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会社を辞めて、こうなった。【第27話】 成績ガタ落ち! なんで私、バークレーにいるんだろう…?

2015.11.11
バークレーに入学し、幸運にも希望通りケトナー教授の研究室に潜り込むことが出来た筆者・土居。しかし研究室では、貝のように押し黙る日々が続いていた・・・。
 

【第27話】成績ガタ落ち! なんで私、バークレーにいるんだろう…?

希望通りの研究室に!

「ツ、ツライ…」。気づけばそう独り言をつぶやいている今日このごろです。この連載を読んで勇気をもらったと言ってくださる方もいますが、それはむしろ私のほうです。ここに気持ちを綴ることでどれだけ救われているか! 読んでくださって、みなさん本当に有難うございます。

さて、ちょうど日本語のリサーチデータを英訳できる生徒が必要だったようで、幸運にも希望通りケトナー教授の研究室に潜り込むことが出来た私。週に一度のミーティングでは、教授を囲んで大学院生が集まって自分の研究について発表したり、疑問に感じていることを共有するのですが、これが私の最大の苦悩の種となります。まず第一に、一体全体何が話されているのかがよくわからない! その結果貝のように押し黙る私ですが、私以外の全員、何かを発言したり質問したり、感想を述べています。

「私…、ここに存在している意味が全く無い…」。「もっともっと存在感を薄くして、いっそ透明になってしまいたい…」。消えてしまいたいという衝動を抱えながら苦悩する私の姿をよそに、私のせいでケトナー研究室に入れなかった同期が自主的にミーティングに参加し、必ず何かをたくさん発言しています(しかし、一体何を言っているのかよくわからない)。彼のほうがよっぽど研究室に貢献できているよ…。で、私、なんでここにいるんだろう…? ボー然。

二回目の中間テストは?

ついに生徒証まで落とし、再発行手続きをしに走る途中に見つけた素敵なグラフィティ。「あなたは私の太陽。私のただひとつの太陽」。
ついに生徒証まで落とし、再発行手続きをしに走る途中に見つけた素敵なグラフィティ。「あなたは私の太陽。私のただひとつの太陽」。

さらには、これこそが唯一の私の存在意味! とケトナー研究室と私をか細い糸で繋いでいた翻訳作業さえも難航しだします。というのも日本語、英語、韓国語を巧みに操る心理学専攻の韓国人留学生の才媛が一緒に翻訳作業に参加してくれることになったのですが、彼女のほうが私よりも翻訳スピードもクオリティも格段に高い! そして担当大学院生への自己アピールも上手い! とはいえ日本を訪ねたことも無いとのことで、微妙に彼女のアンケート解釈のポイントが日本人のそれとはズレている点もあるのですが、歯がゆいことにそこを説明し、カバーできるだけの英語力が私には無い…。ついには大学院生から送られてくるメールの宛名の順番がアヤ、彼女の名前、の順から彼女の名前、アヤ、にランク落ち。…私って、こんなに何も出来ない人間だったっけ?! キャンパス内ではドングリをくわえたリスだけが私の心の癒やしです(がしかし、彼らも私がパンを持っていないことに気づくと興味を失って去ってゆく…)。

といった毎日のなかで最高にモヤモヤしながら受けた二回目の中間テストでは大幅に点数を落とします。さらにはテスト後に教授のオフィス・アワーに質問をしようと走る途中、iPhone6を落として液晶が大惨事に! バリバリに割れた液晶をボー然と眺めていると、普段ほぼ着信しない私の携帯にテキストメールが。その内容は統計学の授業のRプログラミングに関する宿題提出前にだけ「どう解くの? 答えを教えて」と連絡してくる同級生たちからのメールです。「直接会ったときには挨拶もしないくせに!」といつも以上に癇に障って、イラッ。

疑問の種がついに発芽!

久しぶりに映画を観に。社会心理学者ミリグラムの実験と彼の半生についてでした。映画館の天井が素敵ですよね。
久しぶりに映画を観に。社会心理学者ミリグラムの実験と彼の半生についてでした。映画館の天井が素敵ですよね。

「あぁ、もうイヤだ、イヤだ、自分のこともバークレーも何もかも全てがイヤだー!」と一杯一杯になった私はついに研究室ミーティングをサボってしまいます(!)。そしてどうしようもない気持ちでパンチョとサムのカサデパズを訪ねると、そこにはカルマキッチン創設者のニップンさんが。インドにあるガンジーのアシュラムで生まれ育ったというパテルさんといらっしゃっていたのです。パテルさんのお父様、イシュワ・パテルさんは12歳からガンジー アシュラムに従事。カースト制度が不可触民に強いてきた仕事、排泄物清掃業に自らの一生を捧げました。彼は20万個もの公共トイレをインドに建設し、マハトマ・ガンジー賞を受賞。彼の葬儀には1万人もの人が参列したそうです。また多くのテレビ局が彼のインタビュー映像を流し、そこには「トイレを建設することは、たやすいのです。それよりも排泄物清掃に関する人々の心や気持ちを変えていくことが重要です」と語る彼の姿がありました。

パテルさんが語るお父様の話を聞いているうちに、アメリカに来てからずっと抱き続けてきた私の疑問の種がついに発芽しました。「意義がある人生を送るということと、幸せな人生を送るということは違うのかな」と。いつか利他的な行動が幸せにつながると研究したいと思っているけれど、それに向かって頑張れば頑張るほど、昔に比べて“幸せ”から遠ざかっているような気がしないでもない。残業帰りにラム専門バーに行ったり、お気に入りの通販サイトで買い物したり、愛猫とまどろみながら過ごす日曜日は幸せだったなぁ…。…で私、なんでここにいるんだろう? 誰にも頼まれていないのに…。

私の道は正しいの?

