志村 昌美

う、売られるの…!? 恐怖体験! 海外で知らない人に連れ回された!|実録!トラブルトラベラーMasamiの事件簿Vol.9

2018.1.24
これまでに海外旅行のべ30回、海外留学3回の経験を持つライター・志村がお送りする「実録!トラブルトラベラーMasamiの事件簿」。前回は食あたりについてのエピソードをお届けしましたが、今回は少しさかのぼってトラブル満載だった旅行中の恐怖体験についてご紹介します。それは……。

見知らぬ人に連れ回された in ベトナム!

【実録! トラブルトラベラーMasamiの事件簿】vol. 9

女子2人旅を満喫していたある日。街中で用事を済ませようとしていた私たちに、突然現地の男性が「写真を撮ったるで」と謎の関西弁で話しかけてきたのです。日本語を話せるというだけで親近感がグッと増し、しかもシャッターを押してくれるというので迷わずお願いしました。

しかし、これがすべてのはじまりだったのです……。

そのあとは別々の方向に行ったはずでしたが、しばらくしてカフェに行こうとしたら、なんとさっきの男性と再会。「わー、すごい偶然だね!」という感じで盛り上がり、おじさんのおごりで一緒にお茶をすることに。

いま思えばおそらく最初の段階からターゲットにされており、偶然を装って私たちのあとをつけてきていただけだと思いますが、疑うことを知らない私たちは無邪気にはしゃいでいたのでした。

ところがその後、カフェを出て別れようとしたら、なぜかおじさんも私たちと一緒のタクシーに乗り込み、「フォーを食べに行こう!」と提案。半ば強引ながらも、お茶をおごってもらったせいか断りきれない私たちは、気がつけばおじさんと3人でフォーを食することに。

そして、今度こそお別れを告げようとしたら、「おいしいベトナムコーヒーを買えるお店を知ってるから行こう!」と押し切られ、おじさんオススメのお店へ。何となく買わないといけない雰囲気になり、コーヒーやお茶を買うことになりますが、もうそろそろいいだろうと別れを告げようとしたとき、まさかの……。

「今度はマッサージに行こう!」

「いやいやいや」と思いながらも言われるがままの私たち。そんなこんなで町外れの美容院にたどり着いてしまったです。「ここでマッサージ?」と思いつつ、彼の案内についていくと、なぜかどんどんと店の奥へ。そこで私たちが見たものは……。

まるで刑務所のような薄暗い階段!

うっすらと光がある程度で、どんよりとした階段は上へとつながっており、先の見えない展開に恐怖心が急上昇! 頭の中では、「階段を上がるとベトナムマフィアが待ち構える→着ぐるみを剥がされて品定め→どこかの国へ売られる→日本へは二度と帰れない」という妄想がどんどんと広がり、階段を上る足も重くなるばかり。

と、ここで「なぜ逃げ出さないのか?」と疑問を抱いている人もいるかと思います。事実、私たちもなぜこんなにも素直について行ったのだろうかと、いまは不思議に思っているくらいです。

ただ、相手が男性だと抵抗したときに何をされるかわからない怖さに加え、軽いパニック状態で判断能力が低下していると意外と何もできないもの。そうこうしているうちに、2階へ到着し、殺風景な暗めの部屋で待ち構えていたのは……。

簡易ベッドとマッサージ師の女子たち!

「あれ?マフィアじゃない?」ととりあえずひと安心するも、次の瞬間! おじさんがシャツを脱ぎ始め、上半身裸になろうとしているではないですかっ! 「ついに本性を見せたな!やばいー!」と思ったのもつかの間、慣れた感じでベッドに横たわるおじさん。

「普通にマッサージ受けるんかーい!」と心のなかでツッコミながら、ようやくひと息つくことに。同じように荷物を置いてベッドに横になるように指示された私たちは、おじさんと川の字になって寝ていたのですが、どんなマッサージが始まるのかと、いろいろな意味でドキドキしていたところ……。

いきなり髪の毛を洗われる!

「まさかのヘッドスパ的なやつ?」と思いながらも、乱暴に髪を洗われてビビる私たち。もはや抵抗することもできなくなっていたところ、続いては……。

いきなり顔を洗われる!

「次はフェイシャル的なやつ?」と思っていた矢先、そんな気持ちのいいものではないことが判明。なぜか彼女たちは全員ツメを伸ばし、しかも鋭く尖らせているのですが、そのツメで顔中をそっとひっかきながらのマッサージがスタート。

画力が足りなくてうまく伝わらないかもしれませんが、イメージ的にはまるで「とんがりコーン」をすべての指先につけているかのような形のツメのため、とにかく痛いし、何よりも背中がゾクッとするような気持ち悪さ。そんな不気味なマッサージをドヤ顔で続ける彼女たちと格闘しながら、私たちにはもうひとつ気がかりなことがあったのです。それは……。

部屋の窓際に置いた貴重品入りの荷物!

頭のなかをよぎるのは、「洗顔中に目をつぶらせておいて、そのすきに盗む作戦か?」という不安。そのため、どんなに顔に水をかけられても目をつぶることができず、必死にまばたきをしながら応戦し、横目でカバンをチェックし続けるはめに。

おそらく人生でもっともリラックスできないマッサージ体験であったことは間違いありませんが、とりあえずフルコース(?)が終了。いったいどれだけの時間が経ったのかもわからないまま、行きは死刑囚のような気持ちで上った階段も、帰りは心なしか明るく見え、何とか無事に地上へと戻ったのです。と、そのとき! 入り口付近の美容室スペースにあったの大きな鏡に映る自分を見てびっくり。

頭はボサボサ、目の下はマスカラで真っ黒!

