絶望の中にいるあなたへ。社会から2度脱落した私が伝えたいこと

文・七海 — 2018.12.23
私は2回、社会からドロップアウトしました。原因はどちらも精神疾患です。双極性障害、いわゆる躁鬱病を抱えています。体調を崩したときは、本当にたくさんの方々に迷惑をかけました。希望を持つことなんておろか、未来を想像することすらできなかったのです。そんな私が、今あなたに伝えたいことがあります。

1度目のドロップアウト。
やりがいを持って働いていた職場をやめたとき

新卒で入社した会社。わからないことだらけでしたが、仕事の楽しさを実感していました。つらいこともありましたが、それ以上にやりがいを感じていたのです。一生懸命働いていたそのとき、役職に就く話が上がりました。勉強不足なことは多々ありましたが、認められる喜びも感じていた頃です。

ちょうどその時期でした。大きな躁状態がやって来たのです。当時の私は鬱病と診断されており、躁状態という認識はありませんでした。数日寝なくてもさまざまなことを頑張れる、そんな感覚でした。もともと生活が不規則だった節があった私は、仕事にも打ち込みました。帰ったら寝ずに勉強し、朝になったら出社する……そんな生活でした。

当時は寝なくても平気だと思っていただけで、躁鬱病とは考えてもいませんでした。今までできなかったことにチャレンジしてみたり、新しいアイディアを提案してみたりと、そういった状態だったと認識しています。

しかし、その生活は長く続きませんでした。1か月もしないうちに、突然ベッドから起き上がれなくなったのです。経験したことのない、ひどい鬱状態になりました。ベッドから起き上がれなくなった私は、泣きながら会社に電話しました。「体調が悪いのでお休みさせてください」と。記憶が曖昧なのですが、恐らく数週間休んだと思います。毎日泣きながら天井を眺めていたのは覚えています。

その後、正式に辞表を出しました。動けなかったので、ほとんど親に頼りました。自分で何もできないのも、やりがいを持っていた職場をやめるのも、情けなく、悔しかったです。

今よりも鬱病への偏見が激しかった頃の話です。私は隠れるようにして、実家で過ごしました。1年近く働けず、生きがいを失ったように感じました。さらには、生きている価値もないと思いました。

毎日当たり前のように来る朝が、恨めしかったです。朝が来なければ、私はもう生きなくて良いのに。

2度目のドロップアウト。
恐れていたことが現実になったとき

前職を辞めてから、躁鬱病の診断が降りました。しばらく自分に合う薬が見つからなかったのですが、ようやく落ち着ける抗躁剤を飲み始めることができました。それからだんだん症状が落ち着くように。

酷い鬱状態も脱していて、奇跡的に転職できたのです。転職先でも多くのことを学び、学生時代から抱いていた夢を叶えたく、フリーランスに転身。以前経験したような、大きな躁状態も鬱状態も出なくなっていた頃です。しかし、心のどこかで怯えていました。また働けなくなるのではないか、と。

フリーランスとして働き、数年が経ちました。最初は会社員との違いに戸惑いましたが、徐々に充実した働き方だと感じるように。

しかし、恐れていたことが起こりました。酷い鬱状態がやってきたのです。以前とは違って躁状態はありませんでした。「働けなくなるかもしれない」が「やっぱり働けない」に変わり、自分を責めました。会社員ではなかったので、手当てなどがありません。通帳の残高は減っていくばかりで、本当に、もう生きる資格がないのだと思いました。

また寝たきりの生活が始まりました。気力は起きず、もう働くのは不可能だと思いました。私が社会に出ると迷惑をかける。私が生きていると迷惑をかける。これからどうやって生きていけば良いのかも、本当に生きていけるのかもわかりませんでした。

それでも温かい世界があった。
きっと、あなたにもその世界がある

働けなくなったという意味で、私は2回、社会からドロップアウトしました。1度目も2度目も、ひどく絶望しました。何もできない私には、存在意義がないのだと思いました。

だけど今現在、私は社会に復帰することができています。自分を責め続けてきましたが、温かい手を差し伸べてくれるかたは何人もいたのです。その温かさは、鬱状態だった私には想像もつかないものでした。

希望を持てないとき、未来を想像できないとき、自身を責めてしまうかたが多いのではないかと思います。そして、温かい世界も見えなくなってしまうのだと思います。

正直、今でも「また働けなくなるのではないか」と怯えている面はあります。だけど今はそこから目を背けずに、今できることを誠心誠意頑張ろうと思っています。

希望を持てないときも、未来を想像できないときも、そのときできることに向き合えば、それで十分なのだと思います。あなたが寝たきりでも良いと思うんです。そのつらさを受け止めているあなたは、それだけで頑張っているのだと思います。今は自己否定してしまうかもしれないけれど、必ず、あなたのすぐそばにも、温かい世界があります。

世界がこんなにも温かいものだなんて、知りませんでした。ドロップアウトする以前は、”当たり前” に感じていたのでしょう。私がこの経験で得たのは、温かい世界です。それを感じられるようになったことです。

いまだに自分の存在意義はわからないし、迷惑はたくさんかけていると思います。だけど、温かい世界に精一杯恩返しをしたいんです。今現在つらい思いをしているあなたにも、温かい世界を感じられる日はきっと来ます。これは、たくさんの迷惑をかけながら生きてきた私が伝えたいことです。

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