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「死」を選んだ女友達|12星座連載小説#86~牡羊座8話~

文・脇田尚揮 — 2017.5.30
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第86話 ~牡羊座-8~


前回までのお話はコチラ

―――夏希からの相談は、まるで別世界の話のようだった。

同級生が、売春をしながら生活を送っていて、知らない男から数万円を貰う代わりに、身体を提供している……。父親と同じくらいの年齢の人を相手したこともあるらしい。

「こんな生活はもう嫌なんだ」

彼女の話の中で、特に印象に残っているのがこの言葉だ。

妊娠や病気の可能性も気になったけど、怖くてあまり聞けなかった。

私が彼女に言えたことは、ただ二つ、

『頑張ろう』『応援するよ』

だけ。

なんて頼りなく、無責任な言葉なんだろう。

でも彼女は、話を聞いてくれる人がいるだけで少しラクになると言っていた。それから私たちは毎日、昼休みに屋上で話をした。

「卒業したら、すぐに働くんだ」

それが彼女の希望。卒業すれば世界が広がる。18歳になれば、自分の力で生活を変えられる。そう信じていたのだろう。

夏希のそんなささやかな希望の灯が消されたのは、それから3ヶ月後の12月。

いつものように昼休みに屋上へ。かじかむような寒さの中で、夏希を待っていた。しかし結局、彼女は来なかった。

風邪でもひいて欠席しているのかと思い、彼女のクラスへ行き、担任の先生に尋ねたところ“退学処分を受けた”と聞かされた。

具体的な理由は教えてくれなかったけど、容易に想像がついた。売春がバレたのだ。

彼女とはそれ以来、一度も会っていない。私は怖くて、それ以上彼女と関わらないようにしていたのだ。

そうして私は高校を卒業し、彼女との記憶は少しずつ薄れていった。

彼女のその後を知ったのは、22歳のバスケ部同窓会。

自殺をし、もうこの世にはいなかった。退学後もずっと身売りを続けていたらしい。

私が交流を絶たなければ、彼女を救えたのかもしれない……という後悔の念に襲われた。そして、いつかメディアの力を使って、夏希と同じように“貧困で苦しむ女子”の助けたいという想いが生まれたのだ。

やっと罪滅ぼしができる―――

この仕事、必ずやり遂げてみせる。

……今日は帰らない。

スマホを見ると、祐也から着信が4件。LINEには、

「帰ってこないの~?」「俺、腹減ったんだけど」「もういい、外に食いに行く」

とメッセージが届いていた。

……正直、気が抜ける。こんな彼氏でいいのだろうか。

ため息を漏らしながら返信していると、如月から声がかかる。

「先輩、お疲れさまです~。お先に失礼させていただきますね~。自宅で何かできることありますかぁ?」

『お疲れさま。早速明日インタビューに行くから、今日はゆっくり休んで』

「了解です~。先輩も無理しないでくださいね」

『有難う。じゃあ、また明日ね』

私が番組の責任者だ。ここからは自分でやらなきゃ。

『よし、やるか!』

―――作業は夜中の3時まで続いた。

……アラーム音で目が覚めた。

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うぅん……6時、か。準備しなきゃ。汗を流しに、社内のシャワールームへ向かう。

ボサボサの頭にボロボロのメイクのまま、2階へ。

エレベーターを降りて、廊下の角を曲がると、

『ええっ!』

木田さんがいた。なんでこの人は、私が行く先々にいるんだ……。

「オス、早いな」

うわ~、この状態で会いたくなかった。

『お、おはようございます……』

「おまえ、ひどいな……ボロボロだぞ」

カアアァ……と顔が赤くなる。

一応これでも女なんだけど。そんな露骨に言われるとは……。

「まぁ、頑張っている証拠だな。応援してるぞ」

ポンと肩を叩かれる。

『有難うございます』

木田さんの顔を見ることもなく、早歩きでシャワールームへ。一刻も早くその場を立ち去りたかったのだ。

まずいな……

シャワールームで改めて鏡を見ると、本当に酷い。

遅くまでPCに向かっていたせいで目は充血。コーヒーの飲み過ぎで顔は浮腫み、額と鼻の頭は皮脂でテッカテカ。メイクが落ちたかけた顔面は、グチャグチャで“土砂災害”に遭った街のようだ。

32歳ともなると、流石に昔のようにはいかない。

……

無言でシャワーを浴びた。汗や埃とともに、疲れも洗い流されていく。

この時間に社内にいるってことは、木田さんも“オール”だったってことか。
飄々としていて、いつも何を考えているのか分からないけど、仕事に一切の妥協を許さない人なのよね……。

木田さんのことは尊敬している。それに比べ祐也は、いい年して夢みたいなことばかり言ってフラフラしてる。

男としての“格”で言えば、断然木田さんの方が上ね。

シャワールームから出てメイクをする。今日はインタビューだから小綺麗にしとかないと。

しかし、木田さんには、ボロボロの姿見られたくなかったなぁ……。

デスクに戻り、昨日買っておいたサンドイッチをつまみながら、再びまとめ作業に入る。

今日の取材は……、“美智子さん”が仕事前の午後4時からで、“さゆりさん”が仕事終わりの夜中2時からか。

かなりハードになりそう。しかも、取材と編集作業を並行してやらなきゃ間に合わない。

スマホをチェックすると、如月からは出社の連絡が来ていたが、祐也から返信はなかった。


【これまでのお話一覧はコチラ♡】

【今回の主役】
竹内美恵 牡羊座32歳 駆け出しディレクター
熊本県から状況し、都内でADとして下積みの後、最近ディレクターに。年下の男(吉井祐也・劇団員)と3年近く同棲をしている。
性格は姐御肌で面倒見がよく、思いついたらすぐ行動するタイプ。反面、深く物事を考えることが苦手でその場の勢いで物事を決めてしまうきらいがある。
かなりワガママだが、テレビ局内での信頼はあつい。

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