一級建築士が教える! 「地震に強い賃貸物件」の特徴

文・伊藤順子 — 2022.3.5
甚大な被害をもたらした東日本大震災から11年、今年も間もなく3月11日を迎えます。毎年、このタイミングで改めて地震への備えを意識する人も多いでしょう。そこで一級建築士のリクドウさんが、「地震に強い賃貸の特徴」を教えてくれます。1人暮らしを始める方、引っ越しを考え中の方、物件選びの参考にしてくださいね。

一級建築士が教える! 「地震に強い賃貸物件」の特徴


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ーー地震の多い日本において、アパートやマンションなどの賃貸物件選びは、どのような点に注意すればいいでしょうか。

建物の構造と築年数、耐震工法、そして立地が大きなポイントになると思います。それぞれの基本的な説明をしていきますね。

建物構造:火災にも強いRC造がおすすめ!

建物構造はおもに次の4種類に分けられます。

  • 鉄骨鉄筋コンクリート(SRC造)
  • 鉄筋コンクリート(RC造)
  • 鉄骨造(S造)
  • 木造

地震に強い構造はどれだと思いますか? 正解は、後に説明する耐震基準をもとに設計されていれば、どれも差はなく、構造にこだわることはありません。ただSRC造は、高層ビルなど大規模な建物に多く、単身者向けの賃貸物件ではほとんど見られませんので、ここでは例外と考えると、地震による二次災害に多い火災にも強いという点で、RC造がおすすめと言えます。

ちなみに、よく2階建てくらいの木造集合住宅はアパート、それ以外の集合住宅はマンションと呼ばれることが多いですが、明確な決まりはありません。オーナーや不動産屋さんの好みでつけられた場合もあると思いますね。

築年数:2000年以降に建てられた築22年以内のものがベスト!

なぜこの数字を出したかというと、1995年に起きた阪神淡路大震災を教訓に、2000年に建築基準法が改正されたからです(2000年基準と呼ばれます)。地盤に合った基礎工事の徹底、接合部や耐震壁の配置バランスの強化などが追加されました。

え、じゃあ築23年以上はアウトなのかと言ったら、そうではありません。耐震基準法の歴史は、大きく3つに分けられまして、2000年基準が最新なんですね。その前は、1981年に改正されており、これは新耐震基準、それ以前は旧耐震基準と呼ばれています。このうち2000年基準と新耐震基準で建てられたものは、次の内容を満たしていると言えますが、旧耐震基準で建てられたものは保証されていません。

「震度5強程度の中規模地震では軽微な損傷、震度6強から7に達する程度の大規模地震でも倒壊は免れる」(1981年に改正された建築基準法の新耐震基準より)

ですので、新耐震基準で建てられた築41年以内のものがまぁ安心、より手堅くと考えるなら2000年基準で建てられた築22年以内のものが望ましいと言えます。最近はリノベーション物件が注目を集めていますが、特に築年や、古いものなら耐震補強の有無は必ずチェックしましょう。おしゃれな空間も大事ですが、命のほうがもっと大切です。

耐震工法:一番は免震だが、集合住宅はほとんどない!

建物の倒壊や破損などを防ぎ、地震に耐えるための工法を言います。種類と地震の強い順番は次の通り。

  • 免震
  • 制震
  • 耐震

詳しい話は複雑になるので割愛しますが、使われている漢字を見てもらえればおおよその見当がつくと思います。耐震は揺れに耐えられる(でもがっつり揺れます)、制震は揺れを制する(それでも揺れは感じます)、免震は揺れから免れる(ゼロではないがそこまで感じません)、ですね。建物の倒壊は3つとも防げるには変わりありませんが、室内の破損を防げるのは免震と思ってください。免震は病院や公共施設などに多く、一般の集合住宅ではあまり見られません。

東日本大震災時、私は制震工法のビル内にいて、かなり揺れましたが、倒壊や命の危険などの心配はせずに済みました。とはいえ、個人的には耐震工法がされているだけでも十分な安心材料と思えます。予算と相談しながら、よく検討してください。

立地:関東在住ならば武蔵野台地がいいとは限らない

最後は立地ですね。職場から〇分以内とか駅近とか細かい条件は人それぞれあると思いますが、もっと視野を広げて地盤を見ることもけっこう重要だったりします。関東在住であれば、武蔵野台地が比較的しっかりしていると言われています。ですが、最新情報によると武蔵野台地すべてが強いというわけではなく、地盤が弱い場所も存在することがわかりました。また、昔沼だったり川だったりした場所は基本地盤が弱いと考えられますので避けてもいいでしょう。一概には言えませんが、住所に「沢」や「谷」など水辺を連想させる地名がついているところもちょっと意識してもいいかもしれません。国交省のサイトなどを参考に調べることをおすすめします(※)。

そうそう、埋立地が気になる人もいますよね。高層マンションが建っているエリアもあり、それはどうなんだ? とみなさん不安になると思いますが、基本的に問題はありません。なぜなら、地中深くの土丹層などの固い地層に支持杭を打ち込むから、構造上は大丈夫なんです。でも、心理的にちょっと不安になりますよね。余計な心配をしたくなければ、わざわざ埋立地エリアに住まなくてもいいと思います。

以上、大まかに4つのポイントをご紹介しました。ほかに柱は多いほうが安全、1階が駐車場やピロティ(広々とした空間)だと危険、ということも言われますが、それらには築年数が大きく関わってきます。旧耐震基準で建てられたものでしたら、柱は多くても強度が弱ければ倒壊の可能性は高いですし、反対に、新耐震基準で建てられたものであれば、1階が駐車場やピロティであっても倒壊の危険は低いです。自分なりに安心して暮らせる物件を見つけて、気持ちよく新生活を始めましょう。

「地震に強い賃貸物件」ポイント4つをおさらい

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教えてくれた人
リクドウさん 一級建築士。設計事務所の管理建築士。普段の仕事は、公共、商業施設の設計がメイン。住まいに対するモットーは「自分らしくいられる、憩いの空間であるべき」。

※国土地盤情報検索サイト”KuniJiban”
https://www.kunijiban.pwri.go.jp/jp/


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