この秋、入団9年目という異例のスピードで月組のトップスターに就任した珠城りょうさん。しかし本人は、「最初にお話をいただいた時には嬉しさより戸惑いの方が大きかったです」と語る。
「学年が浅く、経験も少ない自分にトップなんてつとまるんだろうかと思ったんです。でも、そんな頃に全国ツアー公演で主演をさせていただいて、少し考えが変わったんです。あの公演は、上級生の凪七(瑠海)さんや宇月(颯)さんとご一緒させていただいたのですが、おふたりとも私が役に集中できるよう環境を整えてくださり、私がどんな芝居で出ても受け止めてくださったんです。おかげで全力でぶつかることができ、毎日が本当に楽しくて。この舞台でいただいたものを共演者全員に届けていきたいと思うようになりました」
就任第1作の『アーサー王伝説』で演じたのは、苦悩しながらもそれを乗り越え成長していく若き王。王にふさわしい風格や大きさを持ち、芯のある誠実な主人公を、実のある芝居で見せてくれた。
「音楽学校の本科の頃に受けた正塚(晴彦)先生の授業で、お芝居の楽しさに目覚めました。そこから入団2年目の『ラスト プレイ』の新人公演で、主演の明日海(りお)さんと真っ正面から向き合う大きな役をいただいて、芝居にのめり込む感覚を味わったんですよね。その後、バウホール初主演の『月雲皇子(つきぐものみこ)』で、感情を動かして芝居することの大事さをあらためて認識しました。宝塚は型で魅せることも必要ですが、役の根っこを深く掘り下げ、その心情を丁寧に演じたいとつねに心がけています」
’17年は、大劇場お披露目公演となるブロードウェイミュージカルの名作『グランドホテル』で幕を開ける。
「楽曲が素晴らしく、シックで大人っぽい世界観も素敵です。私が演じるガイゲルン男爵は、借金まみれになりながらも階級というプライドにすがって生きている男です。その一方で情も捨てられない人間的な一面もある。ハードルは高いですが、大作に臨めることへの感謝と宝塚らしい品を忘れずに演じたいです」
目指す月組像を伺うと、「エネルギッシュで熱い組」との答えが返ってきた。
「組の真ん中に立つ方の空気を、周りは敏感に感じ取っているんです。そのことはこれまでの経験でわかっていますから、まずは自分が真っすぐに舞台に取り組むことだと思っています。私自身、まだまだ学ぶことも多いですし、組の皆と一緒に成長していきたいですね」