カターソン教授の統計学の授業は素晴らしい! テストのファイル名は「単なる中間テスト2015」だし、問題も「キャットパーソン教授(カターソンcattersonとかけている)は生徒の通学交通手段と猫が好きかどうかという点に強い相関があると考えています。モデルを組んで分析せよ」とクレイジーだし。統計分布図もハロウィンが近いということでオバケにしてしまっています。
カターソン教授の統計学の授業は素晴らしい! テストのファイル名は「単なる中間テスト2015」だし、問題も「キャットパーソン教授(カターソンcattersonとかけている)は生徒の通学交通手段と猫が好きかどうかという点に強い相関があると考えています。モデルを組んで分析せよ」とクレイジーだし。統計分布図もハロウィンが近いということでオバケにしてしまっています。

アメリカ有数の大学で心理学を学びながらも、真の友人を作ることが出来ない。教授と心をかよわせることも出来ない。そんななか、東京に住む同い年の友人から出産の知らせを受けます。さらに同じプログラムに所属していた同期のひとりからも妊娠をしたために来学期は休学すると打ち明けられました。いっぽうで私は深い人間関係を築くことも出来ず、部屋にこもって勉強ばかり。それだけ勉強したところでアメリカ人のように十分に授業についていくことすらままならないのです。一体私のたどっている道は、本当に正しいのでしょうか? 意義もなければ、幸せからも遠ざかっているのでは? そこでパテルさんに疑問をぶつけてみたのです。

するとパテルさんから一言「幸せというのは、外側にはありません。あなたの内側にあるものですよ」と頭をなでられ、インドの女性が作ったというハートのブローチを胸につけてくれました。そしてニップンさんからは「アヤがバークレーに居る意味は、あなたが感じているその違和感や素直な思いをアカデミックな場所に居る彼らに伝えていくことだと思う」と。そして「ただ今は色眼鏡で見るのではなく、彼らから全てを学びなさい。素直な気持ちで彼らのやり方を全て学びなさい」と言われました。

私の発言が論争に!

パテルさんからもらったお気に入りのハートのブローチ。勇気が欲しいときはそっと握ります。
パテルさんからもらったお気に入りのハートのブローチ。勇気が欲しいときはそっと握ります。

そして翌週の研究室ミーティングで、2か月の沈黙を破って初めて発言をします。パテルさんからもらったハートのブローチを握りしめながら。というのもその週の発表はタイムリーなことに、ある大学院生が行うスピリチュアリティの研究についてだったのです。そのなかで彼女がスピリチュアルな存在に遭遇したときに感じる自分の存在の小ささを図るスケールを発表していたのですが、ニップンさんやパテルさんのお話を聞いた後の私にはそれがしっくり来ず、素直に質問してみました。つまり彼女のスケールとは、1)私は私以上に大いなる存在、全体の一部だと感じる。2)私は意味の無い、取るに足らない存在だと思う。というものが並列にありました。いっぽう私は、自分のことを大いなる存在の一部だと認識できたら自我こそは薄れると思いますが、自分のことをむしろ意味のある存在だと思えるのではないかと感じたからです。今の私はバークレーというアカデミックな場所に身を置いて劣等感に苛まれ、自分がつながりのなかで生きているという実感が持てないためにちっぽけな存在だと思って辛いんじゃないかと思うからです。

すると発言の結果、予想外なほどのプチ論争に発展し、何が議論されているのかよくわからなくなってしまいました。自分からボールを投げたくせに、再び貝のように押し黙ってしまった私…苦笑。でも、不器用ながらも発言できて良かったです。私の至らない英語を研究室の大学院生がサポートしてくれたりと、そういう人間的なやり取りを体験できたことも嬉しかった。アメリカの親代わりになった伯父夫婦にも「今感じている感情を全てをよく見つめて研究材料にすればいい。まだまだ甘いですよ。悩み抜きながら前進した先にきっと、彩さんと同じ思いを持つ人に出会えるはず」と言われました。だから今週も重い足を引きずりながら、研究室ミーティングに参加したいと思います。

See You!

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PROFILE
土居彩
編集者、ライター。14年間勤務したマガジンハウスを退職し、’14年12月よりサンフランシスコに移住。趣味は、ヨガとジョギング。ラム酒をこよなく愛する。目標は幸福心理学を学んで、英語と日本語の両方で原稿が書けるようになること。