1日5万枚! 伝統の「リーフパイ」ができるまで…

2017.11.7
誰もが一度は食べているかもしれない銘菓――銀座ウエストの「リーフパイ」にまつわるストーリーを文筆家の木村衣有子さんが綴ります。
リーフパイ

“真摯”が身上、その言葉どおりの焼き菓子

ウエストのはじまりは、銀座7丁目の喫茶店。店のおもてにある小さな売店には、シンプルなケーキや焼き菓子が整然と並んでいる。その中でも、創業当時、1947年からある最古参は、リーフパイ。ウエストでつくられる焼き菓子の約5割を占めているという。生産数はというと一日に5万枚で、年の瀬の繁忙期になれば、もっと増える。

かじると、パイがさくさく、その上にのっかった白ザラメが小さくばりばりと音を立てる。そのふたつの音が合わさって、ぱりぱりいうのを聞くのが楽しい。そう、表面にみっしりと白ザラメの粒がまぶしてあること、それがウエストのリーフパイの個性だなあと、いつも、食べる度に思う。ただ、ずうっとそういうスタイルだったわけではなくて、1970年代後半からのことだそう。それ以前はグラニュー糖をまぶしていたけれど、それだと口どけがよすぎて、甘さが強調されてしまう。なるべく甘さを抑えたいという初代社長の意向を汲んで、あれこれと試してみた結果、このスタイルに行き着いたそうだ。それからも、これぞという口触りを求めて、ザラメの粒を大小混ぜるなどの工夫を怠らない。また、砂糖を替えたのと同じ頃に、サイズも小ぶりにした。均一に火が通るようになり、以前より口触りがよくなったそうだ。

そのリーフパイのできるまでを、山梨は一宮にあるウエストの工場にて見学させてもらったとき、工程の途中で意外に思えたのが、薄く延ばしたパイ生地を、菊型でぽんと抜いたところ。あれっ、葉っぱのかたちじゃないの? いや、そのお花のかたちの生地を、白ザラメを敷いた台の上に載せて、麺棒でぐーっと延ばすと、花は葉っぱにかたちを変えた。この工程でザラメも生地にぴったりくっつく。なるほど!

それから、さらに「リーフ」に近付けるため、葉脈をローラーですっすっと描く。一枚につき7本、手作業で。

案内してくれた、工場長の竹内和之さんは、こう言った。

「リーフパイにすじを入れるのには、その人その人の特徴が出ます。機械がつくったみたいに同じ幅にしなさいということは、一切言わないです」

口に入るものには、そんな揺らぎをほんの少し残しておいたほうが、おいしく感じられるのかもしれない。

バター、小麦粉、卵、砂糖だけでつくられるリーフパイは「ウエストのお菓子の原点」だとも竹内さんは言った。

ウエストの社是である「真摯」さがくっきりとあらわれているお菓子なのだ、これは。

8枚入り¥1,296、12枚入り¥1,836、17枚入り¥2,484、22枚入り¥3,240、26枚入り¥3,780、36枚入り¥5,076、45枚入り¥6,156(すべて税込み) 発売年:1947年 大きさ:約12.5×約5.3cm 重さ:15g(1枚) 通販可。●東京都中央区銀座7‐3‐6 TEL:0120・73・5622 www.ginza-west.co.jp/store/html/

きむら・ゆうこ 文筆家。雑誌・新聞などを中心に食に関するルポなどを寄稿。ミニコミ『のんべえ春秋』を発行。近著に『キムラ食堂のメニュー』(中公文庫)。ほか著作多数。

※『anan』2017年11月8日号より。文・木村衣有子 イラスト・くぼ あやこ

(by anan編集部)


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