ価値を上乗せしやすいんですね。それは賃貸よりも分譲のほうがより顕著かもしれません。専有面積が広かったり、ベランダの数が多かったり、窓が広くしかもカーブがついていたり。より高級な演出をしようと思うわけです。ですから、ユニークかつリッチな空間であることも多いです。

デメリット
その結果、家賃が高い傾向がある。例え広さが同じだったとしても、高いケースもあります。求める人が多いですから、売り手貸し手市場になりがちなんですね。ですから、面積が同じで賃料も同じ角部屋があれば、見つけた者勝ちと言えるかもしれません。

以上、角部屋のメリット、デメリットでした。1つの特徴に対する良し悪しを挙げましたが、個人的にデメリットは1つずつ潰していけると思っています。つまりはメリットばかり、角部屋はお得と言えると思います。みなさんの住まい選びの参考になると幸いです。納得のいく物件を見つけてくださいね。

教えてくれた人
リクドウさん 一級建築士。設計事務所の管理建築士。普段の仕事は、公共、商業施設の設計がメイン。住まいに対するモットーは「自分らしくいられる、憩いの空間であるべき」。


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