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「忘れられない彼」との出逢い|12星座連載小説#26~牡牛座2話~

文・脇田尚揮 — 2017.2.27
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第26話 ~牡牛座-2~


前回までのお話はコチラ

「手を合わせて下さい」

ペタッ

「ごちそうさまでした」

「ごちそーさまでしゅた」

お昼ごはんの時間が終わり、春日先生の声が響く。

そのすぐ後に続く、子どもたちの声。

食べ始めるときは元気なのに、食べ終わると大人しくなるのが見ていて面白いなぁ。

片付け後、私たちも軽くミーティングをする。その後はおやつの準備と、お迎えの段取り。

当時は全く気付かなかったけど、先生たちは裏でいろいろ頑張ってくれていたんだなぁと、保育士になって知った。

「清水先生、たーくんのお父さんって、イケメンですよね~♡」

みーたんだ。保育士という職業は、普通のOLさんと比較し男性との出会いが少ないので、こうしてたまにお迎えに来る園児のお父さんを見て、キャアキャア噂話に花を咲かせることも多いのだ。

『あー、そうね。目が大きくて鼻筋通ってるしね。たーくんも大きくなったらイケメンだね』

……そんなことを言いながらも、正直全く興味がない。本当に大切なもの以外、私にとっては価値がないのだ。

―――お昼過ぎの眩しい太陽の光は、私にとって“彼”のようで……胸が痛い。

そう、あれは私が高校を卒業して、短大に入ったばかりのこと。

男っ気がない私を心配して、友達が合コンに連れ出してくれたんだよね。
それまであまり男の人と話したこともなかった私は、合コンのノリノリな雰囲気に威圧されてしまい、かなりテンションが低かったのを覚えてる。

そんな私に優しく声をかけてくれたのが、雅俊さんだった。

「大丈夫? 何だか疲れてるみたいだけど……」

爽やかな好青年が、心配そうに私の顔を覗き込んできた。

『あっ! あ、ごめんなさい』

私は、無意識のうちに謝っていた。彼との初めて交わした言葉は、そんなちょっと情けないものだった。

恥ずかしくて、彼の顔を見ることができなかった……。

「俺もさ、今回初めて合コンに参加して、実は緊張してるんだよね」

ほっぺたを掻きながら、恥ずかしそうに彼が呟く。こんなに女性慣れしてそうな人なのに、合コンが初めてとは私には意外だった。

『……実は、私も初参加で』

「そうだったんだ、じゃあお互い初めて同士だね、ははっ」

健康的な小麦色の肌の彼。口からのぞく、真っ白な歯が眩しい。

……この時、私は恋に落ちた。

「俺は飯田雅俊。こいつらと同じ大学の2年だよ」

『私は清水和歌子と言います。短大1年です。』

「そっか、じゃあ“わかちゃん”は、まだ高校卒業したばっかなんだね。お酒飲んじゃダメなんだ!」

その瞬間、私の頭の中は「きゃあ~~! 初めて男の人から”わかちゃん”て言われた!」と驚きと嬉しさで、もうグチャグチャ。
顔が真っ赤になり、火照っているのが自分でもよく分かった。

高校時代、“わかちゃん”なんて男子に言われることは、まずなかった。

その後は、私はただただ相槌を打つことしかできなかったが、雅俊さんが自分のことをいろいろと話してくれ、彼のことをよく知ることができた。

工学部で機械工学を専攻していること。

テニスサークルに所属していること。

カレーライスが好きで、学食で週4で注文していること。

そんな些細なことなのに、何もかもが新鮮に思えて、壊れた玩具のように首を上下に振るばかりだったと思う。

その他のことは、あまり覚えておらず、ただ彼が何かあるごとにニコニコ笑顔でほほ笑みかけてくれたことだけが記憶に残っている。

このまま時間が止まればいいのにと、本気で思った。

合コンもお開きになりかけたその時―――

「わかちゃん、良かったらメアド交換しようよ!」

『えっ!』

この合コンが終わったら、もうこの褐色の青年と会うことはできないと思っていた。

それだけに、内心とっても嬉しかった。また彼と連絡をとる機会があるんだ……!

その安堵感が、私の心をほぐし、自然と笑顔をつくっていた。

『はい!』

とても自然で、心からのYESだった。
高校の卒業式の時よりもずっと、明瞭で透き通った返事をしていたと思う。

「また、連絡するね! バイバイ!」

手を振る彼に、私も手を振り返す。

その後、一緒に参加した女友達たちにいろいろ聞かれたけど、これまた何一つ覚えていない。
ただ、どうやら彼には人気が集中していたみたいで、何で私なんかに声を掛けてくれたのだろうと、それだけが疑問だった。

帰り道に友達とアーケードを歩いていると、

「どうぞ~」

歩きながらティッシュを差し出され、つい受け取ってしまった。

いつもはウザいと思うティッシュ配りのお兄さんにさえ、なんだか「ありがとう! 頑張って!」と声を掛けたくなるような夜だった。それくらい心が高揚していたんだ。

帰宅して、ささっとシャワーを浴び、布団に入る。

まるで何かを、待ち遠しがる子供のようだった。

携帯を握り締めながら待っているのは、もちろん”彼からのメール”。

私は、まさに、恋に落ちていた―――



【これまでのお話一覧はコチラ♡】

【今回の主役】
清水和歌子 牡牛座28歳 保育士
子供好き。学生の頃から付き合っていて、結婚まで考えていた彼(飯田雅俊)に振られる。彼との恋をずっと引きずっており、復縁を望んでいる。ややぽっちゃり体型だが、男ウケする柔和な笑顔が特徴的。結婚していい奥さんになるのが夢。友人の紹介で、同郷の志田秀と引き合わされ、淡い恋心を持ちながらも、過去を忘れられずに苦しむことに。

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