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女の生き様は「顔と体」に表れる|12星座連載小説#15~蠍座3話~

文・脇田尚揮 — 2017.2.10
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第15話 ~蠍座-3~


前回までのお話はコチラ

「ん……」

ふと、目が覚める。

あの後、自分のマンションに帰り、そのまま泥のように眠ってしまった。

カーテンの隙間から明るい日差しが差し込んでいる。昨夜のことが、すべて嘘だったかのように感じられる。

―――思い出すと、消えてなくなってしまいたくなる。墨汁のような深く重たい感覚に、必死に抵抗する。塗りつぶされてたまるものか。

今日はお店に行かなくては。私は曲がりなりにも、“銀座のママ”なのだ。

ずっと憧れてきたものに、私はなっている。
今の私には、お金の心配も人間関係のトラブルもない。胸を張って、銀座で生きていると言える。

「ニャ~ン」

ベットから立ち上がると、飼い猫のチカがやってきた。

『あぁ、ごめんね。ご飯ね』

キャットフードを取り出し、お皿に盛る。

チカは1年前、まだ私が『マリア』だった頃に拾った猫だ。

当時はガリガリに痩せこけていたのだが、この1年でかなりふっくらしてきた。可愛くて、つい多めに餌をにやってしまう私は、親バカだなと思う。

チカの面倒を見るという日課があるから、私は正気を保っていられる。チカは私の心の支えでもあるのだ。

『おまえは可愛いね』

無邪気に餌を食べる姿に、癒される。これが私の一日のスタートだ。

さて、今日は池田さんに連絡を入れて、クラブに来てもらわなくちゃ。
そして、倫子。あの子最近売上が落ちてるから、ちょっと面談をしないと。手帳をパラパラとめくりながら、今日一日のスケジュールをチェックする。

女の子たちを巻き込んでお店をまわし、そこにお客様がいて下さる以上は、ママとしての責任をキッチリ果たしたい。

「ピロリロン」

スマホのメール着信音が鳴る。これは……

『フレイア先生からだ』

フレイア先生は、私が通っている占い館の占い師さん。柔らかな印象で、しっとりとした口調で話す素敵な先生。

私が唯一、悩みを打ち明け、相談することができる存在ね。
“ズバリ当てる系”の占い師さんではないけど、いつも、その時々に私が必要としているアドバイスをくれる。

私はもともと、占いなんて信じていない。結局、人生は自分の選択ですべて決まっていくものだと思っているし、占いに運命を委ねたいとも思わないもの。
だから“誰に”話を聞いてもらうかが一番重要なの。私にとっては。

メールには、先生からのケアメッセージが綴られている。マメな人ね……。

私も客商売をしているから、本気で気にかけてくれているかどうかは、文面ですぐに分かる。この人は、本当に人の人生に寄り添うことができる人なのだろう。
営業でもなければ、単なる気休めでもなく、私のことを一番に考えてくれているのが伝わってくる。

……こういう友達が欲しかった。今日はオープンまで、まだ十分に時間がある。先生のところに行ってみようかしら。

「ウニャン」

チカが甘い声を出す。構って欲しいサインね。彼女を撫でながら、先生のことを思う。

占ってもらったからって、私の本質的な悩みはきっと解決しない。でも、誰かに話を聞いて欲しいの。

……決めた。やっぱり、お店に出る前に先生に会いに行こう。

先生に予約の返信をし、朝の支度を始める。

まずは食事の準備からだ。朝は必ず自炊するようにしている。

女1人で生活していて、孤独を感じることもあるけれど、食卓にきちんとした食事を並べるだけで、心豊かになるものだ。

子供時代、どんなに貧しくても、母は欠かさず食事を作ってくれていた。

ほぼ具のない味噌汁に貰い物の古米、大根の漬けものがほとんどだったけど、それでも母と弟たちと毎日食卓を囲み、あたたかい家庭だったと思う。

テーブルの上に並んだ料理を見ると、そんな昔のことを思い出すのだ。

食事を済ませ、洗い物もそこそこにシャワーを浴びる。

シャー……

コックをひねると、お湯が雨の雫のように降り注ぐ。
シャワーの水音が一瞬だけ、昨日の“黒い夜”を思い出させた。フラッシュバックしそうになるのを、必死に堪える。

『負けるもんか……』

自分でも聞き取れないくらいの声が、水音に混ざって消えていった。そのまま流れていってくれたらいいのに。

髪を乾かし、メイクをし、今日の服をチョイスする。私はあまりハデな装いを好まない。
イミテーションで自分を飾るのは、趣味じゃないからだ。

女の生き様は表情や身体に表れる。それがすべてだと思う。

「チカ、行ってくるね」

支度を終え、私は玄関先に向かう。

いつも私を名残惜しそうに見送ってくれる彼女が愛おしい。
私が帰宅する意義を、この子がくれているのだ。後ろ髪引かれつつ、彼女に微笑み、私はドアに鍵をした。


次回、“第16話 「「恋の悩みなら私に任せて!」占い師としての境地」”は2月13日(月)配信予定。


【これまでのお話一覧はコチラ♡】

【今回の主役】
須藤由紀(絢芽) 蠍座30歳 クラブホステス
豊満な肉体を持つセクシーな女性。貧しい幼少期を経て、自分の身体一つを武器に若い頃から水商売の世界でトップを取り続けてきた。さまざまな男性と情事を重ねる日々の中で、自分の生き方に疑問を感じ、男と女の化かし合いに疲れている。このまま、夜の世界の女帝となるか、それとも……。

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