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「年下男子」の虜になる30歳女|12星座連載小説#116~山羊座11話~

文・脇田尚揮 — 2017.7.11
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第116話 ~山羊座-11~


前回までのお話はコチラ

北野先生と一緒に坂を下る。

……このシチュエーション、なんだか懐かしい。

高校時代、部活終わりに同じクラスの男子とたまたま一緒になって帰った以来、かな……。

「山崎先生、すみません、付き合ってもらっちゃって……」

『北野先生、意外と強引なんですね?』

少し意地悪っぽく聞いてみた。嫌味を1割くらい含んで。

「す、すみません! どうしても朝の返事が聞きたくて。あの、朝礼で遮られたままだったから。食事の約束。」

『えっ!プッ、アハハッ!』

そんなことで、私のこと追いかけ回してたの? 私てっきり、“告白”でもされるのかと思ってた。

何だか拍子抜けして、身体の力が抜けた―――

坂を下り、突き当たりを曲がると喫茶店「もみの木」がある。

何十年続いているんだろう……と思わせるレトロな外観だ。

目で『ここにしましょう』とサインを送る。満面の笑みでうなづく北野先生。

子どもみたい。年下の男性って、こんな感じなんだ。

前に、女性誌で読んだことがある。男性は女性と比較して精神年齢が3歳くらい幼いって。年下男子だと、なおさら幼く感じるのかな……。

あれこれ考えながら、喫茶店に入る。あと1時間で閉店ということもあり、店にはマスターしかいない。

『コーヒー2つでいい?』

「はい!」

北野先生に尋ねる。ふぅ、やっと落ち着けた……。

『北野先生!』

「はい、なんでしょう?」

『なんでしょう? じゃありません!』

北野先生がビクッとなる。

『学校であんなことしちゃダメじゃないですか!? もし生徒に見られたらどうするんです! 大体ですね……』

―――その後、私の説教は15分以上続いた。

「すみません……」

筋骨隆々とした青年が、怯える子犬のように小さくなっている。

――意外と素直なのね。

そろそろ良いかしら。

『まぁ、それはそれとして……。週末のお食事の件、行きましょう』

「……え?」

『いや、ですから! デパ地下のフードコートがあるんでしょ!? そこ、行きますよ』

ポカーンとしている北野先生。

そして数秒後。

「あ……あぁ、はい! 行きましょう!」

これが、“母性”というものだろうか。“子どもっぽい”青年と、つい食事の約束をしてしまった。

「では、今週末の何時にしましょう!?」

『その前に、ちょっと待って』

釘を刺すように、私は彼に言った。

学校では絶対に二人きりにならないこと。仮にそういうシチュエーションになったとしても、挨拶程度で済ましましょう。
外で会うのは、生徒や先生たちがいないような場所。そして、このことは誰にも絶対に言わないこと。これが守れないのであれば、お断りします。

――そう言った。

彼はコクンとうなづいて、「守ります」とだけ答えた。

それからはデートの日時を決め、ちょうど閉店時間になったので、それぞれ家路についた。

―――帰宅。

今日は何だかすごく疲れた。

でも、なんだろう。心地良い疲れ。嫌な感じはしない。

自分でも驚いている。男の人とあんな話をしたのは初めてだった。

大学時代の“あの一件”以来、私は男の人と話すのが苦手になっていた。

でも不思議だな、北野先生は平気だった……。

―――年下の男の子っていうのも、悪くないのかもしれない

私の話をちゃんと聞いてくれる。ルールを守る努力をしてくれる。

もしかして、私……、

ブンブンと頭を振り、余計なことを考えるのはやめる。その後、シャワーを浴び、夕軽く夕食をとりそのまま横になった。


学校で彼は、これまで通りでいるよう努めてくれた。(とは言うものの、緊張は十分伝わってきたけど……)

もちろん、あの日した4つの約束はきちんと守ってくれた。私も、彼と顔を合わせるのが楽しみになっていて、彼が傍にいるときは口元がほころんでいたかもしれない。

学校が楽しい。いや、彼に会えるのが嬉しいのかな。


ついに土曜日。

今日は学校で彼に会うことがないかわりに、プライベートで一緒に過ごす。

普段通り、小テストの添削やサークルの資料作りを午前中に済ませ、彼と約束しているデパ地下のフードコートへと向かう。

新鮮な気持ち。洋服を選んだり、メイクをしたり。プライベートでこんなこと久しぶり過ぎて、すっかり忘れていた……。

『どう頑張っても、地味めな格好になっちゃうなぁ』

つい、独り言が漏れる。今度“さあや”にオシャレについて教えてもらおうと思った。

待ち合わせ場所は電車で9駅。ちょっと離れたところだ。ここなら、生徒たちと鉢合わせることはないだろう。

待ち合わせ場所に近づくと……、北野先生が大きく手を振って待っているのが見えた。

『もう、バカみたいじゃない……』

そう呟く私の口元はほころんでいる。

もしかして、私って……

“年下が好きなのかもしれない”

私は彼の元へ走った―――


【これまでのお話一覧はコチラ♡】

【今回の主役】
山崎千尋 山羊座30歳 高校教師(英語)
生徒からの信望も厚く、仕事ができる「良い先生」。ただ、他人に甘えるのがヘタなので誤解されることも。大学時代にアルバイトをしていた塾で、塾長にセクハラを受け続けた過去がトラウマになっている。自分に恋をする資格が無いと思っており、結婚願望はある一方、身動きできない。後輩の北野俊一から好意を持たれているが、気づいていない様子。


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