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想いを踏みにじられた女|12星座連載小説#83~水瓶座8話~

文・脇田尚揮 — 2017.5.24
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第83話 ~水瓶座-8~


前回までのお話はコチラ

一日が始まった。

―――今日という日がアタシにとって最悪の一日になるなんて、思ってもいなかった。

「おはよ、レナ……」

好美が、眠たそうな声で話しかけてくる。

『おはよ……』

朝はあまり強くない……けど、もう時間だ。

そろそろ起きなくちゃ。“会社勤め”はこれだからイヤだ。

フリーの好美が少し羨ましい。まぁ、コイツにもコイツなりに大変な面はあるんだろうけど。

好美が起き上がり、キッチンでゴソゴソ作り始める。

もうちょっとだけ、と二度寝しようとしたところ……

「レ~ナ~」

好美が、すかさず私を起こす。

『まだ眠い、放っておいて~』

「ダ~メ! 大切なプロジェクト進めなきゃいけないんでしょ」

ピシャリと言われてしまった。が……睡魔には敵わないのだ、許せ。

「コラ! 起~き~て! じゃなきゃ、レナの好きな卵焼き作ってあげないぞ!」

『むぅ……』

それは困る。大好物の、好美の作るふわふわ卵焼きを食べないとアタシの一日は始まらない。

“起きないと卵焼きを食べさせない”とは、好美のヤツよく分かってるな。

『しゃあね~な』

仕方なく起き上がり、シャワーを浴びに行く。

「えらいえらい」

『ああぁ~』

水を浴び、少しずつ頭の細胞が目覚めていく。

『よし、今日も一日頑張るかー』

スイッチがようやく入った―――

モグモグモグ……美味し。

やはり好美の卵焼きは最高だ。ズズッ……とご飯を味噌汁で流し込む。急がなきゃ遅刻する。

『ご馳走様。じゃ、行ってくるね』

「は~い。がんばってネ」

ニコッと微笑みかけてくれる好美に手を振り、赤坂へと向かう。

出社して感じた、いつもと違う社内の雰囲気。

……なんだこの“お葬式”感。

どうせ外注ミスか何かだろと、特段気に留めることもなく、デスクに行きマイPCを立ち上げる。

プロジェクトの進捗を確認すべく、メールBOXを開いた。

―――次の瞬間、私は凍りついた。

何かの間違いではないか? 何度も何度も読み直す。

あのどうしようもない社長から、直々にメールが届いていたのだ。

「今回のプロジェクトに関しては、当社のイメージにそぐわないため、一度企画自体を白紙に戻し、改めて別部署に任せるものとします」

『ウソ、だろ……』

つい声が出てしまった。

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―――いろんなことが思い出されて、つらい。

後輩・三橋とのこれまでのやり取り。とても盛り上がった竹内ディレクターと如月ADとの打ち合わせ。昨夜、好美からの忠告。

そして、私自身が企画したゲームの内容。

期間にすれば、ほんの1週間のことかもしれないけど、その全てが“白紙”つまり“無かったこと”になったのかと思うと、ただただ悔しい。

ふと周囲を見渡しても、誰も目を合わそうとしない。

『クッソ……』

他の社員たちもこのメールを読んでいるはずだ。どうせアタシのことを“可哀想なヤツ”だと哀れんでいるのだろう。

………

上等! あの“成り上がり”社長に直談判しにいってやろうじゃないか。

たとえ、会社を辞めることになったとしても構わない。

この企画をストップしなければならない正当な理由を知りたい。

たった一言。

「当社のイメージにそぐわない」

だけで片付けられるのは、納得がいかない。

社長室は16階だ。どうせ、まだ出勤していないだろうから、まずは秘書室へ向かう。

チーン

陳腐な音とともに、社長室受付担当の階でエレベーターが開く。

子供の頃から、納得のいかないこととは徹底的に戦ってきた。相手が誰であろうと関係ない。

『今日の社長のスケジュールは?』

顔だけがムダに綺麗な“社長秘書”に、いきなり問う。

彼女は一瞬、目をまるくして……それから状況を理解したかのように、冷たく一言。

「社長は本日お打ち合わせのため、お休みです」

……私の中で、我慢していた何かがプツリと切れた。

『バカヤロウ! アタシは今日、社長に話したいことがあんだよ。取り次げ!』

彼女が、内線だかなんだかにコールし始める。

最初からそうしろよ、と憤りを感じながらジロリと睨む。

―――だけど、結局誰にも繋がらなかったようだ。

“ラチがあかない”とは、このことかと思った。

行き場のない想いを抱えたまま、アタシは会社を出る。好美の待つ自宅に帰るのだ。

―――もう、仕事なんてどうでも良かった。


【これまでのお話一覧はコチラ♡】

【今回の主役】
中野怜奈 水瓶座26歳 IT開発事業部
個性的で変わり者、我が道を行くタイプ。協調性に欠けているが、時代の先を読む“先見の明”があるため、社内での評価は高い。女子向けアプリ会社『キュートキッチュ』の新作指揮を任される。アイディアウーマンであるが、縛られることを嫌う一匹狼。後輩の三橋奈美は良い相談役。実はバイセクシュアルの性向があり、出会い系アフィリエイトで知り合った池谷好美と同棲している。

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