いまこそ読みたい! ドラマになった“オトコとオンナ”の人気原作マンガ5選

2020.3.31
話題になったあのマンガ、読みたかったけどタイミングを逃してしまった! ということ、よくありますよね。今回は、コミックに詳しい書評家の永田希さんが、マンガ好きじゃなくても楽しめる「話題になった“オトコとオンナのドラマ”原作コミック」5選を紹介します。ドラマを見た人も見なかった人も、ハマること間違いなし!

ドラマとは違うふたりの姿を見て!『逃げるは恥だが役に立つ』

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©海野つなみ/講談社

新垣結衣さんと星野源さんの主演で超人気ドラマになりましたね。一世を風靡した「恋ダンス」を練習した読者も多いのでは。
親族や同僚による奇異の目を避けて、“恋愛はさておき”ひとまず「契約結婚」をしたふたりが徐々に互いを意識するようになっていく過程を、甘酸っぱく描いているのは原作コミックでも同じ。
コミックを読むときに注目してほしいのは、ドラマ版とコミック版で登場人物たちがちょっと違うところ。
星野源が演じた「平匡さん」のキャラは原作ではエンジニアらしい眼鏡男子。対する「みくり」はガッキーのような誰が見ても美人ではなく、ちょっと天然な普通め女子なのです。石田ゆり子さんが演じた、みくりの叔母にあたる「百合ちゃん」の姿も、ドラマ版とは違った魅力があります。

元カレと魔性の男のあいだで揺れ動く『凪のお暇』

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©コナリミサト/秋田書店

こちらは黒木華さんと高橋一生さんの主演でドラマ化されました。空気を読みすぎる性格からパニック障害になってOLを辞めた「凪」と、退社と同時に別れた元カレの「慎二」、そしてフリーターになった凪が出会った隣人で女性関係が超だらしない「ゴンさん」の三角関係を中心に、凪が新しい生活に右往左往しながら奮闘する姿が共感を呼びました。
原作コミックの魅力は、真面目すぎてしんどい性格だけど心根のやさしい凪の健気さと、魔性の男ゴンさんと凪の曖昧な関係の生々しさ。
そしてなんと言っても、元カレのくせに凪の生活にちょこちょこ登場する未練たらたらの慎二の存在です。まだまだ続きそうな三人の三角関係、どうなっていくのか続刊が気になります。

話芸の世界のオトコとオンナたち『昭和元禄落語心中』

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©雲田はるこ/講談社

岡田将生さん主演、竜星涼さん、成海璃子さんらの出演でドラマ化され、アニメ版も人気となりました。作詞・作曲・編曲を椎名林檎さんが手掛け、林原めぐみさんが歌うアニメ主題歌『薄ら氷心中』も話題に。
日本の文化として長く親しまれてきていながら、ちょっと敷居の高い感じのある「落語」という話芸の世界。「昭和最後の大名人」と呼ばれる「八雲」と、弟子をとらないと決めている八雲のもとに押し入り同然で弟子入りをして、頭角をあらわしていく「与太郎」というふたりの噺家の物語です。
若かりし頃の八雲には「助六」という同門の兄弟子がいたのですが、惜しくも早逝。豪快奔放でありながら才気あふれる助六に対して複雑な感情を抱く八雲でしたが、その助六の遺児である「小夏」を引き取り育てていました。
助六の芸に間近で触れていた小夏と、助六の名跡を継いだ与太郎、そして八雲の複雑な愛憎劇をぜひコミック版で堪能してみてください。

男女逆転時代劇の傑作『大奥』

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©よしながふみ/白泉社

二宮和也さん、柴咲コウさん主演の映画や、堺雅人さんと多部未華子さん主演によるドラマ化など何度も実写化されました。『きのう何食べた?』など傑作・人気作ぞろいのよしながふみさんの代表作のひとつでもあります。
正体不明の奇病により男性が激減した架空の江戸時代。国を治める将軍すらも女性がつとめることになった日本を舞台に、代々の将軍とその配偶者たちの日々を描く作品です。
“歴史もの”ということで日本史の知識がないと楽しめないかと敬遠してしまうかもしれませんが、その心配はありません。想像を絶するほどに醜い人間社会の暗部から、涙なくしては読めない感動的にいたわり合うひとびとの姿まで、作者の見事なストーリーテリングで思わず引き込まれてしまうこと間違いなしです。
男女の社会的役割を逆転させたことで、オトコとオンナの関係のややこしさ、奥深さがいっそう際立ちます。
最新巻ではいよいよ幕末期にさしかかり、国が大きく揺れ動いています。この興奮をぜひリアルタイムで。

苦くて甘い恋を味わって『失恋ショコラティエ』

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©水城せとな/小学館

松本潤さんと石原さとみさんの美男美女コンビの主演でドラマ化されました。かつてヨーロッパで、惚れ薬や媚薬としても珍重されたチョコレート。その魅力にとりつかれて自分もチョコレート職人(ショコラティエ)になった「爽太」と、爽太が一方的に想いをよせる人妻の「サエコ」のお話です。
好きな人に振り向いてもらえない切なさを抱きつつ、それでも好きな気持ちを大切にする爽太と、その爽太を翻弄する蠱惑的なサエコの距離感がゾクゾクする作品です。
サエコをはじめ女性キャラクターに共感する読者も多いのですが、純朴なつもりでわりと腹黒いところのある爽太たち男性キャラクターについては、筆者の周囲でも「なんでそんなにオトコの気持ちわかるの?」と悲鳴があがるほどのリアルさ。
男性心理を知りたい読者にも、こっそりおすすめです。

どの作品も、微妙な男女の関係を丁寧に描いていて、読み応えがあります。ドラマを見た人も、見なかった人も。話題になった“オトコとオンナのドラマ”原作コミック」5選、時間のあるときにじっくりと作品世界に入り込んで、堪能してください。

Information

著者プロフィール

永田希(ながた・のぞみ)
書評家。1979年、アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。 書評サイト『Book News』を運営。『週刊金曜日』書評委員。 「時間銀行書店」「終りの会」主宰。
2020年4月17日に『積読こそが完全な読書術である』(イーストプレス)刊行予定。
その他、『週刊読書人』『図書新聞』『HONZ』『このマンガがすごい!』 『現代詩手帖』『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』で執筆。

【Twitter】@nnnnnnnnnnn

『積読こそが完全な読書術である』