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私が選んだ「黒い生き方」|12星座連載小説#61~蠍座4話~

文・脇田尚揮 — 2017.4.19
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第61話 ~蠍座-4~


前回までのお話はコチラ

新宿はいつも大勢の人で賑わっている。

予約していた、フレイア先生に鑑定してもらった。

……心が軽い。灰色だった風景に色が戻っていくような感覚。

それは、占いの結果が良かったからじゃない。フレイア先生の言葉が、私の心の深部にメスを入れてくれたから。

何だか、強くなれる気がする。

地面を1歩1歩踏みしめるように歩き、途中でタクシーをとめ銀座へと向かう。

今日の仕事をしっかりやり切らなくては。私は曲がりなりにも“銀座のママ”なんだから。

――会長に出会う前の私は、ただの“キャバ嬢”だった。

売り上げこそ凄かったが、ただそれだけ。

東京に出てきて、ビックリするくらいの額のお給料を毎月もらって……、同年代の女の子と比べて相当贅沢な暮らしを送っていたと思う。

さらに自分の格を上げるために、ブランド品で身を固め、ちょっとした息抜きにホストクラブに遊びに行ったこともあったわ……。お金だけ吸い取られて、何も残らなかったけどね。

でも1分1秒と、時が流れ、年を重ねていく中で、ふとした疑念が頭の中に浮かんできた。

今は、この“若さ”を切り売りしていればそれで良い。でも、アラサー、そしてアラフォーになったとき、私はこのままの自分でいられるだろうか……と。

同じキャバクラで働いている女の子たちを見ていると、その不安は募るばかり。

若いうちは、お客さんを回してもらえるし、指名だって沢山取れる。でも、それもずっとは続かない。そして、気付けば“中堅どころ”になっている。

そこからは、見放され捨てられるのを恐れながらお店にしがみつくか、枕営業で“女を売る”か、あるいは風俗嬢やAV女優に転身するか……。そんな選択肢しかない。

でも、私はどれも嫌だった。

私の中で残された選択肢は、夜の仕事を卒業し昼の仕事で生きつつ“永久就職先”を探す「白い生き方」、もしくは、“ホステス”として夜の道を極めていく「黒い生き方」の2つ。

――タクシーの窓から、大手アパレルショップの看板が見えて、ふと、かつての同僚“麗華”もとい……恭子のことが頭をよぎる。

彼女は……そう、「白い生き方」を選んだ側。賢いと思うわ。一度“夜の味”を知ってしまった女は、普通の暮らしになんて戻れない。

刺激的で煌びやかな世界の中で、男たちから求められているうちに、自分が価値ある存在なんだと“誤解”してしまうのよ。普通の男と普通に付き合って、普通の結婚をする……そんな幸せでは物足りなくなってしまう。

昼の仕事に移ってやっと落ち着いたと思っていた女の子たちが、夜に出戻ってきたのを私は何度も見てきている。

恭子には、このまま幸せになって欲しいわね。少し計算高いところがあったけど、誰とでも円滑にコミュニケーションをとることができる、心根の優しい子。

私のことを少し敵視していたみたいだけど、それは向上心の表れだったとも言えるしね。自分の力で何とか這い上がろうとする彼女の生き方は、他のキャバ嬢とは違っていたわ。

それに対して私は……、「黒い生き方」を選んだ。“キャバ嬢”から“ホステス”として、徹底的に夜の世界で生きていくことを選んだの。

初めは面食らったわ。客層が全然違ったもの。

キャバクラは学生からサラリーマンまで、“一般の”お客様をただ接待するだけで良かった。

幸い私は母に似てお酒に強かったから、一緒に楽しくお酒を飲むだけで喜んでもらえたわ。

でも、クラブは一流企業の役員クラス以上の“遊び慣れた”方が沢山いらっしゃる。

気配り・品格・知性など、魅力的な女性としての要素を満遍なく備えておかなくてはいけない。……だからこそ、年齢を重ねても続けられるんだけどね。

ホステスは同伴やアフターが義務みたいなものだから、新聞や雑誌に毎日目を通して逐一情報を仕入れている。

一流の人間を相手にし、それだけでなくお客様同士を上手く取り持つこともできなくちゃいけない。キャバクラみたいに、店側が守ってくれるわけでもないから、全て“自分の身一つ”で真剣勝負。そんな仕事。

――そう、そこで“会長”と出会ったの。

ホステスとして、数年経ったある日、会長の席につかせていただいた。当時、私には何の後ろ盾もなく、ただ漫然と、でも一流のホステスを目指して愚直に働いていた。

会長は、大手企業に勤めている人なら誰もが知っている“財界の怪物”。もしもこの人の愛人になれたら、私の人生は変わるかもしれない……。

それまで一度も“女を売る”ことはしてこなかった私だったけど、「ここで勝負しないと、いつまでも一流にはなれない」という焦りと欲で、自分を売ってしまったのよね。

私の読みは的中し、銀座に今のお店『雪月華』を出して頂いて、私の“絢芽ママ”としての人生がスタートした。でもそれは同時に、毎週のように嬲られ、その様を愉悦される日々の始まりでもあった。

……何の因果かしらね。今では、あの時の選択を後悔している。

会長も、私が後悔していることは分かっているだろう。その上で私が壊れていくのを、どこか楽しんでいる。

クラブママという女の子をまとめる立場の私。その私のプライドがズタズタに引き裂かれるのを“娯楽”として観賞しているのだ。

今の私は籠の中の鳥ね。

「相手が求めているものを与えて、相手の心を支配する」

フレイア先生の言葉を思い出す。

女性の“真の力”。母性か……。

私は籠から羽ばたいていけるのだろうか。



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【今回の主役】
須藤由紀(絢芽) 蠍座30歳 クラブホステス
豊満な肉体を持つセクシーな女性。貧しい幼少期を経て、自分の身体一つを武器に若い頃から水商売の世界でトップを取り続けてきた。さまざまな男性と情事を重ねる日々の中で、自分の生き方に疑問を感じ、男と女の化かし合いに疲れている。このまま、夜の世界の女帝となるか、それとも……。

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