二次障害による苦しみ。アスペルガー症候群から発症した精神疾患

文・七海 — 2017.1.30
アスペルガー症候群はマイノリティ。マジョリティである ”健常者” 社会にうまくなじめず、二次障害を発症してしまうことがあります。二次障害とは、精神疾患を併発してしまうこと。私自身、アスペルガーであり二次障害を発症しました。その苦しみをお伝えしようと思います。

マジョリティの心ない言動。私が二次障害を発症するまで

アスペルガー症候群は、生まれつき ”健常者” と脳の構造が違うと言われています。”健常者” が普通に行っているコミュニケーションが、非常に難しく感じるのです。コミュニケーションなしには社会を生きていけません。アスペルガー症候群であっても、コミュニケーションを取らなければならないのです。

しかし、ここは ”健常者” が多くを占める世界。コミュニケーションを行ううえで、アスペルガー症候群の人と ”健常者” がつながろうとしてもなかなかうまくいかない現状があります。そして、うまくいかないコミュニケーションで迫害を受けるのはマイノリティであることが常です。マイノリティであるアスペルガー症候群は、心を病んでしまうことが多くあるのです。

私の場合、中学生時代に酷いいじめを受けました。それから何年も経っているのに、未だにフラッシュバックに苦しまされることがあります。いじめを受けた頃から、朝起きるのが苦痛になってきました。学校に行きたくない、だけど親にいじめられていることを知られたくない。その板挟み状態で、重い足を引きずって学校に行っていました。

その頃から多くのことがおかしくなってきました。ジンクスを信じる人もいるかと思いますが、私は勝手にジンクスを作り、そのジンクスがあると今日はいじめられない、と考えるようになったのです。それがだんだん酷くなっていき、自分の行動も制限するようになりました。足は右足から出さなければならない、歩き方はこうでなければならない、ドアはこう開けなければならない。そういった決まりをいくつも作って、それがうまくいかなかったら最初からやり直していました。そんなジンクスを作っても、いじめがなくなるわけではないのに―。

重度の精神障害者に見られる私。私が発症した精神疾患とは

ジンクスを作り、それに従って行動していたのは強迫性観念という診断でした。その傾向は、精神バランスを崩すと今でも出てきます。そのほか、双極性障害、いわゆる躁鬱も併発しました。パニック障害や醜形恐怖症、解離性同一性障害も持っています。

精神科やカウンセリングに行くと、”外に出られない程度の鬱状態” と診断され、初めて行く精神科のお医者さんには「働けるようになるまで頑張ろうね」とよく言われます。しかし、幸いにして私は働いています。それは、周囲の理解があってこそ。障害者枠ではなく、通常の人として働けているのです。しかし、働けない苦しみも経験したことがあります。ある出来事でショックを受けたことにより、酷い躁状態になりました。そして、その反動で大きな鬱を引き起こしてしまったのです。動きたくても動けない状態になり、ベッドで涙を流すだけの日々。働きたくても働けない、そういう経験をしているからこそ、働ける幸せがわかるんだと思います。

今でも精神バランスが崩れて少し休養を取ることがあります。そのときは、働けなくなった過去が鮮明に浮かんで恐怖感に苛まれます。私はこのまま働けなくなるのだろうか―。それが、怖くて怖くて仕方ないのです。

二次障害で苦しんでいる方、そしてその周囲の方へ伝えたいこと

私は幸いにして働くことができていますが、以前の私のように、働きたくても働けないという人も多くいると思います。発達障害を持ちたくて持ったわけではない。だけど、こういった私と向き合いながら生きていかなければならない―。障害者年金を受給している人、生活保護を受給している人も少なからずいます。それを、やみくもに差別しないでください。不正受給が取り沙汰されるなか、真剣に悩み、生きる糧にしている人もいるのです。”健常者” として働けるからといって、働けない人の背景を知らずむやみに非難しないでほしいということを伝えたいです。

また、二次障害で苦しんでいる方。心ない言葉を浴びせられることもあるかもしれません。世の中にはいろいろな人がいます。誰かを貶めないとプライドが保てないという人もいるのです。その心ないひと言に傷つくでしょうが、そういった人ばかりではないと心のどこかにとどめておいていただけると嬉しいです。あなたはあなた。発達障害を持って生まれてきても、二次障害を発症しても、かけがえのないあなたなのです。世の中敵ばかりではない―。味方もいるんだということを支えに、少しでも、希望を持って生きてみませんか?

私がこうして発信するのは、障害に苦しんでいる方に少しでも楽な気持ちになってもらいたいのと、発達障害や精神疾患への偏見がなくなってほしいという願いからです。どうか、その願いがあなたの心に届きますように。


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