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年上彼女「私…あなたの母親じゃない」|12星座連載小説#37~牡羊座4話~

文・脇田尚揮 — 2017.3.14
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第37話 ~牡羊座-4~


前回までのお話はコチラ

―――ジャバジャバ、カチャカチャ、ゴシゴシ

キッチンからリズミカルな洗い物の音が聞こえてくる。食後の後片付けは祐也の仕事。

これで後片付けもしなかったら、さすがに私も「出てけ! このタダ飯食らい!」ってなるんだろうけど、こういうところは素直だから、怒るに怒れなくて困っちゃう。

なんだかなぁ……。

こんな風に1年近く同棲生活を続けているけど、未だにヤツの性格が掴めない。

結婚する気があるんなら、役者をやるにしてもちゃんと働くよなぁ。で、結婚する気がないとしたら、もっとワリキルでしょ。

この中途半端に優しい感じが、ハッキリ答えを出したい私にとっては居心地悪くてたまらない。

「みーちゃん、終わったよ~。お風呂沸かすね~」

うっわ、ウソ!? 風呂沸かすって!

……不覚にも、感動している私。

大したことじゃないのは分かっているんだけど、この一人暮らしにはない、“誰かが、何かをやってくれる感”がたまらないんだよね。

はぁ……私は洗脳されてるんだろうか。このヒモ彼氏が可愛くて、切ることなんてできないよ。

「ん? どした?」

『えっ、あぁ……、いや、洗い物とお風呂ありがとうね』

「へへっ、偉いだろ~?」

一言多い。

『当然です!』

私たちは時間が合えば、一緒にお風呂に入る。そこで、色々とお互いの一日を共有(?)し合うんだ(9割は祐也の話だけど)。

ラブラブと言えばそうなんだけど……。もちろんケンカした日は入ってあげないんだから。

―――衣服を脱いで、私が先に入る。その後少しして彼が入ってくる。

それが暗黙のルール。だって、恥ずかしいんだもん。

「しっつれ~い」

シャワーで汗を洗い流して、湯船に浸かっていると彼が入ってきた。手には入浴剤。

「みーちゃん、俺さ、このブクブクのヤツ好きなんだよ~」

ドボン……シュワワ~

泡が出るタイプの入浴剤だ。子供か!

『ちょっと、祐也! いきなり入れたら顔にお湯がかかるじゃない!』

……シャワーを頭から浴びていて、まったく聞いてない。

あーもー、こいつムカつく。

「よっと」

トプンという音とともに彼が入ってきた。少しだけお風呂のお湯が浴槽から流れ出る。

こうやって恋人と一緒にお風呂に入るのって、気持ちいい。

エッチとはまた違う気持ちよさね……精神的な満足っていうか。

女子は結構好きなんじゃないかな、こういうの。だいぶ昔付き合った彼は、お風呂に一緒に入るのを嫌がったから、祐也はレアなのかも。

「あ~極楽~。今日はさ、稽古で先輩の佐藤さんがつまづいてひっくり返ってさ、もう、みんな大爆笑! あそこでアレはないっしょ!って感じだったよ~」

は? 佐藤さんて誰!? コイツ自分の世界の話しかできないからなぁ。しかも延々と続くんだよな……。

長くなりそうだから、私だって!

『うん、そっかぁ。ウケるね。……でね、祐也、聞いて! 今日、私、番組の企画任されたんだよ! しかも、前からやりたかった貧困女子のドキュメンタリー!』

「へー、良かったね。でさ、佐藤さんの相方の田中さんがさ……」

マジ腹立つ。私の話は流して、また自分の話かい! 年下の男って、みんなこうなの? お姉さん、キレるよ!? もっと、こう……包容力ってないもんかね?

……一瞬、木田さんの顔が浮かんだ。

うわ! 違う違う! そんなんじゃないって! 上司。ただの上司。有り得ないから!

頭をブンブン振る。

「ね、みーちゃん、俺の話、聞いてた?」

『うん! うん! もちろん聞いてた!』

……祐也が私の話を聞いてくれないのが悪いんだからね。

そして、“洗いっこ”なんかしたりして、お風呂から上がる。

ドライヤーで髪を乾かしていると、後ろから、

「ねー、俺のパンツどこ?」

もう30近い男が、パンツどこって……。私が洗濯してるから、場所分かんないんだろうけどさ!

『自分で探してよ! 私は祐也の母親じゃないんだからね!』

―――言って、後悔した。祐也に対してじゃなく、自分に。

この1年、あまり考えたくなかったこと。そう、私は“恋人”から“母親”になってるんじゃないかって。

ただ彼の世話を焼いてるだけで自己満足していて、彼もそれが居心地いいから一緒にいるんだとしたら……それは悲しい。

「あ、あった~」

そんな私の思惑なんて知る由もなく、パンツを履く男。これでいいのか、私。

……私がパジャマに着替える頃には、祐也はビールを飲んでいた。お前、それ私が飲もうと思って買っておいたやつだよ! オイ。

『ねぇ、祐也ぁ、私にもチョットちょうだい?』

怒りを抑えて、できるだけ可愛く言ってみる。

「あ、ゴメン、もう飲んじゃった。てへぺろ」

さすがにキレた。

『おま……、てへぺろじゃねーよ! 働きもしないのに、ビール飲んでさ。祐也ちょっと酷いよ!』

「洗い物したのに……」

急にシュンとなる。

『いや、それはわかるけど、ここ私のウチだよ? で、家賃とか光熱費、食費、全部私が払ってる。もう少し考えて欲しいな!』

「……もういいよ」

祐也はイジケてベットに入って、シーツを被ってしまった。

こういう時、どうすればいいんだろう。みんな、どうしてるの。私が言い過ぎたのかな。

……でも、ハッキリ言わないとダメだよね。結婚考えてるんなら、将来絶対困るよね。

少し気持ちを落ち着けて、電気を消し、私もベットに入る。

『ねぇ、祐也、ごめんね。』

「……」

『祐也……しよっか?』

精一杯の勇気を出して、言ってみる。

「今日、疲れてるし眠いから、また今度。おやすみ。」

背中を向けられた。

……寂しい。

私は“恋人”じゃないのかな。これじゃあ本当に“お母さん”みたいじゃない。

泣きそうだけど、唇を噛んでガマンする。泣いたら面倒な女みたいでイヤ。しかも、エッチを断られたから泣いたみたいじゃない。



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【今回の主役】
竹内美恵 牡羊座32歳 駆け出しディレクター
熊本県から状況し、都内でADとして下積みの後、最近ディレクターに。年下の男(吉井祐也・劇団員)と3年近く同棲をしている。
性格は姐御肌で面倒見がよく、思いついたらすぐ行動するタイプ。反面、深く物事を考えることが苦手でその場の勢いで物事を決めてしまうきらいがある。
かなりワガママだが、テレビ局内での信頼はあつい。

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