会社を辞めて、こうなった。【第40話】 英語習得までの6段階。 バークレーで過ごす2度目の秋。
若者の英語が聞き取れない…。
話がそれてしまいましたが、“それが正しい” とされた表現を(=アメリカ人に受け入れられる《ポジティブ》と捉えて)使い続けたけれども、“間違っている” (=アメリカ人に受け入れられない《ネガティブ》)と気付いて使うのをやめる。これは、スキナーの言う学習によるものですよね。いっぽうで、未だに過去のことを説明しているのに誤って現在形の動詞を使ってしまい、アメリカ人を「ごめん…。何を言っているのかよくわからない」と困惑させてしまったりと、周囲の誰も話さないようなオリジナルな間違いを何度も孤独に繰り返してもいます。これはチョムスキーが説く、誰から教えられたわけでもないのにやってしまう、私の認知パターンによる産物です(とはいえ、わたしの思考は乳幼児のそれとは異なり、すでに日本語の枠組みをベースとしています。そこでわたしの誤りは全て日本語の文法構造に英語を当てはめた結果の産物だと考えれば、オリジナルな間違いというよりもむしろ、過去の学習が引き金になっているとも考えられますが…)。
さて絵本で英語を学んでいた1年前に比べて、書かれているものの内容にもよりますが読むのはだいぶ楽になってきました。これは読書が最大の娯楽であった私にとっては大きな進歩で、その結果心の状態もずいぶんと穏やかになってきました。とはいえ聞き取りのレベルは未だ低空飛行。話す人によってわかったりわからなかったりという感じです。例えば授業中の学生の質問、そして休み時間に彼らとする会話は何を言っているのかよくわかりません。口をはっきり開いて話さないのと、巻き舌具合がちょっときついのとで耳で聞いた音が文字として知っている単語と結びつかない。また、ナチュラルな生きた口語ゆえに主語がなかったり、目的語をすっ飛ばしたりしているといった文法上の理由、あとはイディオムやスラングなどその人の使う単語パターンと自分の語彙ストックとの相性にもよって、理解できるレベルが異なってきます。
英単語をモノにするのに必要な6ステップ。
ただし読めるようになったからといってその内容を話せるかといったら、それは全く別問題。私が思うには英単語を自分のものにするには6段階あります。
1.まったく知らない。見たことも無い。
2.見たことはあるけれど、意味はわからない。
3.意味はわかるが、スペル(綴り)を書けといったら書けない。
4.意味もわかるし、スペルも書けるが、ヒアリング出来ない。
5.書けるし、ヒアリングも出来るが、自分でその単語を使うことは出来ない。
6.自分の語彙としてその単語を使うことが出来る。
シャドーウィングという聞いた音声を即座に復唱することで英語習得を目指すテクニックもありますが、私の場合は言葉とその意味が一致して始めて記憶されていくので復唱練習はその後のステップ。そこで、4に到達するために私が今一番良いと感じるのはたくさん読むこと。好きな作家でも思想家でもまずひとり選ぶといいです。その人が使う単語のパターンがありますので、何度か読んでいくと辞書を引く回数が減ってきます。そもそもその人の考え方が好きなわけですから、文章まるごと暗記して自分の言葉にしちゃっても問題ない。その後5の状態にするためには、聞くこと。好きな思想家の本を読んだあとに、その人のTED talksなどを聞いて、目で見た単語が音になるとどうなるのか一致させていくのも良いと思います(本当に便利な世の中!)。
そして6に到達するためには、”アウトプット“ が必要になってきます。誰かにその単語を使って話すということですね。ここを超えるのが私にはとっても難しい。やっぱり心理的なものが大きいかなと思います。アメリカに来て間もないころ、語学学校の友達が「ビールを飲んだときが一番話せる」と言っていたのですが、失敗を恐れる気持ちが語学上達を阻んでいると痛感します。実際にクラスメイトに「息抜きにコーヒーでも」と誘われるのは有難い半面、「息抜きにならないんだなぁ…」と思ってしまうこの性格が災いして6への壁を超えられないのだろうなと日々反省。小学校の同級生(途中で大学を辞めて10年間海外に住んでいた)に「想定していた以上にキツイ」と弱音を吐くと「やるだけやらかしちゃってください」と最終的には必ず締めくくられます。確かにアメリカ人にまで「クレイジー」と言われてしまうわたしの決断や現状を考えれば、ちょっとやそっとの失敗や、相手に「バカだな」とか「中身が無いな」と思われてしまうことぐらいでたいして失うものも無いと言えば無いのですが。
失敗を恐れずたくさん話して言語を習得していく…。性格上なかなかそれが難しく自己批判に暮れていましたが、最近は「まぁそれが私のスタイルだから仕方がない」と開き直り、その代わりにできるだけ本を読むことを心がけています。好きなところから攻めていこうというわけです。また、片道徒歩30分の通学時間を利用して、ぶつくさ独り言をつぶやきながらアウトプット練習もしています(怪しい)。ひたすらこれを地道に繰り返しながら自分のなかにあるOKラインを超えた時点で、生身の人ともっと深い内容を話していく段階へと進んでいこうと思っています。
See You!
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「土居彩の会社を辞めて、サンフランシスコに住んだら、こうなった。」まとめ
編集者、ライター。14年間勤務したマガジンハウスを退職し、’14年12月よりサンフランシスコに移住。趣味は、ヨガとジョギング。ラム酒をこよなく愛する。目標は幸福心理学を学んで、英語と日本語の両方で原稿が書けるようになること。