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イタリア人彼氏の「知られざる姿」|12星座連載小説#137~射手座 11話~

文・脇田尚揮 — 2017.8.10
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第137話 ~射手座-11話~


前回までのお話はコチラ

手持ちとカードの支払限度額を合わせても支払える金額じゃない……。

料金が払いきれない場合は、“売り掛け”をすることになるんだけど……。

それをやっちゃうと、またこのお店に返済のために来る羽目になる。そうなると、店側の思うツボ。きっとまた飲むことになるわ。もう、こんなお店、懲り懲りよ。

何とか、今日払って帰りたい―――

クリスはAmexのプラチナカードを持っているから、それで支払いを立て替えてもらうしかない。

『ちょっと待ってて……今、迎えが来るから』

「……承知しました」

情けないな……私……。

クリスが来るまで、あと5分。祈るような気持ちで待つ。

ああ、クリス……。お願い、早く来て。

スマホの着信音が鳴る―――

クリスからだ!

トイレに向かい、急いで電話に出る。

『もしもし、クリス!?』

「お待たせ、今店の前に着いたヨ」

『クリス、ありがとう……あの、よく聞いて欲しいの』

「どうしたの?」

『あのね……私、今日すごく飲んじゃって、料金が払えないの……』

「フゥ……」

電話の向こうで、彼の溜め息が聞こえる。当然よね……。

『それで……ゴメンなさい。クリス、立て替えて欲しいの……』

「Jun、キミはいつもそう。ボクの気持ちを考えてくれたことなんてあるのかい?」

『こんなお願いをするなんて、本当に悪いと思ってるわ……』

「そうじゃない。……ボクはJunにとって何なんだい? 帰国してから、クラブに行ったりホストの店で飲んだり……ボクと一緒にいてくれた時間はほとんどないじゃないか?」

『…………』

返す言葉もない。クリスはいつだって私のことを考えてくれていたわ。

空港に迎えに来てくれたり。酔っ払った私を介抱してくれたり。そして、愛してくれた。

でも、私はそこにあぐらをかいて、彼のことをないがしろにしていた。

いつでも、クリスは私だけの味方だと思っていたから―――

『私……クリスを大切にできていなかったわ……』

「Jun、約束して欲しい……せめて日本にいる時は、ボクとの時間を大事にして欲しいんだ」

『……うん』

「別にキミを束縛することはしないヨ。フットワークの軽さは、Junの“持ち味”だからね」

寛容さは、あなたの“持ち味”よ……クリス……。

「じゃあ、今からお店に行くから、待ってて……」

『あ、あの! クリス!』

「ん?」

『ありがとう……』

「No worries!(気にしないで)」

電話はそこで切れ、数分後クリスが店にやってきた。

『クリス!』

「待たせたね……支払いは?」

『こっちよ……』

入口近くのテーブルに、ガングロ男が足を組んで座っている。

「お支払いですね……ありがとうございます」

クリスがプラチナカードを差し出す。ガングロ男が二度見する。

おそらく大柄な外国人に驚いたのだろう。

突然、クリスが大声でガングロ男をまくし立てる。

イタリア語な上にスラングも混じっていて、私も驚いてしまう。独特の巻き舌が、まるでケンカ腰のようにドスを効かせている。

簡単に言うと

「お前たち、あまりにもやり方が汚いぞ! こんなビジネスがいつまでも成り立つと思うなよ……!」

という趣旨のようだ。それ以降は聞き取れなかったが、彼の口調からしてかなりハードなことを言っているに違いない。

最後に、ガングロ男の胸を人差し指でトンと押した。店は騒然となり、男はクリスに圧倒されたのか、ポカーンとしている。

「OK! 出ようかJun!」

私の手を取って、クリスが出口へと引っ張ってくれる。ホスト達の見送りも無い。

何だろう……。まるで“シチリア・マフィア”のような凄み。

日本のチンピラホストなんて目じゃないわ……。

「Hahaha! 見たかい、Jun。奴らビビって声を上げることも出来なかったネ!」

嬉々としてクリスが話す。クリスの顔を見上げると、いつものようにブラウンの瞳が輝き、たくわえたヒゲの奥に白い歯が見えている。

『驚いたわ……』

「僕のgrandfatherは、旧マンガーノのファミリーだったのさ」

旧マンガーノ……今で言うガンビーノ一家……五大ファミリーのひとつじゃない!

『えええっ!』

「いや、それはお爺ちゃんの代の話で、ボクは無関係サ。……まぁ、お爺ちゃんが残した財産や芸術品を管理してはいるけどネ……。お爺ちゃんには、とても良く可愛がってもらったよ。いつもウチに来る人達を、さっきみたいに叱っていたけどね……」

全然知らなかった。

絵を描いたり、古物商のようなことをしたりしているとは知っていたけど、クリスにそんな背景があったなんて……!

「Jun、人は見かけによらないものサ。表面的なものに捉われていたら、本当に大切なことを見失ってしまうヨ」

ああ……このイタリア人は……なんてセクシーなんだろう!

改めて、私はクリスに惚れ直した。

『クリス!』

―――ひと目もはばからず、私は歌舞伎町のど真ん中でクリスとディープなキスをした

「Jun、キスがブランデー風味だヨ……何年ものなんだい?」

そして、もう一度、今度はクリスが熱い口づけを私にくれる。

私の身体は、濡れに濡れ、心臓はバクバクと大きな鼓動を刻んでいる。ああ……クリスに抱かれたい……!

『ね……クリス、帰ったら私を抱いて……』

「Of course!(もちろんさ)」

クリスの愛車・ターコイズブルーのプジョーに乗り込み、光と影の境界へと消えていった―――


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【今回の主役】
戸部淳子 射手座28歳 ジュエリー卸業
ヨーロッパ圏でのホームステイなど、学生の頃から海外経験が豊富で、英語がそこそこ堪能。国外から宝石を買い付けて、ブティックやウェデイング業界に卸している。若さの割に目利きであると評されるところも。イタリア人の彼氏・クリスがいるが、性に奔放で何かとトラブルが起こりやすい。


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