「ジャージャー (ヘビだ!) 」「ヒヒヒ (タカだ!) 」 シジュウカラは言葉を操っている!?

2022.10.4
“人間以外の動物も言葉でコミュニケーションをとっているかもしれない”と、思いを馳せたことがある人は少なくないはず。近年、動物言語に関する研究が以前に増して注目を集めているという。

人間だけじゃない! 言葉を操るシジュウカラに世界が熱視線!

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その火付け役ともいえる存在が、シジュウカラという野鳥を主に研究している、動物行動学者の鈴木俊貴さんだ。子どもの頃から生き物の観察が好きだった鈴木さんは、約15年にわたり軽井沢の森林でシジュウカラの鳴き声を調査。世界も驚く発見を数多く発表してきた。

「たくさんの鳥を観察してきましたが、シジュウカラの鳴き声は群を抜いて複雑です。タカやヘビといった天敵の種類を識別し、異なる鳴き声でその存在を知らせます。『ヒヒヒ(タカだ!)』と聞くと、空を見上げてタカを警戒、『ジャージャー(ヘビだ!)』と聞くと地面を見下ろしどこにヘビが潜んでいるのか念入りに探します。シジュウカラは鳴き声を単語として使い分け、仲間と会話しているのです」

さらに驚くのが、シジュウカラは文章を作れるという発見だ。

「シジュウカラは仲間と協力してモズやフクロウを追い払うことがあるのですが、その時の号令が『ピーツピ・ヂヂヂヂ』という鳴き声だということに気づきました。『ピーツピ』は“警戒しろ!”という意味で、『ヂヂヂヂ』は“集まれ!”という意味です。つまり、シジュウカラは2語文を使って会話していたのです。また、シジュウカラは語順を認識して音列を解読していることや、初めて聞いた文章まで文法のルールを使って正しく理解できることなどがわかってきました。シジュウカラの鳴き声には人間の言葉との共通点がたくさんあります」

鈴木さんは、シジュウカラの他にも、複雑な会話をしている動物がいても不思議ではないと言う。

「これまでに動物の鳴き声と人間の言語との共通点を証明できたケースはほとんどありません。長い間、動物たちの鳴き声は感情の表れでしかなく、意図を伝えることができるのは人間だけだと信じられてきたのです。でも、先入観にとらわれず、地道に研究を続けていくことで、シジュウカラのように、単語や文法を用いてコミュニケーションをとる動物が見つかる可能性は十分にあります。今年の8月にスウェーデンで開催された国際学会で基調講演を行ったところ、大きな反響を得ることができ、シジュウカラ語の研究に世界の注目が集まっていると実感しました。動物たちの言葉を正しく理解するために、動物言語学という新しい学問を作ることが現在の目標です」

ここがすごいよ! シジュウカラ

単語を認識

(ヘビだ!):ジャージャー
(タカだ!):ヒヒヒ
(集まれ):ヂヂヂヂ

危険を及ぼす相手を察知すると、敵の種類に応じて異なる声で鳴き、仲間に知らせるシジュウカラ。警戒の声以外にも、「チッチッチ」「ピーツィ」など、さまざまな声を使い分けて仲間とコミュニケーションしているという。

文法を操る

ピーツピ(周囲を警戒)+ヂヂヂヂ(鳴き声に接近)→警戒しながら集まれ
ヂヂヂヂ(鳴き声に接近)+ピーツピ(周囲を警戒)→動かない

「ピーツピ+ヂヂヂヂ」は“警戒しながら集まれ”という2語文で、仲間と共に天敵を追い払うための号令だ。実験的に語順を入れ替えて聞かせてみると意味が伝わらない。こうした実験の積み重ねから文法の力が証明された。

鈴木俊貴さん 動物行動学者。京都大学白眉センター特定助教。シジュウカラやその仲間を中心に鳥類のコミュニケーションを研究している。TV番組に密着されるなど、今、国内外から注目を集めている研究者の一人。

※『anan』2022年10月5日号より。取材、文・重信 綾

(by anan編集部)