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トータス松本「メンドクサイ60代になりたい」 その理由は?

2016.11.14
衝動がそのまま音になったような、若者の奏でる音楽ももちろん魅力的。 一方で、そんな時間を経たのち、窮屈になるどころか、ますます自由で個性的になっていく大人世代のミュージシャンたちがいる。今なお子どものような、キラキラした眼を持つトータス松本さんにお話をうかがいました。
とーたす・まつもと ウルフルズのボーカルとして1992年にデビュー。来年デビュー25周年記念のオリジナルアルバムをリリース予定。ソロワークとしては主題歌と初めて劇中音楽を手がけたオムニバス映画『アニバーサリー』が公開中。

とーたす・まつもと ウルフルズのボーカルとして1992年にデビュー。来年デビュー25周年記念のオリジナルアルバムをリリース予定。ソロワークとしては主題歌と初めて劇中音楽を手がけたオムニバス映画『アニバーサリー』が公開中。

昨日買ったばかりというGibsonのヴィンテージギターを抱えて現れたトータス松本さん。ご本人とほぼ同い年なのだそうだ。

「ヴィンテージ好きになるのも、大人になったということですかね。同じモデルの新品もかなり良い出来なんですが、弾き比べると『まだまだ若いな、お前』って。でもこの年季の入ったギターは、『おおっ!』となる。シブいおっさんに憧れるような気持ちですね」

そんなトータスさんも、かつては「アニキっぽさ」が好きと憧れられていたのに、最近はファンからカッコいい「おっさん」と言われることが増え、少々戸惑いも。

「オレ、おっさんか? と、言われて初めて見られ方に気づく感じ。嬉しいけど、くすぐったいというか、恥ずかしい。大人かどうかって、自分ではよう分からないですね。ただ若いときよりも、いい加減にはなったね」

“ちょっと不器用だけど情熱的で真っすぐな人”というイメージを持たれがちなトータスさんだが、実は几帳面。DIYや料理の才能もあるマメな方なのだ。

「そういう性格だから、何でもキチッとやらないとダメ。若いころは、うわー、どうしよう、これではアカンと、常に追い詰められているような感じやった。でも結局、なるようになってきたから『世の中になんともならへんことはない』ということを経験則として学べたんですね。それが分かってきたから、ズルイというか、いい加減になってきているんですよ。こんな自分が新鮮だし、これも大人になったということなのかな」

若いときは経験値がないぶん、あるがままにやっては、結果が出る前に焦ったり、目上の人の意見を取り入れても、うまくいかなかったりしたことも。

「いま思えば、若さの魅力って若いってこと以外にないと思う。負け惜しみじゃなくて、本当にそう。逆に大人はいろんなことを経験したぞ、という特権で、いい加減になったり、いろんなことがラクになってくる。けど僕はまだあがいているし、過渡期だと思ってます。60~70代になれば余裕も出るんやろうけど、今は余裕のある部分とない部分が、せめぎ合ってる感じがする」

トータスさんが参加する「ROOTS66」というイベントがある。‘66年生まれのアーティストが大勢集結する年齢縛りのライブだ。

「みんな揃って、他の出演者のリハーサルを舞台袖で見るんですが、それぞれに思うことがありながら、いろんな表情をしているんですよ。あれがすごくいい! みんな同い年やけど、大人と呼べる人は誰もいないね(笑)。若い人と共演するときも、オレは『負けたないー!』と思って観てますね。焦ったり、緊張したりは未だにするなぁ。でも、そういう気持ちが面白いし、まだどっか若くて、青いんやね。それはすごくいいことだと思っている」

面白いエピソードを聞いた。トータスさん世代のミュージシャンがバックを務め、ゲストにベテランシンガーを招くといったイベントのときのこと。

「リハ中にその方がいきなりブチ切れて、何やっとんじゃ! とバンドに怒鳴って、シーンとなったんですよ。それがすごく面白くて、いいなーと思って。大人げないところを見せるのも、大人の余裕やな、と思って嬉しくなったんです(笑)。きっと家に帰って『ああ、やってもうた』と反省するんやろうけど、いいじゃないですか。オレもあんなピュアでメンドクサイ60代になろう、って思いました」

曲作りは年齢とともに変わるのだろうか。トータスさんの作品に共通する、ああこの感じ、という“らしさ”は変わらない気もする。

「曲はね、割とすぐに書けるんです。でもすごい1曲と普通の10曲ではえらい差や、と思う。このままだと普通の曲ばかりになりそうなので、すごい曲を書きたいと、ずっとあがいていますね。自分にしかできない日本のポップスとか、ブルース、ロックがまだまだある気がしていて。いろんなことで刺激されながら、新しいな、と思われるものを作りたい。でも音楽そのものから何かをもらうのではなく、いろんな表現からこっちに来るものを取り入れています。最近、宮﨑駿さんのドキュメントを観て、70代が苦悩しながら新しいものを生み出す姿に感動し、よっしゃまだ20年ある、まだまだ行けんなーって元気出ましたね」

来年ウルフルズはデビュー25周年を迎える。記念盤はベスト盤でなく、まっさらの新作を出すそう。

「節目の年ではあるけど、正直言って、今はイマイチ、ピンときてないんですよね。昔、RCサクセションの35周年ライブに出させてもらったんですけど、清志郎さんは『今がいちばんいいんだから、周年イベントとかやりたくない』と言われてて、当時はなんでー、スゴイことじゃないですか、と思ってたんやけど、今ならその気持ちがすごい分かる。何年だろうが関係ない、それがどうした、って感じがありますね、うん」

とーたす・まつもと ウルフルズのボーカルとして1992年にデビュー。来年デビュー25周年記念のオリジナルアルバムをリリース予定。ソロワークとしては主題歌と初めて劇中音楽を手がけたオムニバス映画『アニバーサリー』が公開中。

※『anan』2016年11月16日号より。写真・野呂知功(TRIVAL) スタイリスト・堀井香苗 ヘア&メイク・田中大作 田中ヒロ子 インタビュー、文・北條尚子

(by anan編集部)