イタリア人彼氏との熱烈なキス|12星座連載小説#31~射手座1話~

文・脇田尚揮 — 2017.3.6
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第31話 ~射手座-1~


前回までのお話はコチラ

―――幸運の女神様には前髪しかない。

通り過ぎた後に、慌てて捕まえようとしても、後ろ髪がないから捕まえることはできないの。Chanceは今、ここにしかない!

キラキラと輝くジュエリーたちは、アタシの心をアゲてくれる。

宝石の買い付けに成功した私は、今日もテンションMAX! 仕入れから卸しまで全部やっちゃうJunちゃん(アタシ)は、パーフェクト・レディね! ウフッ♡

買い付けた美しいジュエリーの写真を、スマホで眺めながら一人悦に入る時間は、アタシだけの“Beautiful Time”。きっとクリスも褒めてくれるわ。

イギリスで飛行機を乗り継いで、ようやく日本に戻るルートに。ここまで来ると、もう気が抜けちゃう。はぁ~っと。

――プシュ

おっとと、吹き出したビールの泡さえ、私を祝福してくれているように思えて、気分がイイ。

今回は、キラッキラのダイヤを数十点ゲットしちゃった。A5クラスのものもあるし。あれはなかなかの掘り出し物。

私はそこまで英語が堪能ってワケじゃないけど、ノリが良くて、他人から信用を得るのが得意だから交渉もうまくいくのよね。

まぁ、初めは厳しかったけどね……。

飛行機の窓から見えるは、群青色のバレットと子供が食べ残した綿菓子のような雲。

ふと子供時代を思い出す。あ~、アタシもお祭りで綿菓子をねだったなぁ。

あの頃とは、人生180度変わっちゃった。ホント人生って何が起きるか分かんないものね……。

機内のビールを一気に飲み干して、ケープにくるまって寝る! 起きたらJapanだ。

今回Getした中で、1番イイ感じのダイヤモンドは……そうね、ウエディングの瀬名さんに交渉かな。で、残りはイベント用に使おうかな……むにゃむにゃ

――キーン……ガッ、ゾゾゾゾーー

『オッ! んあっ』

起きた。

――ズゾゾゾゾーーーー

どうやらJapan……日本に着いたみたいね。

あー、とっとと家に帰ってエッチしたいわ。帰宅したらクリスとラブラブな時間を過ごすの。で、クラブに行って、お寿司も食べたいかな。楽しいことを沢山するの!

国際線の到着口はひとでごった返している。相変わらず、面倒……。これ、どうにかなんないかな。

そんなことを考えながら、スマホの電源を入れる。

あっ! クリスからだ。

「Jun! 良い旅だったかい? Naritaまで迎えに行くよ!」

もう! クリスったら、可愛いんだから。

でも、私は決まってこう返すの。

『Try and catch me!(私を捕まえてごらん)』

オンナはそう簡単じゃないのよ。

パスポート審査を受け、お宝が詰まったキャリーバックを手に、ちょっとお土産屋さんに寄ってみる。

海外で買ったお土産は日本の人たちに。空港で買ったお土産は海外の人たちに。

外国人って、意外と変なものが好きなのよね~。
日本人であれば、おそらく怪訝な顔をするであろう、お菓子をレジに持っていく。いいのいいの、これで。

『よし、あとはクリス待ちね。』

私たちが落ち合う場所は、いつも決まっている。あと5分もすれば、P4に来てくれるはず。クリスに連絡を入れて、私は駐車場へと向かう。

……本当、尽くしてくれるんだから。変なヤツ。

クリスと出会ったのは、女友達エミのホームパーティー。

ブラウンの髪とメガネの奥の潤んだ瞳。“なんちゃって”なヒゲをたくわえて、いかにも芸術家!って感じのひとだなーと思っていたら、本当にアーティストなんだもん、笑っちゃった。

出会って間もないのに、「Jun、ワタシはアナタが好きです」って言われたときはチョット驚いた。

確かそのときアタシには、3人のセフレがいたのよね。

で、それを伝えたら、「ワタシがアナタを好きなことに変わりはアリマセン」って。

で、『どうしたいの?』って聞いたら、「ワタシはJunのSpecialになりたいデス」だもんね。

最近の日本人男子よりも、よっぽど“純”だわ。とてもイタリア人とは思えないわね。


―――あ、いた

ブラウンのくせっ毛と私が買ってあげたスカイブルーのTシャツが、アンバランス。まるでどっかの“ご当地キャラ”みたい。

「お前、一応芸術家だろ!?」とツッコミを入れたくなるくらい、変なコーディネートのガイジンがブンブンと手を振っている。

確かに、見つけやすいけどさぁ……。

なんて呆れながらも、そんな彼が愛おしくて仕方がない。

『Hi! クリス!』

「Oh! ジュン! ジュン!」

オーバーリアクションは毎度のこと。

私たちは人目もはばからず、ディープなキスを交わした。

……これが生きてるってことよね。

明日生きている保証なんて、どこにもないもの。今、この瞬間を全力で楽しまなくっちゃ!

散々イチャイチャし、満足したアタシはクリスのターコイズブルーの“プジョー”に乗り込む。

クリスが荷物をトランクに入れ、車内でまたキスしてくる。もう、帰ったらいくらでもシテあげるわよ。


丁寧な運転が心地いい。……少し目を瞑る。



【これまでのお話一覧はコチラ♡】

【今回の主役】
戸部淳子 射手座28歳 ジュエリー卸業
ヨーロッパ圏でのホームステイなど、学生の頃から海外経験が豊富で、英語がそこそこ堪能。国外から宝石を買い付けて、ブティックやウェデイング業界に卸している。若さの割に目利きであると評されるところも。イタリア人の彼氏・クリスがいるが、性に奔放で何かとトラブルが起こりやすい。

(C) iurii / Shutterstock
(C) g-stockstudio / Shutterstock
(C) kiuikson / Shutterstock