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「I understand. 」~私は理解する。~|12星座連載小説#138~射手座 最終話~

文・脇田尚揮 — 2017.8.11
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第137話 ~射手座-11話~


前回までのお話はコチラ

―――1ヶ月後……

白い岩壁の出窓から見える、一面スカイブルーの海々。
カモメの鳴く声と寄せては返すさざ波の音が入り混じって、耳に優しい。

私はシチリアの爽やかな風を浴びながら、ワインを飲んでいる。そして、その横ではクリスが何やら本を読んでいる。

今回の仕事場はイタリアのシチリア島。クリスのお爺様が彼に遺した別荘を拠点に、コーラルやデマントイドなどの買い付けに行くのが、ミッション。

……っていうのは、表向きで、今回の目的は“クリスとのイタリア旅行”なの。

「Hey, beautiful. Come over here. (こっちにおいでよ)」

クリスが本をパタンと閉じ、メガネを外してこちらを見ている。

『クリスぅ~~』

後ろからクリスに抱きつく。

「Haha……princess, 気に入ってくれたかい?」

『Perfect! んもう、最高! クリスがこんな別荘を持っていたなんて、驚きよ!』

「Umm……まぁ、正しくは“僕の”ではなくて“お爺さんの”なんだけどネ……」

クリスは一人っ子らしく、お爺様が遺した財産の一部を、母親の許可をもらって管理しているとのこと。ま、いわゆる“ボンボン”ってヤツ。

私は仕事が好きだからあまりピンとこないけど、お金はあって困るものじゃないからそれはそれで良いわ。

クリスはそんな私を好きだって言うし。

『ん……ねえクリス? 今日はどこにいこうかしら?』

クリスに熱いキスと抱擁をお見舞いし、今日の予定を尋ねる。

「そうだネ……pizzaとワインを楽しまないかい?」

『Oh! 良いわね! ショッピングもしたいわ!』

「遊んでばかりだけど、仕事は……大丈夫なの?」

『It’s all right! もう手はずは整えてあるわ。明日の13時にパレルモでジュエリーの買い付けよ』

「I’m no match for you.(君にはかなわないよ)」

クリスが“やれやれ”ってポーズをしてる。カワイイ……!

イタリアって、本当に素敵……ジュエリーを見ても、デザインや色使いの良さは、日本が頑張ってもなかなか追いつけないだろう。世界的にも評価の高いイタリアン・ジュエリーなんかを見ても、ほとんどミラノから世界に発進されているしね。

ま、イタリアン・ジュエリーが世界的に高い地位にあるって言っても、イタリアで宝石がたくさん採れているワケじゃないんだけどね。

いつか……私も……、

ミラノで通用するようなジュエラーになりたいものね。

―――2階のラウンジから1階に降りて、シャワールームに入る。

ガラス張りの空間の中に陶器製のユニットバス……、これ一体どれくらいかけてリノベーションしたんだろう……?

クリスが管理している資産は、想像もつかない。

クリスは自分の資産を目当てにやってくる女性がイヤになって、日本に来たって言ってた。働いて輝いている女性が好きなんだ、って。

私は、常に動き回っていないと死んでしまう“サメ”のような女だから、ピッタリってワケ……。

コックをひねってシャワーを浴びる。

昨夜は素敵だった―――

キングサイズのアイアンベッドに私を押し倒して、身体全体に熱烈なキスの嵐……。内腿についたキスマークをなぞる。

いつもの彼とは思えないくらいに、本能的で官能的で、野性的だった。

思い出すと、身体の芯がゾクゾクと疼く。やだ……。

“あの日”以来、私のクリスを見る目は大きく変わった。

それまで気がつかなかった、男らしさと感性。あの時、ガングロ男に言い放った“ドスの利いた声”……。

―――あれはきっと、お爺様譲りのものね。

クスっとなる。私は何も分かってなかったんだなぁ。

この世の中は、自分の知らないことで溢れている。一番身近にいるはずの彼のことだって、私は何も分かっていなかった。

でも……、

ひとつひとつ経験していくことでしか、そんなの分かんないじゃん。最初から、完璧に分かっていたら、それこそつまんない。

シャワーを止めて、バスローブに身を包む。髪を乾かして、後ろ髪をポニーテールに結ぶ。

リビングでは、クリスがオレンジジュースをグラスに注いでくれていた。

「サッパリしたかい?」

『ええ、とっても』

窓から見えるシチリアの太陽は、とても眩しく輝いていた―――

射手座の女の人生は、

“I understand.” ~私は理解する。~

ひとつひとつの経験から、生きていることの意味を体感し実感していく。

時にはヘマしたり、大失敗もあるけど……、

それすらも、輝かしい私だけの特別な体験。そう、まるでジュエリーのように輝きを放つ、私だけの……。

美味しいもの、楽しいこと、好きな人、そういったものに囲まれて暮らすのは幸せかもしれない。

でも、一番大切なことは、常に刺激的な毎日を送るというコト。

それこそが、いつも極上の光を放つための、私のストラテジー

私は今、楽しんでいます―――。

射手座の女の人生 ~Fin~


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【今回の主役】
戸部淳子 射手座28歳 ジュエリー卸業
ヨーロッパ圏でのホームステイなど、学生の頃から海外経験が豊富で、英語がそこそこ堪能。国外から宝石を買い付けて、ブティックやウェデイング業界に卸している。若さの割に目利きであると評されるところも。イタリア人の彼氏・クリスがいるが、性に奔放で何かとトラブルが起こりやすい。


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