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【12星座連載小説~双子座2話~】「完璧な男」との不倫に溺れ始める#5

文・脇田尚揮 — 2017.1.27
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第5話 ~双子座-2~


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一度帰宅し、“女子アナ江崎友梨”から“本来の江崎友梨”に変身。

今度は少し大人っぽく色気を出して。もちろんヒールは高め。
他の女子アナ達と比べて身長が少し低いのが、実はコンプレックスだったりする。その分、若さとスタイルで勝負するから別にいいんだけど。

『うん、時間ピッタリね』

タクシーを拾ってお台場まで向かう。今日は彼とデートだ。

……といっても、不倫だけど。

彼、新垣義久は私よりも8つ上の男性アナウンサー。
アナウンサーというだけあって、ルックスはもちろん良いし、学歴も身長も申し分ない。出世も早くて局内での印象も良い。家では奥さんと子供を大事にする理想のパパらしい。

ホント……、私と不倫している点以外はパーフェクトね。

彼には、私が入社したての頃にお世話になった。よくある先輩・後輩の間柄で、最初は別に興味なかったんだけど、何ていうかこの業界の人にしては珍しく素朴で普通の人だったのよね。

だから……なんだかいじめたくなってしまったの。親睦会の時に酔ったフリして一緒のタクシーに乗って、そのままキスしてホテルに行ってからもう7ヶ月。
初めは彼を踏み台にしようと考えていたんだけど、何だか最近はちょっと違うの。自分でもよく分からないんだけど。

彼からメールだ。

「ゆりちゃん、挨拶回りお疲れ様。今日はゆりちゃんの好きな生ハムとシャンパンが美味しいお店を予約しておいたよ。」

相変わらず本当スマートね。学生時代の彼氏たちとは大違い。やっぱり付き合うなら年上よね。

『義久さん、ありがとう! とても嬉しい! あと10分で着くからね』

不倫でなければ、なんて理想的なカップルだろう。外は少し雨が降っている。

嘲笑気味に私はタクシーを降りた。

ホテルのエントランスに着くと彼が傘をさして待っていた。マスクをしている。

「雨に濡れなかった?」

いちいち優しい。

『はい、ちょうどタクシーに乗った直後に降り始めたから全然。わざわざ有難うございます。義久さん、今日は早かったんですか?』

「あ、うん、まあね。ゆりちゃんとのデートだからさ、少し早くあがらせてもらった。」

『うふふ、嬉しい』

満面の笑みを作る。

いや、作っているんじゃなくて、本当に嬉しいのかもしれない。

いろんな男と付き合ってきたけど、こんなに私を大切にしてくれる人は初めて……な気がする。まぁ、妻子がいる人だと割り切ってお付き合いしてるけど。

エスカレーターに乗って、ホテル内のイタリアンレストランへ。

あら、あれは――――

見覚えのある顔。
あの人は確か……お気に入りの下着ブランド『アリアンロッド』のオーナー・黒木社長。
長身に明るいウェーブヘアーが印象的な素敵な女性だ。彼女の凛とした立ち振る舞いは、女の私でも見惚れてしまうほど美しい。

世の中狭いものね。まぁ、彼女は私のことなんて知りもしないだろうけど。私もあと数年したらあんなレディになれるかしら。

……きっと待ち合わせか何かね。男がいてもおかしくないもの。

他人の詮索はそこそこに、私は彼のエスコートで一番奥の人目につかないVIPルームに通された。

彼の上着をかけてあげる私。こういうとこ、さりげなく、ね。

そして私が腰掛けるのを確認して、彼も腰を落とす。

「いやぁ、お疲れ様だったね、ゆりちゃん。わざわざ制作会社まで足を運んで挨拶するのは、ゆりちゃんくらいだよ。尊敬しちゃうなぁ」

マスクを外しながら、彼が微笑む。

『義久さんだって、ニュース番組で関わるスタッフさん達にいつも気を遣っているじゃないですか。私なんてまだまだです』

彼はいつでも周囲への気配りを欠かさない。私が入社したての時も、他の先輩たちとは違いいつも優しく指導してくれた。私だけじゃなく、他の新人にも優しかったけど。

「で、どうだった? 空気的には」

『そうですねぇ、皆さん忙しかったみたいで、お菓子とお名刺だけを渡すのが精一杯でした』

「まぁ、制作サイドはバタバタしてるからね。でも、知ってる人は知ってると思うよ。ゆりちゃんのこと」

『義久さんったら、ウフフ』

そんな話をしているうちに、生ハム、オリーブ、フルーツが綺麗なお皿に盛られ運ばれてきた。
注がれたシャンパンが夜景の光に照らされ、幻想的な雰囲気を醸し出している。

『私、生ハムとワイン大好物なんです! いただきます! ……ぅ~ん美味しい~♡』

思わず声に出ちゃった。

「これはね、ハモンイベリコべジョータと言って、自然のドングリを餌に食べてきた豚さんのハムなんだって」

『すご~い! 香ばしくて濃厚で、シャンパンともすごくマッチしてます!』

……「豚さん」って、なんだろうこの人。

こういうところが、すごく可愛いのよね。
私が年下だから、わざとこういう表現をするわけじゃなくて、本当にこういう性格なんだろう。家でも子供とこんな感じで話してるんだろうな。

……なんだかちょっとモヤモヤするわ。私らしくない。

『今日はご家族には、ご連絡してるんですか?』

意地悪な質問をしてみる。

「あ、ああ、うん。今日は原稿のチェックで遅くなるって言ってあるから大丈夫。」

『と、言うことは、このあと少し二人きりになれたり……します?』

「うん、もちろんだよ」

照れながら、彼がカードキーを渡してきた。

私は今、誰よりも彼から愛されているわ。不倫の恋だからって関係ない。今この瞬間、彼は私しか見ていないんだもの。

半ば強引に、そう言い聞かせている自分に、私は気付いていなかった。

……というより、気付かないようにしていたのかもしれない。

次回、“第6話 「不倫の情事。男と女の逢瀬」”は1月30日(月)配信予定。


【これまでのお話♡】
【牡羊座1話】チャンスを手にした「女ディレクター」
【牡羊座2話】今、明かされる私のキャリアの原点
【牡羊座3話】私を惑わせる…年下ダメ彼氏
【双子座1話】若きの女子アナの野望

【今回の主役】
江崎友梨 双子座25歳 アナウンサー
23歳の時にアナウンサーとしてTV局に入社。有名大学出身だが1年浪人している。ハイソサエティな世界に憧れを抱いており、自分を磨く努力も怠らない。現在、同じアナウンサーでもあり、上司である新垣義久と不倫関係にある。当初は踏み台にしようと考えていたが、だんだんと彼に惹かれキャリアと恋の間で、悩み揺れる。

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