イケメンが描けない作家の“年下警察官とワケアリ美人妻の恋愛”漫画

2018.3.13
野村宗弘さんのマンガ『かけおちはスクーターに乗って』、年下男性と美人妻とのワケアリな恋愛を描いた作品。
かけおちスクーター

鉄工所で働く人々の日常を、叙情豊かに描いた『とろける鉄工所』など、職業系マンガの描き手として高い評価を得る野村宗弘さん。その一方で、配偶者に浮気されているお隣さん同士の男女が、互いに惹かれ合っていく『うきわ』など、大人のままならない純愛マンガにも、きらめく才を見せる。

そんな野村さんの『かけおちはスクーターに乗って』は、後者に属するおすすめマンガだ。

「『うきわ』は理性で激情を抑えた結末でした。今度は反対に、恋愛で理性が働かなくなるとどうなるかをテーマにしたいと思ったんです」

『かけおち~』の舞台は、海のキレイな田舎町。交番勤務の警察官ケンジは、都会からやって来た10歳年上の人妻エリナと出会う。どこか頼りなさげなエリナにケンジは惹かれていくが、ほどなく「夫から逃げてきた」という危うい事情がわかってくる。しかも、夫の栄吉が、エリナのアパート周辺をうろつき始め、不穏さは否応なく増していく。

「トラウマを抱えているらしいエリナさんに同情はするけれど、単純に栄吉が悪者というのも違うような…。恋愛において、自分を尊重することは大切でも、自分しか尊重しなかったら関係はおかしくなる。もちろん、恋に落ちてクレイジーになるのを否定しているわけではないんです。ただ、相手にずっと愛してもらえることを期待しすぎると追いつめてしまう。時間が経てば恋は少し冷めるものだし、それでも思いやりを忘れなければ、ずっと仲良くいられていいんじゃないかと思っております」

警察官の職分を忘れ、エリナひとりを守ろうとするケンジ。ついには、禁断の誘いまで口にする。

だが、栄吉との関係がこじれているエリナの心情は複雑だ。最初の結婚に失敗していることや、ケンジとの年齢差などが気になって、素直にケンジを頼りにできない。

かけおちスクーター2

「ケンジがもっと頼りがいのあるタイプだったら、話は簡単かもしれないけれど、僕、イケメンが描けないんですよね。見た目はともかく、イケメンの心がわからない。どんな心理で壁ドンなんてできるんだ、と考えてしまうけぇ(笑)」

ちなみに、これほど悩みながら描いたマンガは初めて、と野村さん。

「特に、エンディングについては最後の最後まで迷ったんです。賛否両論あるかもしれないけれど、 自分ではこれしか落としどころがないと思って描きました」

どんな決着を見るのかを、ぜひ見届けてほしい。

『かけおちはスクーターに乗って』 23歳の警察官ケンジは、品川ナンバーのスクーターでやってきた美女を見かけ…タイトルには「救う人(ター)」→「スクーター」の意味を重ねた。2巻完結。小学館 552円(C)野村宗弘/小学館

のむら・むねひろ 1975年生まれ、広島県出身。マンガ家。2007年、講談社「第5回イブニング新人賞」で奨励賞を受賞し、本格デビュー。『鉄工所にも花が咲く』も好評発売中。

※『anan』2018年3月14日号より。インタビュー、文・三浦天紗子


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