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男から「離れられない」女たち…|12星座連載小説#124~牡羊座10話~

文・脇田尚揮 — 2017.7.24
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第124話 ~牡羊座-10~


前回までのお話はコチラ

“寂しい”か……。

夏希も、そうだったのかもしれない。身近に頼れる人がいなくて、友達にも会えなくなって、きっと独りで生きていたのだろう。

そう思うと、目の前の“美智子さん”についつい感情移入してしまう。

『ホストクラブに通われているとのことですが、週に何回くらい通っていて、どれくらい使うんですか?……もし、差し支えなければ……きっかけも教えて下さい』

「通い始めたのは1年半前です。たまたま仕事上がりに声をかけられて、ドキドキしてフラっと入ったのが最初でした。初めは憂さ晴らしのつもりで月に2回のペースで通っていたんですが、お気に入りの子ができてから……今は、週2回は通っています」

『週2ですか……けっこうお金もかかりますよね』

「はい……ナンバーに入れてあげたくて……一回10万位使います」

週2で一回10万。単純計算すると、120万……。美智子さんの収入を超えている。

「それで、サラ金からお金を借りて、今借金が200万円あります……そして、ホストクラブに売り掛けが100万……来月からは、熟女ソープを掛け持とうと思っています」

―――隣の如月が息を飲む。

『それでも、ホストクラブ通いは止められない?』

「だって、私がいないと“ユーキ”が困るって……それに私、友達いないし。ホストクラブにいるときだけが、“本当の私”だって思えるんです……」

『……お子さんは? 夜は一緒にいてあげられていますか?』

「私は朝~夕方出勤なので、託児所に迎えに行って寝かしつけたあと、夜からホストクラブに行くようにしています。だから実質子供と一緒にいるのは、一日3時間くらいですね……」

……ああ、これが現実なんだな、と思った。寂しさが作り出す“負のスパイラル”。

つい2年前まで、平和に暮らしていた子持ち30代主婦が、離婚を機に風俗に落ち、その寂しさを癒すためにホストクラブで貢ぐ……人付き合いや家庭生活が壊れ、さらに渇望感は増していく……。

私個人、彼女に思うところはある。本当は「今すぐホストクラブに通うのやめな!」と言いたい。

しかし、今の私はあくまでドキュメンタリーを作る立場。この人の人生とは無関係なんだと言い聞かせる。すべての人を救えるほど、私は力も能力もない。

『……インタビューはこれで終了です。ありがとうございました』

如月が、私の声を合図にカメラを止める。

「ええ、こちらこそ……あの……」

美智子さんが、何か言いにくそうにしている。おそらく謝礼のことだろう。

『はい、こちら本日の謝礼を些少ですがお渡しいたします。こちらに印鑑を押してください』

……この人を救える人は現れるのだろうか。

―――彼女に茶封筒を渡し、私たちはその場を後にする。

駐車場からバンを移動させ、会社に戻る。車の中で一息つく私たち。

……重たい。同じ女として胸が痛い。如月も、何とも言えない表情をしている。

幸せな女と不幸な女。その境界線は、実はすごく曖昧で、誰もが転落する可能性を潜在的に持っているのだ。その原因が“寂しさ”にあるのなら。

考えさせられる……。でも、次が待っている。気持ちを切り替えよう。

『如月、取り敢えず2時まで時間があるから、今から10時まで編集お願い。私は、次のアポイントとテロップ内容案を打ち込んどく』

「了解しました!」

こんな時、余計なことを何も言わない如月に好感が持てる。私たちはプロなんだから―――。

会社のデスクで作業を続ける。何時間くらいたっただろうか、木田さんが差し入れを持ってきてくれた。

「よう!やってるねぇ~。良い画は撮れたか?」

『ええ、かなりリアルな内容を頂きました』

「そうか、良かったな。ほれ、コレ」

ビニールで包まれた箱を私に差し出してくれる。箱の中にはシュークリームとエクレアが2個ずつ!

『ありがとうございます!』

「ま、後半もがんばれよ~」

甘いものを差し入れしてくれるなんて、木田さんニクい!早速、如月と分け合う。

「おいし~い!」

如月が目をキラキラさせている。いつの世も、女は甘いものに弱いのだ。

『これ食べ終えたら、準備して出ようか』

「そうですね。新宿のネットカフェで待ち合わせの予定です」

『OK』

そう言って、スマホの電源を入れる。メールの確認だ。

電源を入れると、着信が8件。留守電が2件。全部、祐也からだ。

恐る恐る留守電を聞く。

「おまえさあ、俺を何日ほったらかしてると思ってんの? 金がなくてコンビニの弁当も買えないんだけど! もうマジでムカつくわ」

「そんなに朝から晩まで働くような女と付き合った覚えなないよ、俺。早く帰ってきてくれないと困るんだけど!」

……せっかく上がっていたテンションが悲しいくらいに萎んでいく。

私、言ってたはずなんだけどなぁ。番組任されたから、忙しくなるって。帰れなくなるかもって。その時、祐也はテレビを見ながら「うん、分かった」と生返事だったのを思い出す。

自分の都合ばっかり……私のことなんて、考えてくれてないんじゃない!

私も、“美智子さん”と同じなのかもしれない。頭では分かっているのに、独りになるのが寂しくて祐也と別れられないんだもの。

悲しい気持ちのまま、バンに乗り込み夜の新宿へ向かう―――。


【これまでのお話一覧はコチラ♡】

【今回の主役】
竹内美恵 牡羊座32歳 駆け出しディレクター
熊本県から状況し、都内でADとして下積みの後、最近ディレクターに。年下の男(吉井祐也・劇団員)と3年近く同棲をしている。
性格は姐御肌で面倒見がよく、思いついたらすぐ行動するタイプ。反面、深く物事を考えることが苦手でその場の勢いで物事を決めてしまうきらいがある。かなりワガママだが、テレビ局内での信頼はあつい。


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