櫻井 智絵

【本屋大賞受賞】宮下奈都さんの『羊と鋼の森』を、丸の内OLが読んでみた。

2016.4.19
丸の内に勤務する読書好きのOL・櫻井智絵が、自分が読んで「ああ、面白かった!」と思った本だけを紹介する連載【丸の内OLの給湯読書室】。第14回は、本屋大賞を受賞した話題作、宮下奈都さんの『羊と鋼の森』を読んでみました。

「直木賞」ノミネート、「本屋大賞」受賞作品!

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【丸の内OLの給湯読書室】vol.14

2016年4月12日、全国の書店員さんの投票で選ばれる賞、2016年『本屋大賞』の発表がありました。この賞は、出版不況の中で図書館や電子化の利用が増え、本の売り上げが伸び悩む書店のため売れる本を作ろう!と始まったものだそう。キャッチコピーは “全国書店員が選んだいちばん!売りたい本”。年々その注目度はあがっていき、受賞作品の多くは増版されたり映画化されています。

『羊と鋼の森』とは?

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あらすじは…

物語は、高校の先生からある人を体育館まで案内するように頼まれた主人公(外村)が、彼の人生を捧げることとなる運命の出会いをすることから始まる。そこにいたのは、音から依頼主の心を読み、人生を知り通じ合っていくピアノの調律師。この出会いをきっかけに、外村は今まで知らなかった世界に魅了され、その仕事に従事する。最初は右も左もわからず戸惑いながらも、個性豊かな先輩たちの仕事に対する言葉や姿勢を追いかけながら、日々成長していく。ピアノの調律師という物静かな舞台からぐっと引き込まれるストーリー展開に胸が熱くなる。一人の青年が未知なる可能性を信じて一歩一歩突き進む姿を温かく綴った、希望に満ち溢れる長編小説。

読み終えて……

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「この本が好き……。ずっとずっと本の中にいたい」と思えた作品でした。世の中には、言葉では表現できないことがたくさんあります。そんな時、私は音楽を聴いて気持ちを高めたり和らげたりしますが、音楽には、作詞家や演奏家だけでなく、調律師もまた大切な存在なのだということを知りました。

本書では、一般家庭のピアノを調律する場面が出てきます。そこでは、依頼された「明るい」「やさしい」「鋭い」音に調律していくのですが、同じピアノであってもその人によって求める音が異なります。例えば、仕事で色んな無理難題を要求してくるお客さんがいるとします。相手の要求に応えようと、一生懸命考えて提案しても最初からOKをもらえることは難しい。何度も何度も繰り返して相手と信頼関係を築けた先に、いつかは認められるかもしれません。または外村のように、どんなに好きで頑張っても悔しくも担当から外されてしまうことだってあるでしょう。「正しいことは人の数だけある」。誰かと通じ合えた瞬間があるからこそ、仕事を楽しいと感じたり、また頑張ろうという気持ちに繋がるのではないでしょうか。

この本は、ゆっくりと確実に、一つ一つ丁寧に自分の目指すものに気づいていきます。高校の体育館で初めて感じた世界に飛び込んでいく主人公と自分を重ねて読みたくなる一冊です。

最後に…

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本を好きになる前の私は、単行本よりも文庫本(単行本の売れ行きによって数年後に発売)を購入していました。その理由は、あとがきが加筆されていたり、価格が単行本より安く持ち運びしやすかったからです。ですが、だんだん本を好きになるにつれて、好きな小説家さんや気になる本をいち早く読みたくなり、単行本を選ぶようになりました。単行本はハードカバーなので少々重みがありますが、発売されるとサイン会やトークショーが開催され、ご本人と直接会える機会があります。実際に私も何人か好きな小説家さんに会いに行って、本に込められた熱い気持ちを聞き感動してきました。今回の本屋大賞をきっかけに、普段買わない単行本を選んでみるのもオススメです!

また、今回の本屋大賞の翻訳小説部門では、ガブリエル・ゼヴィンさん(小尾芙佐さん訳)の『書店主フィクリーのものがたり』が大賞を受賞しました! 以前、こちらも記事にしていますので合わせて読んでみてはいかがでしょうか。

※今回のイメージ写真は、毎朝出勤前にピアノの練習をしている先輩にお願いして撮っていただきました。この場を借りてお礼を伝えたいと思います。ご協力いただき本当にありがとうございました。

Information

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『羊と鋼の森』(文藝春秋BOOKS)¥1,500+税


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