明日海りお、大先輩の愛華みれからトップの心得を贈られる

2017.1.3
繊細な演技と歌の実力、華のある容姿で客席を惹きつける宝塚歌劇団のスター、明日海りお。その美しさから儚げな印象を受けるが、心の底に熱い情熱をたぎらせる。
「作品を重ねれば重ねるほど、組子との絆が深まっていく」と明日海りおさん。(C)宝塚歌劇団

2016年、『Ernest in Love』『ME AND MY GIRL』と、花組は海外ものの再演が続いた。

「再演だけに、過去をなぞるのではなくいまの花組らしい舞台にできるか、不安もありました。とくに『ME~』に関しては、組子総動員で本当に細かい部分…当時のイギリスの階級社会だとか、故郷に対する思いだとか、仲間を思う気持ちを丁寧に読み解いていきました。例えば1幕ラストのランベス・ウォークの場面も、ただ楽しいだけではなく、身分違いの人々が交わる奇跡の瞬間を感じていただければ、と思いました」

明日海りおさんが演じたのは、粗野な振る舞いのなかにも品を感じさせ、屈託のない明るさと愛情に溢れたビル。それが周囲の芝居と呼応し、愛に溢れたほんわかハッピーな作品へと仕上がっていた。

「作品を重ねれば重ねるほど、相手役の花乃(まりあ)や芹香(斗亜)をはじめとした組子たちとの互いの理解が深まって、より強い絆が生まれてきているのを感じます。いまの花組に、これからまだまだ伸びていける可能性がたくさんあると思えることがとても嬉しいですね」

花組の若手スターが徐々に育ち、個性を発揮し始めてきているいま、2017年の課題は「柔らかい存在でいること」。

「少し前に、愛華みれさん(元花組トップスター)が観に来てくださったんです。その時、愛華さんがおっしゃっていたのが『もっと組子の皆からのキラキラしたパワーを受けとっちゃえばいいのよ。そうしたら立ってるだけでエネルギーになるんだから』という言葉でした。トップスターというと、堂々としたカリスマ的なイメージがありますが、私は、背も高くはないですし、普段はほわーんとしているから、どちらかというと、周りが心配して面倒をみてくれる側だとは思うんです。でもそう言いながらも、どこかでトップなら自分が一番輝いて、皆を引っ張っていかなきゃっていう考えに縛られていたんですよね。愛華さんからいただいたお言葉を胸に舞台に向かってみたら、いままで以上に組子たちを頼もしく感じられ、感触が少し違ったんです。それがどう舞台でのパフォーマンスに繋がるかは未知ですが、それを探っていくのも楽しみです」

現在花組は、『雪華抄』『金色の砂漠』の公演の最中。

「若手演出家として期待されている原田諒先生と上田久美子先生が花組に書き下ろしてくださる作品をやれるのが嬉しいです。私たちにしか出せない世界を楽しんでいただけたらと思います」

あすみ・りお 2003年に入団し、月組に配属。早くから注目を集め、’08年に新人公演初主演、’11年にバウホール公演単独初主演。’13年に花組に組替え。翌年『エリザベート』で花組トップスターに就任。

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※『anan』2016年12月28日-2017年1月4日合併号より。写真・中野敬久 スタイリスト・岩崎聡美 ヘア&メイク・山本浩未 取材、文・望月リサ (C)宝塚歌劇団

(by anan編集部)