「潤子は素敵な人。ただ、演じるには難しい役でした」
いまや全世代の女性たちにとっての憧れの存在、といっても過言じゃない。大人の落ち着きと穏やかさに加え、気負いのない自然体のかわいらしさを持ち合わせる。そんな石田ゆり子さんが演じるのは、前科者や保護観察中など世間から爪はじきされた“訳あり”な人を受け入れ、彼らを静かに見守るシェアハウス、プラージュのオーナー・潤子。
「潤子さんがプラージュを営むのはそれなりの過去があるからですが、それでも罪を犯した人々を自ら支える側に回るのは、それだけ強い思いがなければできないこと。母性の塊で慈愛の人で…そんな素敵な人を演じられるのは嬉しかったですね」
ただ、過去や世間の偏見のなかでもがく住人たちとは違い、「微笑んで見つめるという受け身の役柄には、別の体力が必要だった」そう。
「役として行動することで自然と自分のなかの感情が追いついていくことがあるので、お芝居って動く方が楽なんですよね。でも、潤子さんはプラージュという場所から動くことなく、一歩離れたところから皆を見守っている。そのぶん、セリフひとつひとつが愛情に満ちているので、そこに助けてもらった気がします」
今作では、演技初挑戦のスガ シカオさんが殺人罪で服役しながら再審公判中の男を演じることでも話題。
「出演を決めた理由をスガさんに尋ねたら、デビュー20周年で皆が驚くことをしたかったのともうひとつ、共演に星野源さんと私がいたからだとおっしゃって…。まさかそんなところに責任があったのか、と(笑)。現場では、監督の細かな演技指導に学生のように真剣に耳を傾けられていたり、座っているだけのシーンも自然で…素晴らしかったです」
それは石田さんも同じ。ともすれば潤子は、浮世離れした人物に見えてしまいかねない。しかしそれを石田さんが演じれば、我々と地続きにいる生身の人間として立ち上がってくる。それこそが、いま多くの人が石田さんに憧れる理由なのだろう。
「皆さんが、私を見て楽しんでくださったり喜んでくださっているのは、とてもありがたいことですが、私自身はいたって普通に役を演じることに集中しているだけなんです」
ただ、「自分は年をとってからの方が人生が楽しくなるタイプだなとは、昔から感じていました」と話す。
「若いってすごいことで、それだけで注目されるんですよね。自分の20代は、何もできないのに評価されたり、どんなに想像してもわからない感情を演じざるを得ないことが辛くて仕方なくて、いま思い出しても胸が苦しくなるくらい。でも30代に入った頃から、経験が役に追いついてきて、キャリアができて、ある程度の自負みたいなものも持てるようになってから楽しくなったんです。周りも私を大人として見てくれるようになって、自分の意思でやれることが増えてきたことも大きいですね。それは同時に責任を背負うということでもあるけれど、そのぶん、いろんなことから自由になることができたというのかな。女優としても個人としても今の方がずっと好きだし、年をとることが楽しいです」
【人気記事】
※ケンカしたら最後!? 怒らせるとこわ~い血液型は?