女って良い。快楽の海で欲のままに…|12星座連載小説#32~射手座2話~

文・脇田尚揮 — 2017.3.7
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第32話 ~射手座-2~


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色とりどり宝石たちがまぶたの中に浮かんでは消える。

アクアマリンにエメラルド、……あれはルビーね。青に緑……、そして赤の煌きがまるで万華鏡のよう。

いつからだろう、ジュエリーに心惹かれるようになったのは。

多分、ずっとずーっと幼い頃から好きだったのよね。

宝石が嫌いな女子なんて、いないわ。でも、アタシは特別好きなんだろう。

アタシがチョイスしたジュエリーたちを、喜んで身につけてくれる人たちの顔が目に浮かぶ。

娘を嫁にやるお父さんの気持ちってこんな感じなのかも。嬉しいんだけど、何だか切ない。宝石と出会い、それを気に入った誰かに買ってもらう、まるで自分の子どもを嫁がせるようだ……。

―――振動で目が覚めた。

「Honey,起きた? まるでフェアリーが傍にいるようだったヨ」

クリスが運転している横で、アタシは少し眠っていたみたい。気がついたら、もう自宅のすぐ近くまで来ていた。

『クリス、愛してるわ』

彼の頬にフレンチキス。

「僕もだよ、ジュン」

『良ければ上がっていかない?』

荷物をまとめながら尋ねる。クリスはとっても聞き上手。アタシのとりとめもない話をちゃんと聞いてくれるの。3週間ぶりの帰国だもん。いろいろ話を聞いて欲しいし、愛し合いたいわ。

「OK! もちろんだよ! じゃあ僕は車をparkingに停めてくるね」

親指を立てて、嬉々と走り去る彼。

こういう分かりやすいのが好き。

日本の男たちって、こういう時しどろもどろになって、何だかんだと理由をつけて断る“ふり”をするクセに、結局は上がり込むんだからメンドくさいのよ。

あ、自宅に招くのは良いんだけど……やべ、片付けてないや。まぁ、クリスはアタシの性格を知ってるから大丈夫か。

どうせ「何だい、この“child’s room”は!?」とか言って、片付け始めるでしょ。彼、綺麗好きだから。

鍵を開け、数週間ぶりに自分の部屋を見てみると……、確かにそこは”子供部屋”のように散らかっていた。

小学生の女の子でもこんなに乱雑じゃないだろう。でも、そんなのはどうでもいいこと。ヒールを脱ぎ捨てて、まずやることは、“お宝ちゃんたち”とのご対面よ。

『……やっぱり間違いないわ』

この輝き、ホンモノね。無色で虹色の光沢を放ってる。

インクルージョンも傷もない。ラウンドブリリアントカット、オーバルカット、マーキズ……ダイヤの表情をよく捉えてる。
シンメトリーの美しさも、ハート&キューピッドで申し分なし。やっぱりダイヤはイスラエルに限るわね。

カーテンの隙間から漏れる太陽光に透かしながら、その大自然が創り出した美しさに見惚れる。

宝石に当たった光は、レインボーに反射する。雑多な部屋に虹がかかるのだ。

――ガチャ

「…Oh! ジュン、なんだいこの、“child’s room”は!?」

クリスだ。ホラ、想像通りの反応。

『ねえ、見てクリス。今回のダイヤは極上よ』

「OK,ジュン。分かるよ。でもまずは片付けからだ。でなきゃ、lunchもできないヨ」

家にやってきたばかりだというのに、彼はいそいそとキッチン掃除を始める。本当にマメなヤツ。アタシのこの性格についてきてくれる男なんて、日本人にはそういないかも。

……そう考えると、途端に愛おしくなってきた。

『クリス!』

後ろから抱きつく。そして彼の耳たぶを甘噛みする。……クリスは耳が弱いって、知ってるんだから。

「ちょ、まっ……Oh!」

そのまま彼の服を脱がせ、ズボンのベルトを荒っぽく外す。もう、どうしようもなく欲しい。耳から首筋にかけて舌を這わせる。

少し汗ばんだ彼の肌は、ほのかに塩っぽい味がする。……この動物的な感じがイイ。

私も上半身を露わにし、クリスの背中に胸を押し当てる。

ミニスカートの中から下着を剥ぎ取ると、透明な糸を引いていた。私のオンナの部分は、もう準備できてるわ。

クリスのそれを手でしごく。

「Jun,you are Crazy!」

クレイジーで結構。良い仕事をした後は、男に抱かれて女を感じたいじゃない。それって、普通の感覚だと思うわ。

―――欲のままに、彼のモノを受け入れる。

テーブルに手を置いたアタシの後ろから、彼がマシンのように思い切り突いてくる。寄せては返す波のように、快感が押し寄せてくる……。

まるで、頭の中に電気が走っているかのよう。

キッチンに、肌と肌がぶつかり合う音が響く。そして、その音に混じり合うように漏れる、男と女の吐息と聲。

女って良いな……。

朦朧とした意識の中で、そんなことを思う。

アタシは自分に満足してるの。女は“次の世代を創る”能力を持ってるわ。

妊娠はもちろん、ファッションのような流行から、男のモチベーションまで……。

実は、この世の中は女が回してるのよ。表面上、男にそれを譲ってあげてるだけでね。

彼をそのままベッドにいざない、今度は私が上に乗る。

「Jun,beautiful.」

彼の上で、思い切りグラインドする。

男の、クリスの感じている顔を見るのが好き。アタシと彼の恥部が擦れ合い、淫猥な音がメトロノームのようにリズムを刻む。

……無限とも思える時間は、彼が果てるまで続いた。



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【今回の主役】
戸部淳子 射手座28歳 ジュエリー卸業
ヨーロッパ圏でのホームステイなど、学生の頃から海外経験が豊富で、英語がそこそこ堪能。国外から宝石を買い付けて、ブティックやウェデイング業界に卸している。若さの割に目利きであると評されるところも。イタリア人の彼氏・クリスがいるが、性に奔放で何かとトラブルが起こりやすい。

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