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新しい男に「今、私ドキッとした。」|12星座連載小説#75~牡牛座9話~

文・脇田尚揮 — 2017.5.12
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第75話 ~牡牛座-9~


前回までのお話はコチラ

昨夜の“失態”が、嘘のような平和な朝だ。

実は全部“ドッキリ”か何かで、2人が私を驚かせようとしているだけだと思いたい……。

どうして私のスマホに志田さんからメールが届いているのか……、私には理解できなかった。

『あのさ、昨日私、志田さんとアドレス交換したっけ?』

開封するのがちょっと怖くて、祥子に聞いてみた。

「いや、してないと思うよ」

『え! だったらどうして、彼からメール来てるんだろう……』

「志田っちから、電話番号を教えて下さいって、言われたの覚えてない……よね?」

『うん、まったく』

「昨日の和歌子、すごく酔ってたから、志田っちが心配して電話番号を聞いてたわ。だから、ちゃんと私の家に着いたかどうか、ショートメールで確認しようとしたんじゃない?」

『あー……』

なるほど。そりゃあ、初対面の女がぐでんぐでんに酔っ払ってたら、心配になるのも当然よね……。

「志田っち、あんな感じの人だけど、良いヤツだよ」

『それは、分かるけどさ』

あんな失態をしてしまった後で、一体どんな顔して会えばいいのよ……。

恐る恐るメールを開封する。

PM 11:05「志田です。今日はお疲れ様でした。無事に滝口さんの家に着きましたか?」
AM 00:56「志田です。遅くに失礼します。もし何かありましたらご連絡下さい」
AM 06:42「志田です。おはようございます。体調いかがですか?昨夜は有難うございました。少なくとも私は楽しかったです。また機会がありましたら」

短いメールが、昨晩から今朝にかけて3件入っていた。

丁寧で親切な人なんだろう。ショートメールに収まりきるように、言いたいことをまとめて書いてある。

「志田ちゃん、何て?」

祥子が興味ありげに聞いてくる。

『いや、無事に帰りつけたか、って』

「いやあ、昨日の志田ちゃん、男らしかったわよ。見直しちゃったもん」

『“男らしい”って何が?』

「和歌子がリバースしたものを片付けて、その後、タクシーを拾って抱きかかえて乗せてくれたのよ。私じゃ抱えきれなくって。で、運転手に1万円渡して、“何かあったらいつでも連絡下さい。私、起きてますから”ってさ」

……吐いたものまで、片付けてくれたんだ。しかも、抱き抱えられたって。

私、60キロくらいあるよ。ちょうど“米俵1俵”くらい。

恥ずかしすぎる。

お寿司食べて飲んで吐いて、抱っこされて……世話ないわ。彼が良くても私がムリ。

「和歌子、返信してあげないの? 彼、心配していると思うわよ」

『できるわけないじゃん! あんなことの後に……』

「志田っちさ、最後に“楽しかったです、また誘って下さい”って言ってたよ」

―――ドキッ

今、私、ドキッとした。いろんな意味で。

こんな失態、雅俊さんにすら見せてない。いつも背伸びをしていたから。

ちゃんとしていないと、嫌われると思っていた。

でも、もしかしたら、それが雅俊さんにとっては窮屈だったのかもしれない。

お互い自然体でいられなかったのは、私が原因……。

私は彼に嫌われまいと、“素の自分”を隠して8年間付き合い続けてきたのかもなぁ。

それを、志田さんに教えられたような気がした。

本当の私は、欲張りで、嫉妬深くて、女々しくて……そして、大食い。

自分でも分かってる。

昨夜は、私が今まで隠し続けてきた“本性”を、全部ぶちまけちゃったんだと思う。それでも、志田さんは引くことなく真摯に対応してくれた。

――もし、もし、雅俊さんだったらどうだっただろう。

志田さんみたいにしてくれたかな。それとも、幻滅されてしまっただろうか。

確かめる術はないけれど……、一つだけ言えるのは、

“志田秀”という男は、私のダメな部分を受け入れ「また会いたい」と言ってくれる人なんだということ。

『……メール、返さなくちゃな』

そんな彼の誠意に、私も誠意をもって応えなくてはいけないような気がしてきた。でも、どうすればいいのか分からない。ショートメールは文字数が限られているし……。

「“また飲みましょう!”でいいんじゃない?」

横から祥子。

『いやいやいや! まずお詫びでしょ! 謝罪でしょ!? で、それからお礼と、タクシー代のことと……』

「和歌子」

『な、何よ?』

「素直に言いたいこと、言えばいいじゃん」

『なっ……』

まるで人の心を見透かしているかのようなことを言う。“素直に”って簡単に言うけど、一番難しいんだから。

そこから十数分ほど、悩み考え、送ったのは

「清水です。昨夜はご迷惑をおかけしました。私も楽しかったです。また宜しくお願いします」

謝罪、共感……そして同意。(だけど、最後の同意部分では具体的に「また会いましょう」とは明言してない)

私なりの全力投球だ。

「ま、女は素直が一番よ。私なんて、いっつも素直」

祥子が悪戯っぽく笑う。

『あんたの場合、“明け透け”って言うの!』

心の中にできた、“雅俊さん”とは違うもう一つのフォルダー。

“志田秀”という大人しいけど温かい男性の、数少ない情報がファイリングされている。

……いつの間にか、頭痛は治まっていた。

牡牛座 第3章 終


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【今回の主役】
清水和歌子 牡牛座28歳 保育士
子供好き。学生の頃から付き合っていて、結婚まで考えていた彼(飯田雅俊)に振られる。彼との恋をずっと引きずっており、復縁を望んでいる。ややぽっちゃり体型だが、男ウケする柔和な笑顔が特徴的。結婚していい奥さんになるのが夢。友人の紹介で、同郷の志田秀と引き合わされ、淡い恋心を持ちながらも、過去を忘れられずに苦しむことに。

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