――気が早いですが、やはり気持ちは次回作に向かってしまうわけで…。ズバリ、ご予定はいかがですか?
新海:まだ全然白紙です、すみません。いつもの流れでいうと、‘17年には脚本と絵コンテを描かないと、3年以内に作品を出せないので、‘17年はそれに専念したいと思ってるんですが、なかなか…。
――アカデミー賞にノミネートされちゃうかもしれませんしね。そうしたらますますお忙しくなる予感が…。
新海:可能性はゼロではないとは思いますが、僕はないと思いますけどね…。オスカーなんて取りたいと思ったことないし、目指したことも1ミリもないですから。正直僕は、賞より観客やファンが作品を見て喜んでくれる方が嬉しいですよ。
――ノミネートされたら、蝶ネクタイしてレッドカーペット歩きます?
新海:はい。プロデューサーが(笑)。
――なにをおっしゃいます!
新海:僕、ネクタイ、冠婚葬祭用の黒いのを1本しか持ってないんですよ…。サラリーマンのとき毎日ネクタイしていたから、もうネクタイ締めたくない(笑)。
――ええ~、そんなこと言わないでください。レッドカーペットを歩く新海監督のお姿、拝見したいです…。
新海:まあ、万が一そうなったらちゃんと行くと思います(笑)。スタッフにとっては、そういうふうに評価された作品に関わったということで、苦労が報われると思うので。
――その合間を縫ってなので大変ですが、次回作も楽しみにしています。
新海:はい、ありがとうございます。物語を作ることって、誰かをちょっとだけ助ける力があると思うんですよ。映画なんてたかがエンタメだし、なくても生きていけるもの。でも、それを見たり読んだりすることで、ちょっと勇気をもらえたり、背中を押す力があると、僕は思っていて。映画を見ることで他者の人生や気持ちを想像したり、疑似体験する。そして映画が終わり劇場を出て日常に戻ることで、今生きている社会にある“確かなもの”を実感したり、安心したり、少し強くなったような気持ちになったりする。人は実生活の中で、経験を経ていろんなことを学ぶわけですが、物語に触れることでも、同じように得るものがあると思う。僕自身、宮﨑駿さんやディズニー・ピクサーの作品などに、何度も助けられた。自分も今回、少しだと思うけれども、背中を押したり、助けることができたかもしれないと思ってます。ちょっと大げさだけど、生まれてきた意味があったかもしれないっていう気持ちにしてもらえたんですよね。‘16年に一番嬉しかったのは、それです。
――世界に感謝、みたいな感じですか?
新海:いや、そこまでは思ってないです(笑)。でも、また同じように誰かの背中を押せる作品を作りたいですね。