倫理観が問われる! ブラックユーモア満載の問題作 『トッド・ソロンズの子犬物語』!
アメリカン・インディペンデント界の鬼才がおくる注目作『トッド・ソロンズの子犬物語』!
【映画、ときどき私】 vol. 68
生後間もない一匹のダックスフント。ある家族のもとに引き取られることになるが、それは病気を患っている9歳のレミへ父親からのサプライズプレゼントだった。すぐにレミとダックスフントは仲良くなり、新しい家族として大切にされていた。
しかし、“ある事件” がきっかけとなり、他の人の手に渡ることに!
その後、ダックスフントは心優しい獣医の助手のドーンや苦境に立たされる映画学校の講師で脚本家のシュメルツ、偏屈なおばあさんなど、ちょっと変わった人たちと生活をおくることになるのだった。そして、アメリカ中をあちこちさまよったあとに迎える驚きの結末とは……。
犬好きは鑑賞厳禁!?
かわいいダックスフントが登場するので、本来なら「犬好きは必見!」といいたいところなのですが、むしろ犬好きにはオススメできないのがこの作品。
特にラストは刺激が強すぎて、「まさか!」からの「ヒー!」となって、「また!?」からの「もう、やめてー!」となって、最後は「えっ!そんなオチって……」という5段階で衝撃が押し寄せてきます。
なので、最後は笑えるか笑えないかの2つにハッキリとわかれるのが本作の “問題点”。いままでに熱帯魚しか飼ったことのない私ですら、かなりハッと息を飲んだので、おそらくワンちゃんをペットにされている方は、凍り付いてしまうかもしれません……。
とはいえ、映画の途中でCMのような謎のオモシロ映像も流れるので、安心してダックスフントのかわいさを味わえるシーンも一応あることはあります。ただし、それを打ち消すくらいの “爆弾” が仕掛けられているので、お忘れなく。
「観ちゃダメ!」と言われると観たくなるのが人間の心理ですが、最後にもう一度言います! 犬好きはくれぐれも要注意です!
では、そんな作品の見どころは?
ブラックユーモアが詰め込まれすぎて、「ここで笑っていいのかな?」と混乱させられるところも多々ありますが、ここまでくると「もう笑うしかない」という感覚にさせれます。しかし、監督が描きたかったのはそれだけでなく、一匹の犬が出会う人間たちの姿。
登場するのは、ひと癖もふた癖もある個性豊かなキャラクターばかりですが、とにかくみんな不器用。でも、そんな彼らが滑稽なまでにもがいている様子には、ある種の愛おしさを感じてしまうはず。器用とはほど遠い私も、どこか親近感を持ってしまいましたが、「不器用なりにみんなちゃんと生きている」と感じるのです。
ダックスフントのように小さくても、まずは一歩ずつ前進すること!
人としてどんなに不完全だとしても、前に進むのを諦めないことが何よりも大事。たまには道を間違えたり、悩んだりしている方が人間らしくて、自分らしい生き方なのかもしれません。そして、「不器用なのは自分だけじゃない!」と勇気が湧いてくるはずです。
人生をなかなか上手く切り開けないと感じているならば、思わず笑いが込み上げてくる本作で、まずは新しい “笑いのツボ” を開拓してみては?
犬好きもギリギリ楽しめる予告編はこちら!
作品情報
『トッド・ソロンズの子犬物語』
1月14日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー
配給:ファントム・フィルム
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