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売春を余儀なくされる「女の悲しみ」|12星座連載小説#85~牡羊座7話~

文・脇田尚揮 — 2017.5.29
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第85話 ~牡羊座-7~


前回までのお話はコチラ

やるべきことが多すぎて、今日は帰れないかもしれない……。

如月に作成してもらった、取材確定者プロフィールを眺めながら、そんなことを思う。

今回、取材OKしてくれた女の子たちは普通じゃない。かなりディープ。

大塚のソープランドに勤めている「美智子さん(仮名)」……32歳。

小学生の男の子を女手一つで育てているが、だんだん売上が落ちてきて、給食費さえも払えなくなってきた……か。

旦那の不倫で協議離婚し、慰謝料200万と月々養育費4万円が銀行口座に振込まれるはずだった。それなのに、3ヶ月経った今も慰謝料の支払いはナシ。養育費の入金も最初の2ヶ月でストップした。

さらには、ママ友に風俗勤めがバレて、“村八分”状態……か。

きっついなぁ……。

年齢が近い女として、つい同情してしまう。

もし私が同じ立場だったら、子育てしながらディレクターの仕事なんてできない。今付き合っている祐也と結婚し離婚したとしたら、慰謝料や養育費の支払いもしてもらえないだろう。この歳で簡単に転職できるとも思えないし……そうなると、キャバクラ、いや最悪、風俗で働くことになるんだろう。

きっと、とてつもなく苦しい生活なのだろう。

女はなんて弱いのだろう。もちろん、バリバリの“キャリアウーマン”や“女社長”だって世の中にはいる。でも、それはごく一部。実際、そんな人は全体の2%いれば良いほうだろう。

明日は我が身だ。きっと自分に置き換えながら、臨場感のある取材ができるだろう。

そしてもう一人、「さゆりさん(仮名)」。こちらは21歳。すごく若いわ……。

どうしてこの子が貧困なんだろう。

と、プロフィールを読み進めハッとする。彼女の哀しい人生が見えてきたからだ。

まさに、学生時代の“あの子”と同じだ―――

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あの時、私は高3でバスケ部のキャプテンだった。身長は低いけどスリーポイントシューターとして一目置かれていたと思う。

クラスは違うけど、同じバスケのチームにいたのが「夏希」。至って普通の女の子だった。少し“臭い”のと、たまに紫色の“アザ”が見られること以外は。

バスケ部の中ではそこまで目立つ子ではなかったけど、元気だけが取り柄の私は、どこか陰がある夏希は気になる存在だった。

ある猛暑日、練習試合で私は夏希に“お節介”を焼いた。

ずっと“ベンチ組”だった夏希を試合に出させてくれないかと、監督にお願いした。

『先生、私たち三年生にとって最後の夏なんです……! 夏希ちゃんはずっと試合に出ていないですよね? 最後だから一緒にプレーしたいです!』

その時、先生は何とも“複雑な顔”をしていた。

『夏希、ちょっと来て!』

私が夏希に声をかけると、彼女は無言でこちらを見た。やや強引に、彼女を引っ張り、

『ね? 夏希! 一緒に出たいよね!?』

と言うと……、

「余計なことしないでっ!」

と、彼女は声を荒げた。

結局、彼女が試合に出ることはなく、高校最後の夏は終わった。

私と夏希の関係の始まりは、そんな感じだった―――

「さゆりさん」のプロフィールを読んでいる途中、涙がこぼれてきた。

幼い頃のことを思い出そうとしても、酒乱の父親が母親を殴っている記憶しかない。

学生時代、無職の父親に代わり母親がパートに出ていたが、稼いだお金はすべて、父親がギャンブルにつぎ込み、家計は常に逼迫していた。

食べ物も十分になく、売春することでなんとか飢えをしのいでいた。

―――ここまで全部、夏希と同じだ。

「さゆりさん」は、その後家を飛び出し上京。“若さ”を武器に、デリヘルで“人気嬢”に上り詰めた。

でも、お客さんとの“本番”行為がお店にバレて、クビにされたとのことだった。かなりの額の違約金を請求され、今では“おっぱいパブ”つまりは、セクキャバで働きながらネカフェ難民として暮らしているそうだ。

―――でも、夏希は違った。

私が夏希から初めて相談を受けたのは、9月。秋風が心地良い時期だったのを覚えている。

「ねぇ、竹内さん、話があるんだけど……」

わざわざ、私の教室まで来てくれたのだ。ビックリした。“お節介”で、嫌われたと思っていたから。

『うん、良いよ! 屋上行こ!』

私は、何だか嬉しくなって、彼女の手を取り屋上へと誘った。

―――ロングヘアーがよく似合う彼女と、屋上で二人きり。

その頃の私は、世の中のことなんて何も分かっちゃいなくて、今振り返ると恥ずかしいくらいにポジティブだった。

“頑張れば何でも上手くいく”、そんなことを本気で信じていた。

彼女がの屈辱、嘆き……なんて、想像もつかなかったのだ。


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【今回の主役】
竹内美恵 牡羊座32歳 駆け出しディレクター
熊本県から状況し、都内でADとして下積みの後、最近ディレクターに。年下の男(吉井祐也・劇団員)と3年近く同棲をしている。
性格は姐御肌で面倒見がよく、思いついたらすぐ行動するタイプ。反面、深く物事を考えることが苦手でその場の勢いで物事を決めてしまうきらいがある。
かなりワガママだが、テレビ局内での信頼はあつい。

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