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「他に好きな人ができた…ごめん」|12星座連載小説#65~牡牛座5話~

文・脇田尚揮 — 2017.4.25
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第65話 ~牡牛座-5~


前回までのお話はコチラ

最後のお迎えママがやってきて、一日がおわった。

“ばいば~い”と手を振り、園内に戻る。

「お疲れ様」

春日先生がチラッとこちらを見て、また書類に目を落とす。

『お疲れ様です』

軽く会釈して、園内掃除に移る。

――毎日、同じことの繰り返し。

雅俊さんと付き合っていた頃は、いつも週末の夜を楽しみに頑張っていた。雅俊さんと過ごす時間が、私の仕事や生活のペースとなり平日を乗り越えられていたのだ。

でも今は、変わり映えのない毎日が、ただただ延々と続くだけ。唯一の楽しみといえば、休日に美味しい物を食べに行くことね。

……モップで床を掃きながら、様々な思い出が頭をよぎる。

彼と一緒に過ごした日々。そう、彼の部屋もこうして掃除してあげたっけ。私が作ったご飯を、「美味しいよ」と笑顔で食べてくれる彼。

私にできることなら、何だってしてあげたのに―――

雅俊さんとの別れは、突然だった。

半年前のお昼、いつものようにデートをし品川の喫茶店でお茶をしていたとき、

「わかちゃん、あのさ……」

『なあに?』

何も知らない私は、いつものように彼の顔を覗き込む。

「悪いんだけど……」

言いよどむ彼。

『ん?』

「別れて欲しい」

――え?

聞き間違い? 言い間違いかな?

『え、ウソだよね?』

「いや、本当なんだ……ごめん」

頭が真っ白。結婚まで秒読み。

そろそろプロポーズされる頃かな、なんて思っていたのに……。

まさに、“青天の霹靂”だった。

『う……そ……嘘だよね?』

涙声になっていた。

「他に好きな人ができたんだ……ごめん」

決定打だった。

『っ!!!』

そこからのことは覚えていない、というか思い出したくない。

多分、涙で顔をグチャグチャにしながら、色々言ったんだと思う。叫んでいたかもしれない。

周りの人たちが一斉に、私たちのほうを向き、ヒソヒソ話し始めたことだけ覚えている。

私とのこれまでの時間はなんだったの!?
どうして今日なの?
相手は誰!
結婚……してくれないの?

とにかく、いつもの私からは考えられないくらいに、思っていることを彼にぶつけたと思う。

彼は黙ってうつむいたまま、決して何も言わなかった。

それから、お互いに気まずくなって、店を出た。

どこへ行くでもなく、人気のない公園でベンチに腰を下ろす。

……ひとしきり泣いた後、私から切り出す。

『なんとか言ってよ……ねぇ、まさ、さ……ん』

「和歌子とのことは、俺だって結婚まで考えていたんだよ。だけど、疲れたんだよ……。俺、“わか”の期待にそこまで応えられないよ。」

意外だった。私、そこまで雅俊さんに期待を押し付けてない。

でも、息が詰まって言葉が出ない……。

「分かるよ、わかの言いたいことも。でも、付き合いはじめの頃から、俺だって少し背伸びしながら頑張ってたんだよ! わかの期待に応えられるようにって……でも、わかが“結婚”を意識し始めた頃から、すごい俺、プレッシャーで……」

よく見ると、彼も泣いていた。

二人で一緒に過ごしてきた時間は、あまりに長く、尊く、そして哀しい……。

『私、そんなに求めてない! ずっと一緒にいたいだけ……』

「それが重たいんだよ。俺、和歌子以外の女、知らないんだよ!」

初めて知った。てっきり、雅俊は“経験済み”だと思っていた。お互い“初めて同士”だったんだ……。

「自分勝手なのは分かってる。でも、このまま和歌子と結婚したら、俺、後悔すると思う。わかのことは好きだけど、結婚するって、また別物だと思う。」

え……。

でも、結婚するって、好きの延長線上にあるものだよね。何で私じゃダメなの?

どうして……?

もうこれ以上聞けなかった。でも、ひとつだけハッキリさせておきたいことがある。

「雅俊、今、私よりも好きな人がいるの…? いつから? どんな人?」

――少しして、彼が重たい口を開いた。

「年上の女の人。半年前から気になっていて……」

『私よりも大切なの!?』

「だから! 俺も分かんねーよ!!」

初めて彼が大きな声を出した。

「……ごめん。」

無言のまま、時間が過ぎ去る。周囲にはもう誰もいない。

「今日はもう帰ろう」

『……うん』

「送るよ」

これ以上優しくされると……もう私、ダメだ。

反射的に私は、

『イヤ。一人で帰る』

とだけ言って、彼に背を向け、彼の視界に入らないところまで早歩きで歩いて……歩いて……、そして目の前に現れた公衆電話ボックスの中に入り、泣き続けた。

とにかく泣いて、泣いて、もう何も考えられなくなるくらい泣いた―――

次の日、私からメールで、

「別れよ」

と一言だけ送って、

彼から

「うん。ごめん」

と返信があった。

これが、私と彼との“最後”だった。

―――それからもう半年が経つ。

『ふぅ』

モップ掛けを終え、帰り支度を始める。

スマホを見ると、LINEが1件。

いつも「もしかしたら、雅俊さんかも……」と思ってしまう自分が悲しい。期待なんてすると傷つくことになるから、嫌なのにね。

開いてみると、学生時代からの友達“祥子”からだった。

「ねぇ、和歌子、紹介したい男がいるんだけど、どうかな? 良い人だよ? 余計なお世話かもしれないけどさ。そろそろ次の恋を見つけなきゃだよ」

私にどうしろっていうの、祥子。

……正直、放ってほいて欲しかった。



【これまでのお話一覧はコチラ♡】

【今回の主役】
清水和歌子 牡牛座28歳 保育士
子供好き。学生の頃から付き合っていて、結婚まで考えていた彼(飯田雅俊)に振られる。彼との恋をずっと引きずっており、復縁を望んでいる。ややぽっちゃり体型だが、男ウケする柔和な笑顔が特徴的。結婚していい奥さんになるのが夢。友人の紹介で、同郷の志田秀と引き合わされ、淡い恋心を持ちながらも、過去を忘れられずに苦しむことに。

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