一級建築士が絶対に選ばない! 「1人暮らしの賃貸物件」基本のき

文・伊藤順子 — 2022.3.13
初めての1人暮らし。新生活を気持ちよくスタートするためにも、部屋選びは後悔したくないですよね。そこで、編集部に寄せられたお悩みや失敗談をもとに、一級建築士のリクドウさんが「おすすめしない1人暮らしの物件」をお伝えします。今回のテーマは、音漏れする部屋の基本的な見分け方、です。

一級建築士が絶対に選ばない! 「1人暮らしの賃貸物件」基本のき

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ーー今回のお悩みです。ご紹介しましょう。

「鉄骨のマンションに住んでいますが、隣人(おそらく上の階?)の生活音が漏れてきてストレスです。自分の生活音も他人に聞かれていると思うと、それも怖くストレスです。
事前に音が漏れやすい物件であると見分けがつくのであれば、そのポイントを教えてほしいです」(34歳・自営業)

リクドウさん(以下略) 騒音や音漏れは大問題です。さんざん苦労してやっと納得できる物件に巡り会えたと思ったら、プライベートがダダ漏れなんて、奈落の底に突き落とされた感じがしますよね。音漏れがしやすい物件とは、一概にコレ! とは断定できませんが、初めて1人暮らしをする方や部屋を借りる方に向けて、超基本的な見分け方をお伝えしますね。キーとなるのは遮音(音を遮る)、吸音(音を吸収する)という防音性が高いかどうか。隙間の有無などを指す気密性、壁や床材の密度、防音材が使われているかなどで変わってきます。

窓やドア、壁などに隙間がなく(=気密性が高い)、壁や床そのものの密度が高いと、話し声やテレビなど空気によって伝わる音は防ぐことができます。ですが、人の足音や椅子を引く音など床や壁を振動させて伝わる音に対しては、壁の厚みくらいで防ぎにくいんです。これはもう致し方ないとご理解をしていただいて話を進めますね。

まず、賃貸向け集合住宅の建物構造はおもに、木造、鉄骨造、RC造(鉄筋コンクリート造)の3種類。コンクリートは遮音性が高く、RC造は柱梁床がRC、壁もRCで造られていることがほとんど。つまり、RC造を選べば音漏れしにくい可能性が高い、ということですね。ただ、なかには、木造や鉄骨造と同じように壁がRCで仕切られていないRC造の物件もあるので絶対とは言えず、注意が必要です。

木造と鉄骨造の比較ですが、違いがでやすいのは床です。鉄骨造はコンクリートスラブで造られている物件もあります。その場合は木造よりも防音性が高いと言えます。

ーー素人でもわかる見分け方はないのでしょうか。

方法はあります。まずやっていただきたいのが、何か所も壁と床を叩くこと。密度の高い壁や床ですと、叩いてみると音が振動せず詰まった感じで短く終わります。逆に中が空洞でスカスカだったりすると、軽くて音が少し響く感じがするんですよ。文字にするとイマイチピンとこないかもしれませんが、実際に何か所か叩くと、その違いがはっきりとわかると思います。

見た目の点で言えば、学校等の施設に無数の小さな穴がある壁や天井がわかりやすいですね。あれは吸音材で見た目で判断できる代表例です。とはいえ、見た目で判断できないものも多いですから、不動産屋さんに聞いてみてください。でも、防音材を使っていても、そもそも壁や床がスカスカだったら防音性は低いわけです。壁や床の密度を重視したほうがいいと思いますね。

壁を叩くのに加えてやっていただきたいことが、その建物の住人の方々が在宅していることが多い時間帯に内見しに行くことです。これは、ある程度の知識がある方からしたら、一級建築士が言うほどのことでもないなんて言われそうですが、でも、物件について全く知らない方にとっては、意外といい情報だと思いますよ。部屋に入ったら生活音が聞こえるか、大きな音を立てる人はいないかじっと耳を澄ませましょう。また、平日と休日とでは、周囲の環境に変化がある場合もありますから、音が気になる方は、日にちや時間帯を変えて複数回の内見をしてみましょう。また、不動産屋さんに騒音についての苦情の有無も確認したほうがいいですね。

ーーでは、お悩みの方のように実際に住んでしまった場合は?

ホームセンターやネットで、簡単に貼ったり、設置したりできる防音材は購入できるので簡易的な対応策は取れます。気密性に対しては内窓をつけるという手もあります。でも、私はやはり、そういう物件を選ばないことに目を向けるべきだと思います。金も時間も労力もかかるじゃないですか。それより、内見や事前調査に時間を割くべきです。物件を選ぶ際は、防音に対する仕上げ方を必ず確認しましょう。

ーー以上、一級建築士が絶対に選ばない! 「1人暮らしの賃貸物件」でした。参考にしてくださいね。

「音が漏れやすい部屋」注意点をおさらい


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教えてくれた人
リクドウさん 一級建築士。設計事務所の管理建築士。普段の仕事は、公共、商業施設の設計がメイン。住まいに対するモットーは「自分らしくいられる、憩いの空間であるべき」。


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