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31歳、このまま寂しい人生はイヤ|12星座連載小説#118~獅子座10話~

文・脇田尚揮 — 2017.7.13
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第118話 ~獅子座-10~


前回までのお話はコチラ

眼鏡男子が物凄い勢いで飛び出してきた、店に入る。

『へぇ……なかなか雰囲気があるお店ね』

「ね、良いわよね」

尾田ちゃんは、良いものを見極める能力に長けている。

忘年会や打ち上げの時なんかも、お店選びはすべて尾田ちゃんに任せている。

私と尾田ちゃんは、奥から二番目のテーブル席に案内され、思い思いにお酒を注文する。

「ふぅ。ようやく落ち着いたわね」

『今日も色々あったなぁ。何だか、あっという間の一日だったわ』

世間話とも何とも言えないような会話をしているうちに、お酒が運ばれてきた。

私は朱色のカンパリオレンジ、尾田ちゃんはほぼ透明なモスコミュール。まるで、対照的な私たちの性格が反映されているようだ。

「……で、どうなのよ?」

『どうって……』

「もう! 分かってるくせに。あなたのハートを奪った“誰かさん”についてよ」

『………』

黙って、カクテルを一口飲む。苦味と酸味が一気に口の中に広がる。

『まぁ、その、話していて楽しい人だったかな』

「へぇ~、真利子がねぇ。珍しい。いつものあなたなら、“くっだらないことばっか言ってくる男がいたから、言い負かしてやったわよ!”なんて言ってるのにね」

『そんなこともないわよ』

「もう、急にしおらしくなっちゃって」

尾田ちゃんが泡の弾ける炭酸カクテルに口をつけながら、聞いてくる。

「で、どんな人なの? その人。真利子のお眼鏡にかなうなんて、なかなかじゃない」

『いや、別に、身長も低いし、これと言って特徴もない、ただの―――』

言いかけて、そこから言葉が出なくなった。

そう、ただの男じゃないんだ。言葉ではうまく言い表せないけど、“特別な何か”を持った人。

「……ただの?」

『弁護士さん、かな』

「ヒュー! 弁護士なの!? やるじゃん、真利子!」

『ちょ、ちょっと……あんまり大きな声出さないでよ!』

「あっ、ごめん」

尾田ちゃんがペロリと舌を出す。

「で、連絡先は交換したんだよね?」

『い、いやぁ、それが……』

「は? あんた、連絡先知らないの? 何しに行ったのよ、もう!」

尾田ちゃんが納得のいかない表情をして、プンプンしている。冷静そうに見えて、意外と熱くなるんだよな……コイツ。

『いや、完全に知らないってワケじゃないよ。横浜の“アヴァンス”っていう事務所で働いてるってことは知ってる』

「横浜? ねぇ、それって!」

コクンとうなづく。

「すごい偶然じゃない!!今日お店にいらした女の子のお母さんが話していた弁護士さんでしょ!? ……ええと、確か」

『木村。木村秀一。』

「そう! その先生! やったじゃない、真利子! あんた“持ってる”わよ」

それはそう、なんだけど。ここからどうやって繋げればいいのか分からない。

「ねぇ、真利子」

突然、尾田ちゃんが真剣な顔になる。眼鏡の奥の瞳が光る。

「あなた、仕事に関しては天才的な手腕と、図々しいほど気の強さを発揮するくせに、恋愛となると全然ダメじゃない」

図星だ。ちょっとムッとする。

「原因、なんだと思う?」

『原因?』

尾田ちゃんからの想定外の言葉に、つい聞き返してしまった。

「そう、原因。私の見立てだと……」

『うん』

つい身を乗り出して、聞いてしまう。

「“甘えられない”ところにあるんじゃないかな」

―――ッ!

確かに……。

幼い頃から男勝りで、ケンカでも負けたことがない。
バカにされるのが嫌いで、いつも突っ張って生きてきた。
身長もどんどん高くなってきて、いつの間にか、男子たちからも怖がられるようになってた。

まぁ、女子には異常に好かれていたけどさ。

その“癖”っていうか“スタイル”が、今も抜け切らないんだよなぁ。

あの時、木村さんに対してもう一歩踏み込むことができていたら、こんなにややこしいことには、ならなかっただろうな。

「あのお母さん、あなたに木村さんを紹介するって言ってたわよね。もちろん、OKするんでしょ?」

『分かんないわよ、そんなの』

「もう、じれったいわね! いい? あなた、今回のチャンスを逃したら、本当にただの寂しい女社長になっちゃうわよ!?」

いつになく厳しい口調で、尾田ちゃんが詰め寄ってくる。普段なら反論するのだが、今回ばかりは何とも言えない。

『うん』

「なら、早く紹介されちゃいなさい!」

なんでここまで、私の恋愛に関心があるんだろう。

『尾田ちゃん、何でそんなに私に構ってくれるの?』

「そんなの簡単よ。……真利子に幸せになって欲しいからに決まってるじゃない!」

―――幸せになって欲しい、か。

どうして、こうもアタシの周りにはお節介な女が集まるのかしらね。

『分かったわ』

“えっ”という顔で、尾田っちが私を見る。

『今回は本気で頑張ってみる!』

尾田ちゃんの迫力に負け、私は、“らしくない”宣言をしてしまった。

―――空のグラスの中で、溶けかけた氷がカランと音を立てた。


【これまでのお話一覧はコチラ♡】

【今回の主役】
黒木真利子 獅子座31歳 経営者
女性向け下着ブランド『アリアンロッド』の経営者。プライドが高く、自分の力で今の会社を立ち上げ軌道に乗せたことに誇りを持っている。しかし、恋愛はあまり得意でなく、強気な性格ゆえに男性との関わり方について悩んでいる。顧問税理士の茂木篤史は心を許せる存在。


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