いったい何事かと思いつつも、横になったまま髪を洗われ、メイクも落とさずに顔を洗われたので、当然といえば当然の結果ですが、そこに恐怖心も加わり、とんでもない表情に見えたのかもしれません。

もちろんこんなマッサージでも、しっかりと料金は請求され、友達いわく「日本と同じくらいの料金に感じた」ということなので、ベトナムの物価から考えればかなり高いほうではないでしょうか? しかも、洗髪と洗顔だけで、マッサージらしいことはしてもらった覚えがないので、そういう意味でも割に合ってない感がすごいです。

そして、「まさかこのあともまだ続くのか?」とぐったりしていたのですが、タクシーに乗せられた私たちはおじさんに見送られ、ようやくここで解放! しかし、この一連の出来事は結局何だったのか理解ができず、放心状態の私たち。タクシーの窓から見える景色も何だか朝とは違うものに感じられたほどでした。

その後、ホテルの部屋に戻ったときにやっと生還した実感が湧き、腰砕け状態で座り込んだ私たちは、無事である喜びを噛み締めたのです。いまとなっては、笑い話ではありますが、一歩間違えればどこかへ連れ去られてしまった可能性も否定できないので、特に女子は気を付けて欲しいところ。

では、「どうすればいいの?」と思ったあなた!

「こんな連れ回しに対策なんてあるのか?」と思っているかもしれませんが、経験者なりに3つの心がけを考えてみました。

その1:まずは自分の意志をはっきり伝える!

まだ若かった私たちは、典型的なNoと言えない日本人であったため、途中で断ることができなかったのですが、やはりこれが一番大切。強引な場合もあるかもしれませんが、あいまいな返事だと押し切られるので、あくまでもはっきりと言うようにしてください。

とはいえ、別にケンカ腰で言う必要はありません。たとえば、「このあと友だちと待ち合わせているから無理」でも「何時の飛行機にどうしても乗らなければいけないから」でも、断る理由は嘘でも何でも大丈夫。何よりも大事なのは、自分が嫌だと思ったときにきちんと意志を示せるかどうかです。そうしないと、すべて相手の言いなりになってしまう可能性があるので、気をつけましょう。

さらに、海外にいるときは、自分が “日本人の代表” ともなるので、「日本人はNoと言わないから簡単だ!」という印象がつけば、私たちのあとにその土地を訪れる日本人がターゲットにされる確率も高まります。そういう意味でも、きちんとした態度をとることが求められているのです。

その2:事前に同伴者と決めておく!

ひとり旅ではすべて自分の意志によりますが、今回のように誰かと一緒の場合は、こういうトラブルに巻き込まれたときはどうするか、というのを少しでも事前に話しておくのがよいでしょう。通常、海外で日本語がわからない相手の場合なら堂々と目の前で相談することができますが、今回のように日本語ができてしまう相手だと、話し合うことができません。

特に、当時はまだスマホもない時代であったため、私たちはアイコンタクトをすることしかできず困りましたが、いまならたとえ相手が目の前にいても、LINEなどのメッセージで話し合うこともできますよね? なので、「何かあればこの方法で連絡を取り合おう」といった感じで事前に決めておくと問題に直面したときにあたふたしないと思います。持っている “武器” は最大限に活用しましょう!

その3:自分はそうならないと思い込まない!

どうしても、「自分は大丈夫」と思いがちですが、そういう考えでいると、いざというときに異変に気がつくのが遅くなります。「こんなことがあるかもしれない」くらいでもいいので、頭の片隅に置いておいてください。それだけでも冷静に対応できるかどうかに大きな違いが生まれるはずです。

どれもいまさら改めて言うことでもないと思われるかもしれませんが、トラブルに直面したときこそ、意外と単純なことを忘れがち。小さな心がけで、大きなトラブルを回避するようにしてくださいね。

いまとなっては、おじさんの明確な意図はわかりかねますが、店員さんたちと慣れた感じであったことから想像するに、自分の家族や友人のお店に連れていってお金を使わせることが目的、もしくはそういう仕事だったのかなと思っています。

しかも、おそらく最初にカフェでおごってもらった以降、フォーでもマッサージでも、おじさんがお金を払っていた気配はないので、知らぬ間に私たちが彼のぶんもすべて払っていた可能性大。ということで、貴重な旅行の時間だけでなく、お金も無駄にすることになるんだというのも覚えておいてください。

旅行で浮かれても、冷静な判断は忘れない!

ただし、異国での新しい出会いは旅の醍醐味でもあるので、すべてが悪いとは言いたくはありませんし、全員を疑いながら旅行するのは悲しいことです。なかにはいい出会いもあると思うので、きちんと見極めつつ、少しでもおかしいと感じたら、慌てずに毅然とした態度で接するようにしてください。

以上、知らないおじさんに連れ回された in ベトナムでした。この体験を代表するように、私は昔から国内外問わず、変な人に絡まれがちな体質。そこで次回からは、海外で出会った変わった人シリーズをお届けしたいと思います。乞うご期待ください!

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