一級建築士が絶対に選ばない! 「1人暮らしの間取り」

文・伊藤順子 — 2022.2.26
春、草花が勢いよく芽吹くように、満を持して新生活をスタートさせる人は多いでしょう。ひとり暮らしを始める人もいるはず。でも、初めての物件探しは知らないことばかりで、何から手をつけたらいいかわからないですよね。そこで、一級建築士のリクドウさんに、おすすめしない部屋と間取りをお聞きしました。

一級建築士が教える「絶対に選ばない間取り」

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ーーひとり暮らしをする方向けということを前提に、さっそくお聞きします。おすすめしない間取りとは?

シンプルなようでいて深い質問ですね。というのも、何を重視するかでそれは変わるからです。例えばですよ、日当たり良し、築浅で駅近の1R物件があったとします。これって一般的に、良いお部屋、というイメージがあると思いますが、家賃が10万超だったらどうですか? 学生さんや新卒の方には、おすすめできませんよね。もしくは、居室が北向き、という物件。こちらは一般的には、あまり良くない部屋、というイメージですよね。確かに超おすすめ! とは言いにくい。でも、大きな窓が備えてあれば、陽光は差し込まないけれど、淡い穏やかな自然光で暮らせるんです。それを求めている人からしたら、良い物件、と言えます。つまり、一概に言えないんですよ。

ーーなるほど。最初からつまずきました…。

ですから、まず自分はどんな物件に住みたいかを箇条書きで羅列してみましょう。それらから、譲れないもの、逆に妥協できるもの等に分けて、優先順位を決めていくのです。築年数や防犯性、耐震性、アクセスなど条件はいろいろ挙げられますが、今回は、今のご時世に合わせた、「安さと居心地の良さ」を最優先事項としたうえで、私から見たおすすめしない間取りをお伝えするのはどうでしょうか。

ーーなるべくなら安いに越したことはないですし、リモートが増えた人も多いでしょうから、それらは求めがちだと思います。

では、その条件のうえで、「おすすめしない間取り」、いきましょう。すごく基本的なことを言いますよ。

その1. 換気が悪い

窓があればいいじゃん、ではないです。換気って、コロナ対策だけではないんですよ、おっそろしいカビ対策のためでもあるんです。カビとともに過ごす生活って、どこをどう解釈しても不快ですよね。それを防ぐためにも換気はマスト。それには、空気の対流を作ることが肝です。

暖かい空気は上へ、冷たい空気は下へ流れますよね。ですから、理論上は上下に開口部があるといいんです。といっても、窓の多くは縦に長さがあるので、普通に開ければ高低の問題は簡単にクリアできます。とはいえ、開口部はある程度の面積も必要です。でも、女性のひとり暮らしで窓をガーッと大きく開けるのは抵抗がありますよね。その場合は、換気口を2か所作るといいですよ。居室側に1か所、角部屋だったらもう1か所くらい窓のあるところが多いですから、どちらも少し開ければOKです。

窓が1か所しかない物件も、換気扇があれば問題ありません。窓と換気扇、どちらも備えてあり、かつ換気扇はしっかり機能しているかに注意して物件をチェックしましょう。

ちなみに、窓1か所と玄関で2か所になるのでは? と思うかもしれませんが、外出時のドアの開け閉めくらいでは換気にはなりません。ドアチェーンをつけて一定時間開けるのならいいですけど、防犯上おすすめとは言えないです。

その2. 居室とキッチンが一緒

いわゆる、1Rですね。動線が短くて済むというメリットもありますが、キッチンが同じ空間にあると食べ物のにおいが部屋中に広がってしまうので、お気に入りのワンピが昨日作ったニラレバ炒めくさい、自炊しなくてもスーパーで買ってきた餃子のにおいがニットに染みついてる、なんてことがざらに起きてしまいます。ですから、1Rはおすすめできません。キッチンスペースは狭くてもいいので、ドア等の空間を隔てる仕切りがあると住みやすいと思います。1Kと呼ばれるものですね。築年数等にこだわらなければ、1Rと同価格帯の賃料のものが見つかると思います。

その3. 洗濯機置き場、冷蔵庫置き場がない

都内で賃料が6、7万円以内の物件ですと、洗濯機、冷蔵庫置き場がない部屋もあります。これは当たり前ですが非常に生活しづらい。洗濯機置き場がない場合は、共有の洗濯機があることも多いのですが、まぁ誰が使っているのか、何を洗っているのかわからないですからね、避けたほうがベターでしょう。そして、置き場を確認できたら、位置も重要です。特に冷蔵庫って、意外と音がするんですよ(静音タイプもあるがやや高め)。ですから、寝る場所から離れた位置にあるのがなおいいでしょうね。

その4. 両隣に挟まれた部屋

角部屋ではない、ということですね。おすすめしないとはいえ、こちらにもちゃんとメリットがあって、気密性がしっかりしていれば外気に左右されないのがいいところ。一度その気温になったら、変動しにくいのでエアコン代の節約にもなります。

ちなみにこの気密性って、間取り図や築年数だけではわかりません。また、木造より鉄骨のほうが優れているとは言えますが、絶対にいいと断定はできないんです。実際に行ってみて、ご自分で確かめるしかないですね。例えば、冬に内見して部屋がガチガチに冷えていたらそれは気密性が低い証拠です。但し、管理会社がこまめに換気していたら話は別ですので、気密性にこだわるなら、不動産屋さんにしっかり確認しましょう。

とまぁ、気密性の重要性をお伝えしたものの、同じ建物で家賃が同程度であれば、個人的には多少の暑さ、寒さは我慢して、真ん中の部屋よりも日当たりと換気がいい角部屋を選びますね。

その5. 部屋が1階、オートロックがない

かなり防犯のことが関わってきますが、女性のひとり暮らしの方がストレスなく快適に生活するには、この2つが該当する物件はおすすめしにくいですね。とはいえ、2階なら絶対に安心というわけではありませんので、オートロック付きでも周囲を確認したうえで解除する、戸締りは必ずする、は鉄則です。

また、共有の廊下や階段が建物の外か内かの良し悪しは、私としては一長一短だと思っています。外にあるならば不審者が侵入しやすいと言えますが、人目につきやすかったり、声を上げれば周りの人が気づきやすいメリットがあります。建物内であれば、侵入しにくい反面、周囲に気づかれにくい点がデメリットになります。実際に自分の目で見てジャッジしましょう。

以上、おすすめしないひとり暮らしの間取りでした。「住めば都」とはよく言ったもので、最優先事項を網羅できていれば、他の条件は自分の観点を変えたり、工夫次第でいかようにもプラスに変化できるものです。熟考して希望に合う物件を見つけてくださいね。


一級建築士が教える! 意外と知られていない「間取り図の落とし穴」も参考にどうぞ。
https://ananweb.jp/anan/402331/

5つのポイントをおさらい!


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教えてくれた人
リクドウさん 一級建築士。設計事務所の管理建築士。普段の仕事は、公共、商業施設の設計がメイン。住まいに対するモットーは「自分らしくいられる、憩いの空間であるべき」。


©miko/Getty Images