多くの人が“怒り”に振り回されて悩んでいる。この状況を変える方法を授けてくれるのが、アンガーマネジメントだ。1970年代にアメリカで生まれた心理トレーニングで、このメソッドを学ぶことで、自分自身の怒りの原因がわかり、感情をコントロールできるようになるという。アスリートのメンタルトレーニングにも活用され、日本でもここ数年、企業研修に取り入れられるなど、急速に浸透し始めている。
「怒りは本来、身を守るために生じる感情。動物が防衛本能から威嚇するように、私たちも怒りを表すことで、自分を守ったり、気持ちをわかってもらおうとしています。つまり、怒りは必要な感情なのです。アンガーマネジメントは、怒りをゼロにするのではなく、“怒る必要のあることは上手に伝え、怒る必要のないことは怒らない”ことを最終ゴールにしています」(安藤さん)
人はなぜ怒るのか? 6大原因を知る!
「怒りは絶対的に湧くものではなく、大きく関わるのが“自分の解釈”。出来事に対してどう意味づけをするかで、怒りになるか否か決まります」(安藤さん)
私たちはどんなふうに怒りにつながるような捉え方をしてしまうのか。物理的にイライラしやすい例も含めて、代表的なパターンとその改善策をチェックしよう。
CASE1
喫茶店でオーダーと違うものが出てきた。いつもなら冷静に指摘できるのに、今日は仕事が忙しくてイライラしていたせいか「違うんですけど!」と突き返してしまった。
→怒りの原因 自分の心に余裕がないから
起こった出来事は同じでも、怒る日と怒らない日があるのは、自分の心持ちが関係している。「疲れやストレスが重なっているときは“心のコップ”がいっぱいになり、前向きに解釈できずコップの水があふれてしまう。日頃から心に意識を向け、コップがあふれる前のリフレッシュを心掛けて。それだけで回避できる怒りも多いはず」
CASE2
A子と待ち合わせをすると必ず10 分は遅刻してくる。しかも連絡ナシ! 私はいつも5分前には来ているのに…。遅れるならせめて連絡くらいするのが礼儀だと思うけど。
→怒りの原因 自分の「べき」からは外れているから
誰でも「~するべき」「~するべきでない」という価値観を持っている。この「べき」が裏切られると怒りに発展する。「上の例は、“遅れるなら連絡するべき”という価値観が裏切られて怒りが生じたのですが、“べき”は人それぞれ。自分の“べき”に固執しないで、『遅れるときは連絡してね』と伝えればいいのです」
CASE3
やる気のない後輩にイラッ。頼んだ資料も「まだできてないんですー」の一言でサッサと帰ってしまった。上司には「お前の管理が悪い」と怒られるし、どういうこと!?
→怒りの原因 他人のせいにしているから
理不尽な出来事があると「自分は悪くない!」と思いがちだけど、人のせいにして自分を正当化することで怒りは増していく。「自責と他責のうち、怒りを呼ぶのは後者です。誰かを責め続けてもその人を変えることができないのでイライラしてしまうのです。怒りをコントロールするには、自分の対処法を変えることが大切」
CASE4
同僚のB子は私と違って要領がいい。上司にうまく取り入って派手な仕事ばかりして、目立たない仕事を地道にやっている私より評価が高い。なんで? 納得いかない!
→怒りの原因 事実と思い込みを混同しているから
出来事を悪いほうに解釈することで怒りは生まれやすい。しかも、この解釈を“事実”と勘違いすると怒りが長引くことにも。「同僚ばかり評価されているというのは、思い込みかもしれないですよね。イライラしてきたら、自分が思い込みをしていないか振り返ってみ
て。意識づけで思考のクセを直して怒りを減らしましょう」
CASE5
すぐにイライラして怒鳴る父。捜し物が見つからない、母が予定の時間に帰ってこない、駅員さんが横柄だ…などなど。そんな様子を見てたら、私までイライラしてきた…。
→怒りの原因 怒りが伝染しているから
怒りの感情はエネルギーが強い分、周囲へ伝染する。さらに、立場の強い者から弱い者に流れやすい性質も。「イライラは家族や友人など、言いやすい人にぶつけがちなので、身近な間柄ほど怒りの連鎖が起こりやすいといえます。もちろん、赤の他人にも伝染するので、怒っている人には近寄らないのが賢明です」
CASE6
絶対に遅刻できない会議のある朝、よりによって電車が遅延! 迂回ルートに乗り換えようとしたらそちらも止まっていて万事休す…。私のせいじゃないのに~!!
→怒りの原因 思い通りにいかないから
思い通りにいかないことに直面したら、それが自分の努力で変えられるか、まず考えてみて。「電車の遅延など、自分では変えられないことは怒っても仕方ない。会社に連絡するなり、できることをやるしかないんです。自分のアプローチで改善できることなら、全力を尽くす。できる、できないの見極めは大切です」
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