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【女の勝利】「憎き男」の対処法|12星座連載小説#59~魚座5話~

文・脇田尚揮 — 2017.4.17
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第59話 ~魚座-5~


前回までのお話はコチラ

俯きがちに、彼女がポツリポツリと話をする。

「これまで私は、自分のお店を持つことが夢でした。そして、その夢を叶えることはできました。でも……それによって失ったものもあって」

これは、かなりディープな悩みね。表情が物語っている。

「どんなことをしてでも自分のお店を持ちたいと、こだわるあまり、私は間違った選択をしてしまいました。それを今になって、後悔しているんです」

――少しの沈黙のあと

「先生、私は“自由”が欲しい。どうすればいいのでしょうか」

『深い事情がおありなんですね……分かりました。では、タロットカードで見させて頂きます』

緊張する。

大小いろんな悩みがあるけど、どんな悩みも“その人”にとっては深刻なもの。占い師の扱いが変わることはないわ。

だけど、今回の相談は、彼女、須藤さんの今後の人生を左右するような重たいもの……。

――カードをシャッフルして、展開する。

占う以上は、どんな結果が出ても、彼女にそれをキチンと伝えてあげなくてはいけない。

『……それではみていきますね。』

彼女の目線が、カード一枚一枚に注がれている。

過去のカードは、予想通りね。“悪魔”の正位置。……ん? 過去……?

『須藤さん、前回の結果を覚えていますか?』

「はい、“相手”のところに怖いカードが出ていた記憶があります」

『ええ、そうですね。前回と同じで、今回もこの“悪魔”のカードが出ているんです』

少し、彼女の顔が青ざめる。

『でも、それは過去のもの。今はもう過ぎ去ったことなの』

“ほっ”と声が漏れるくらいの、安堵の表情が浮かぶ。

『さぞ、お辛かったことと思います。この絵から分かるように、逃れられない枷に縛られていたんじゃない?』

「……そうですね」

『でも大切なのは、ここから。“現在”の状況を見てみるわね』

めくったカードは、“力”の正位置。

『須藤さん、今こそあなたは自分を強く持たなきゃダメ。そうね、女性的な強さとしなやかさを持って欲しい。このカードを見て。若い女性が獰猛な獅子を手懐けているでしょう。今のあなたは、こういう心持ちでなくてはいけないの』

「………」

『強大な存在に力で立ち向かっても、それに飲み込まれてしまう。真っ向から獅子に立ち向かっても食べられてしまうわ……。ただ自分を強く持つだけじゃダメなの。“柔よく剛を制す”という言葉のように、相手が求めているものを与えて、相手の心を支配するの。それがこのカードに描かれている女性の真の“力”なのよ』

「手懐けて支配する、ですか」

『そう。どんな男でも、必ずお母さんのお腹の中から生まれてきたの。だから母性には敵わない。女のほうが先天的に、男よりも一枚上手なのよ』

「でも、私にはそんな母性なんて……子供だっていないし、実感が持てません」

『“母性”って、別に子供をもったから備わるものじゃないわ、須藤さん。男はね、子供と接していくうちに父性が目覚めるの。言い換えると、子供がいないと父性は生まれないのよ。でもね、母性はすべての女性にもともと備わっているものなのよ』

彼女が顔を上げ、真っ直ぐこちらを見つめてくる。

『別に難しいことじゃないわ。自分よりもか弱い存在を守ろうとか、大切なものを育てたいっていう純粋な気持ち。それは、相手が欲しているものを無条件に与えるってことなんじゃないかな』

思わず、かなり熱のこもった鑑定になってしまっていた。

「例えば、相手のことを憎んでいても?」

……っ。一瞬、言葉に詰まる。

『そうね、無条件の愛だから。戦うよりも愛した方が強いのよ』

彼女が少し微笑む。

『男なんて、女がいないと何もできないんだから。男をお腹の上で泣かせてこそ、“オンナ”ってものなのかもしれないわ』

―――昔、旦那のてっちゃんと一度だけ別れ話になった時のことを思い出した。

もう既に同棲していて、彼が公務員試験浪人中の時だったわ。

毎日働きながら、彼の食事とか洗濯のお世話してたっけなぁ。些細なことでケンカして、彼から「もう別れよう!」って言われてしまったのよね。

いつもの私なら、泣いてすがりついていたわ。でも、その時だけは違ったの。「分かりました」ってピシャリと言い放ち、合鍵を置いて彼の家から出て行った。

そう、それから数日も経たずして、彼がやってきて、私のお腹に顔を押し当ててワンワン泣いちゃったのよ。大の男が。

その後、「結婚して下さい」って、涙でグシャグシャの顔でプロポーズされたものだからビックリしちゃった。

……その光景が思い出された。

「……フフフ」

須藤さんが笑った。

「あっ、ごめんなさい。だって、先生のお話、面白いんだもの」

何か変なこと言っちゃった!? 私。

「でも、よく分かりました。そうですね、私も男の人を泣かせてみようかな」

女同士、何故かニッコリ微笑み合う。清々しい。

もしも、“母性の以心伝心”があるとしたら、こういうことなのかもしれないわね。

そこから先の鑑定は、もしかしたら彼女にとっては“オマケ”みたいなものだったのかもしれない。



【これまでのお話一覧はコチラ♡】

【今回の主役】
和辻花子(フレイア華) 魚座33歳 占い師
既婚者であり、夫に和辻哲夫、子供に和辻長輝(9歳)と和辻夢叶(5歳)がいる。家庭と仕事の兼ね合いで悩みつつも、占い師としてそこそこの人気を得ている。しかし、あるお客の鑑定をきっかけに、占いの限界を感じて心理カウンセラーの資格を取ろうと考える。

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