「I create. 」~私は創造する。~|12星座連載小説#120~獅子座 最終話~

文・脇田尚揮 — 2017.7.18
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第120話 ~獅子座-最終話~


前回までのお話はコチラ

―――2ヶ月後

今夜は弁護士の木村先生と、顧問税理士の茂木ちゃんと3人で食事会だ。19時からお台場のレストランバーを予約してある。

先日、アタシの会社「アリアンロッド」の顧問弁護士として木村先生と契約を済ませ、そのお祝いを催してみたの。

……まぁ、内心は木村先生と会いたかったンだけど。茂木ちゃんにはダシになってもらったみたいで、なんだか申し訳ないわ。今度お礼しとこ。

『そろそろ時間ね……』

夕暮れの台場駅に降り立った。

しっかし、人のご縁や繋がりっていうのは、どこでどう結びつくものか、全くもって予測がつかないものね。

あの時、もし目黒駅で菜摘ちゃんと知り合ってなかったら……。きっと今頃私は、木村先生と再度接点を持つことはできずに、悶々と日々を過ごしていたことだろう。

あの“ハゲの痴漢オヤジ”に、ちょっとだけ感謝してあげる。

流石に、菜摘ちゃんママから改めて木村さんを紹介された時は、緊張しまくりでガチガチだったけどね―――。

菜摘ちゃんママ(と、尾田ちゃん)の計らいで、菜摘ちゃんパパの会社で木村先生にお会いするその日、私は遅刻しちゃったのよ。

緊張のあまり前日眠れなくて、つい深酒してしまって、次の日起きれなかったのよね……だって、朝早いんだもん。

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そして着いた時、ハァハァ息を切らせている私を見て、木村先生がニコッと一言。

「昨日は何本飲んだんですか?」

あれは恥ずかしかったわ~。もうアタシが“飲んべえ”だってこと、知られちゃってるからね……。

でも、こうしてまた会うことができた喜びに、アタシの心は踊っていた。絶対表には出さなかったけど。

終始、木村さんは穏やかで、ニコニコしながら菜摘ちゃんパパや尾田ちゃんの話を聞いてくれていた。太陽の下でよく見ると、意外と木村さん、良い男でドキドキしちゃった。スーツは男の魅力を3割増してくれるっていうけど、本当ね。

それから、モジモジして何も言えないアタシを見るに見かねてか、尾田ちゃんが“仕事の話”をしてくれたのよ。

顧問税理士の茂木ちゃんのこと、これから会社の規模を大きくしていきたいこと、そしてウチには顧問弁護士がいないということ。

―――そう、尾田ちゃんが木村さんにアクションをかけてくれたのよ。

そしたら、木村先生

「明日にでも三人でお食事でもしましょうか」

って提案してくれたの。でも、そこで尾田ちゃんが

「あいにくその日は所用があり、私は最初しか参加できないのですが大丈夫ですか?」

とナイスアシスト!

結局、次の日にほぼほぼ二人きりで食事をすることになって、顧問弁護士になってもらう契約を結ぶ約束をしたのよね。

その時は、不思議と緊張しなかったのを覚えているわ。

おそらく、“仕事の話”をするっていう意識が私の中にあったから。あぁ、自分は憧れの人を前にしても、仕事のこととなるとスイッチが入るんだって、その時実感したわ。

尾田ちゃんはかなり心配していて、LINEで何度も

「がんばってよ!」「飲み過ぎないようにね」

と、仕事以外のことに気を遣ってくれたっけ。私が仕事にプライドを持っていることを、彼女は十分承知してくれているから。

そして、もちろん契約は成立。

「やはり、黒木さんは面白い人ですね」

木村さんが別れ際、私に掛けてくれた言葉。

できれば「綺麗」とか「素敵」とかって言われたかったんだけど、まぁ、いつものことだから仕方ないわね。もし「可愛い」なんて言われたら、鳥肌が立っちゃうしね(笑)。


―――そこからの今日。

レストランバーは今日も盛況の様子。

テーブルには木村さんと茂木ちゃんが。二人とも5分前だっていうのに律儀なんだから……! 挨拶もそこそこに、茂木ちゃんと木村さんをお互いに紹介する。

談笑していると、目の前にトマトとバジル、モッツァレラチーズの色が眩しいイタリアンが並んでいく。

もちろん乾杯はいつも通り、シャンパン。音頭を取るのはアタシだ。

『木村先生の顧問弁護士就任に、かんぱーい!!』

「アリアンロッドの今後の発展にも、乾杯!」

今日は飲みすぎてしまいそうな予感だ―――

私の恋は、結局こういう形になっちゃう。素直になれなくて、言いたいことも言えなくて。

でも、こうして同じ目標に向かっていける仲間としてなら、これから……あるいは……。

終始笑顔の木村さんを、チラりと見る。

今に仕事も恋も、思い通りにしてあげるんだから。待ってなさいよ……!

獅子座の女の人生は、

“I create.” ~私は創造する。~

自分に誇りをもって、“特別な何者か”になっていく努力を惜しまない。

何もないゼロの状態から自分だけの世界を創り上げていく中で、自身の周りに多くの人たちが集まり、さらに大きなうねりとなっていく。アタシはそのことをよく分かっているわ。

流行や人の感情は移り変わり、色あせていくけど、スタイルや積み重ねてきたものは変わらないまま残り続ける。だから、私はこれからも走り続けるの。

みんなが魅力を感じて、楽しい!と思ってくれる何かを、これからも生み出していこう。

今、アタシは大きな一歩を踏み出した―――。

獅子座の女の人生 ~Fin~


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【今回の主役】
黒木真利子 獅子座31歳 経営者
女性向け下着ブランド『アリアンロッド』の経営者。プライドが高く、自分の力で今の会社を立ち上げ軌道に乗せたことに誇りを持っている。しかし、恋愛はあまり得意でなく、強気な性格ゆえに男性との関わり方について悩んでいる。顧問税理士の茂木篤史は心を許せる存在。


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