変わり果てた兄の記録…両親と精神科へ。告げられたのは…。 #8

文・心音(ここね) — 2018.3.27
“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。 月日が流れても兄の様子が一向に回復しないため、両親はある行動にうつりました。

【兄は障害者】vol. 8

気づけば3年間も引きこもりだった

母が仕事をやめて、兄をいろいろなところに連れて行くようになってから、3年が経とうとしていました。外出といっても頻繁にあるわけではなく、兄はほとんどの時間を自室に閉じこもって過ごしていました。高校退学後、数か月の間は友人が家に来ては「僕にできることはありませんか?」「大丈夫ですか?」と声をかけてくれていましたが、「ごめんなさいね、あまり人に会いたがらないんですよ」と、母が友人たちに言うごとに、ひとり、またひとりと心配する声も少なくなっていきました。3年間も家のなかで過ごしていた兄は、こうして人間関係と社会から孤立していきました。

理解不能な “兄の世界”

「気分転換」「思い出づくり」と懸命にしていた、兄を外に連れ出す母の行動は、道行く人からの冷たい視線を受けて恥ずかしい思いをするだけでした。また “あの頃の人気者だったお兄ちゃんに戻るよね” という願いは届かず、次第に兄は大声を出したり、突然笑い出したりするようになり……。しまいには、「ねえ、今日ご飯食べたっけ?」と自分がとった食事のことも、忘れていくようになりました。

少し前までは会話が噛み合っていたはずの兄は、まともなコミュニケーションすらできない状態になりました。両親と私は「はいはい、また言ってる」と受け流すように変化していきます。そろそろ20歳を迎えようとしているのに、精神年齢は5歳以下の幼児。兄にいったい何が起きているのか? 時間が過ぎるほど、不安が募っていきました。

近所の精神科へ

見かねた両親は、危機感を感じてついに病院に行くことを決意。近所にある精神科を調べはじめました。健常者で生まれてきて、運動神経も良い人気者だった子どもを、まさか精神科に連れて行く日が来るとは……。怪我をしているわけでもないし、何か体に不自由があるわけでもない。兄には、どこも悪いところなんてないはずです。

病院で診てもらったら、きっと何か新しい発見があるかもしれない。「大丈夫ですよ、異常はありません」という言葉を聞けたら、安心する。そう願って、人生で初めて精神科を訪ね、様子を見るために検査入院をすることになりました。

検査入院の結果は……。

退院後に診察室に呼ばれて、医師から告げられた診断は「統合失調症」の可能性。症状は独語、突笑、幻聴、精神状態不安定などがみられるとのことで、そのような病名が浮上しました。診察を終えて渡されたのは、指示書とともに、大量のカプセルに錠剤、粉末……なんと1日23錠も飲むのです。

診断結果と大量の薬を前にして、両親も私も放心状態でしたーー。


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