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「私、結婚できますか?」ある看護師の悩み|12星座連載小説#18~魚座3話~

文・脇田尚揮 — 2017.2.15
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第18話 ~魚座-3~


前回までのお話はコチラ

「今日はお客様3名の予約ね……余裕そうだわ」

出掛ける支度をしながら、今日のスケジュールをチェックする。

これまで2回ほどスケジュールがギュウギュウ詰めの日があって、あの時は大変だったなぁ。

休みなしでずーっと鑑定していると、頭もボーっとしてきて鑑定の質も下がっちゃうから。ある程度余裕を持って鑑定のスケジュールを組まないと、お客様にも失礼だものね。私にはこれくらいが丁度いい。

―――ピロン

そう思っていた矢先、1通のメールが届いた。誰かしら?

『あっ』

銀座で働いている須藤さんからだわ。

今日、空いている時間にご予約お願いします、か。

どうしたのかしら。やっぱり何か深い悩みを抱えているのかしらね。

……今日は15時には、3名の鑑定が終わっているはずだから、15時半に来て頂こう。

私は須藤さんに返信した。

銀座のお店でママをやっていたら、色々とあるのでしょうね。少しでも、心を軽くして差し上げられたら良いのだけど……。


そろそろ時間ね。

私は家を出て、『フォーチュン・ハウス』へ向かった。

占いの館に到着し、自分のブースに座る。テーブルにタロット用のマットを敷き、PCを立ち上げる。

あとは深呼吸して気持ちを整えれば、準備完了。

「先生、今日もよろしくお願いします。」

受付担当の藤本さん。いつも笑顔で好印象なのよね。占い館の受付なんて、本当大変なのによく頑張ってるわ。

『こちらこそ、よろしくお願いね、藤本さん。』

そうしていつも通り、1人、2人とお客様を鑑定させて頂く。

占いはテンションが高すぎても低すぎてもダメ。心をいつもニュートラルに保っておくの。そういう“ゼロの心”だからこそ、お客様の全てを受け入れてアドバイスができるのだと、私は信じている。

「フレイア先生、次のお客様がお見えになりました」

お、3人目の方がお見えのようね。よし、がんばろ!

「先生、こんにちは」

さらさらロングヘアに眼鏡の女性だ。いかにも賢そうな顔つきで、少しキツそうな印象。学校の先生? それとも法律関係のお仕事かしら。

『こんにちは。よろしくお願いします。リラックスして何でも聞いてくださいね。まず……』

「鈴木沙耶、9月19日生まれで30歳。生まれた時間は8時15分で、生まれた場所は埼玉県です。現在都内で看護師の職に就いています。今回は結婚の相談に参りました」

おっと、出鼻をくじかれたわね。看護師さんか……。占いについても、わりと知っていると見える。少し難しいタイプ……かな。この手の方は、ヒアリングよりも占いの内容を理路整然と伝えて、きちんと結論と対策を示してあげなくちゃね。

『ご丁寧に、有難うございます。それじゃあ鈴木さん、結婚のご相談とのことですが、現在お付き合いしている方はいらっしゃるの?』

「はい、7月29日生まれ33歳の辻真司さんという男性と、現在3年お付き合いしています。でも、仕事が忙しくてなかなか会えないんです。私は結婚も視野に入れているのですが、自分自身、今の仕事を続けたいし、実はもっとスキルアップしたいとも考えているんです」

……なるほどねぇ。見た目通り“完璧主義”っぽいわね。

仕事も恋も……か。私も昔悩んだことがあるけど、両立はなかなか難しいのよね、これが。

二人の生年月日を占星術ソフトに打ち込みながら、そんなことを考える。

「鈴木さんと彼の相性は、比較的良い方と言えるわね。でも、彼は子供好きで、家庭に憧れを持ってるみたい。なるべく早く結婚したかったんじゃないかな。もしかして、鈴木さんが彼を待たせてない?」

彼女は眼鏡の奥で、目を一瞬だけ大きく見開いて、そして

「はい……そうです。私、結婚できますか?」

とだけ答えた。

『もしかしたら、鈴木さんは理想と現実のギャップに悩んでいて、答えが出せないのかも。ちょっとタロットで詳しく見させてね』

「―――お願いします」

『ちなみに、鈴木さんの夢は何か教えてもらって良い?』

シャッフルしながら尋ねてみる。

「薬剤師です。大学に行って資格を取り直したいと考えています」

う~ん、向上心は素晴らしいけど、その道のりを考えるとちょっと彼が可哀想ね。

タロットの結末は、“塔”の正位置。破壊と創造のカード。

『鈴木さん、ごめんなさいね。このままだと、今の彼との関係は壊れてしまうわ。でも、その先にあなたが求めている未来があるのかもしれない。』

「………そうですね」

彼女の眼差しが、塔のカード一点に注がれる。

『そして、対策にこの“逆さ吊りの男”というカードが正位置で出ているの。何かを犠牲にしなければ、どちらも手に入れられないと告げているわ。あなたにとって、結婚が大切なのか、それとも夢を追いたいのか、選んだ答えが今回のご相談の結論よ』

「わかりました。先生、ありがとうございます」

一礼して彼女は席を立った。

あっちゃ~、マズったかな……。

でも、私はネガティブなことでも、本人にハッキリ伝えるって決めているの。良いことばかりを言うのが占いじゃないもの。大事なのは事実を伝えて、どうすべきかを分かってもらうこと。

「……また来ます」

そう言って、彼女は帰っていった。

彼女のサラリとした黒髪から、少し笑みを浮かべた口元が見えた……ような気がした。

魚座 第一章 終


次回、“第19話 「結婚と仕事…どちらも選べない不器用な看護師」”は2月16日(木)配信予定。


【これまでのお話一覧はコチラ♡】

【今回の主役】
和辻花子(フレイア華) 魚座33歳 占い師
既婚者であり、夫に和辻哲夫、子供に和辻長輝(9歳)と和辻夢叶(5歳)がいる。家庭と仕事の兼ね合いで悩みつつも、占い師としてそこそこの人気を得ている。しかし、あるお客の鑑定をきっかけに、占いの限界を感じて心理カウンセラーの資格を取ろうと考える。

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