悲惨! 年収1000万以下で低所得…!? 超格差社会となった人気都市の現実会社を辞めて、こうなった。【第69話】

写真/文・土居彩 — 2018.2.23
こちらアメリカの2017年トレンドメニュー「アボカド・トースト」。原価のわりに値がはるので、これをやめなければミレニアル世代は家が買えないと警鐘を鳴らした億万長者もいたほど大ヒット。今ではオシャレなカフェの定番メニューになっています。けれどもサンフランシスコの現実と照らし合わせて見れば、そう簡単にはことは運ばなさそうで……。考察してみました。

【土居彩の会社を辞めて、サンフランシスコに住んだら、こうなった。】vol. 69

みなさんアボカド・トーストのことをご存知でしょうか?

Healthy food snack of eggs and avocado on toasted bread

その名前の通りズバリ、潰したアボカドを塩こしょうとレモンジュースで和えたオープンサンドのこと。こちらアメリカにおける2017年のトレンドフードだったこともあり、わたしが住む西海岸ベイエリアでは多くのカフェや人気レストランの定番メニューとなり、半熟ゆで卵やサーモン、トマトやフェタチーズなどをアレンジした、お店それぞれの趣向を凝らしたアボカド・トーストが食べられます。

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例えば『Blue Bottle Coffee』ではシソふりかけ(!!)が和えられたシンプルなアボカド・トーストが9ドル。4.5ドルのラテを一緒に注文すれば、税金(カリフォルニア州税が9.25%)とチップ(15〜20%)を合わせて合計18ドル程度になります。つまりトーストとラテで2000円するわけですね。

家が欲しけりゃアボカド・トーストをやめよ、という億万長者のアドバイス。

ところで1980〜2000年頃に生まれた人を「Millennials(ミレニアル世代)」と呼ぶのですが、オーストラリア人億万長者のティム・ガーナー氏(彼自身もミレニアル世代)が『60 Minutes』という番組のなかで、ミレニアル世代は流行りのアボカド・トーストを買うのをやめなければ「自分の家を持つことができないぞ」と警鐘を鳴らし、節約を促しました。

じゃあ、やめればサンフランシスコに家が買えるのか?

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ところがParagon Real Estate Groupの調査によれば、2017年5月の時点でのサンフランシスコで販売されている家の中央値は150万ドル(1ドル110円で計算しても、約1億6500万円!)。高級住宅に限り、じゃないですよ。中央値(median price)が、です。

つまりアボカド・トーストとラテを8万3334回やめればサンフランシスコに家が買える計算になり、1年が365日だとすれば毎日食べていたとしても229年かかります。人間の平均寿命を考えると、アボカド・トーストを止めたところで家は買えないというわけです。

年収1000万円以下が低所得者になり、2018年7月の時点で最低時給が15ドルになるという異常バブルなサンフランシスコですが、当然アボカド・トーストを注文できない人もたくさんいるわけで、いったいアメリカでは何がどうなっているというのでしょう?

トップ0.1%の人たちがその他の200倍稼ぐ。

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INEQUALITY.ORGより

経済貧富格差が大きな問題になっているアメリカですが、上の図はカリフォルニア大学バークレー校が2015年度の全米における世帯年収を調査したグラフ。これによるとアメリカの世帯年収トップ10%の人たちの平均所得は、その下90%の9倍以上。さらにはトップ0.1%の人々は、ボトム90%の人々の約200倍も稼いでいることになります。

また世界最大のヘッジファンドBridgewater Associatesの創設者であるレイ・ダリオ氏によれば、トップ0.1%の人たちの世帯年収の合計は、ボトム90%の合計と同額なのだとか。つまり、たった0.1%の超富裕層の収入合計とそれ以外のほぼ全員の収入合計が変わらないというのです。

つまり、サンフランシスコの所得1000万円以下が低所得者という話もこれに当てはめれば、ものすごく稼いでいる人が平均値を大幅に上げていることは確かで、どうやら過半数の人が1000万円以上の年収があるという話ではないのです。

ところで上の動画は昨年観たマイベスト映画、ショーン・ベイカー監督の『The Florida Project』(フロリダ・プロジェクト。日本公開2018年5月予定)のトレーラー。この監督は他作品もiPhoneで撮ったりと低予算で実験的なことをやっていて、個人的に注目しています。

さてこちら『Florida Project』では世界最大のアミューズメントリゾートである『ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート』がある、フロリダ州が舞台。『マジック・キャッスル』と呼ばれるモーテルにシングルマザーの母と暮らす6歳の女の子の目線で見た貧困層の人々の暮らしが描かれています。モーテルで暮らすなんて、アパート生活よりも割高では? と一見思えますが、きちんとした定職が無かったり、犯罪歴があったりすると入居審査に落ちてしまうので、結果こういうモーテル暮らしになるワケです。

バイト生活者も利用していたフード・バンク。

この映画のなかに賞味期限スレスレの食品を企業やスーパーからの寄付を受けて配給するフード・バンクの車が出てきます。映画を観ながらふと、サンフランシスコのヘイト・アッシュビーで暮らしていたころにハウスメイトの女性が毎週末『Haight Ashby Food Program』というフード・バンクの列に並んで、オーガニックスーパー『Whole Foods』や『Trader Joe’s』のパンや果物、惣菜を持ち帰っていたことを思い出しました。

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日本で暮らしていた頃はこういう配給を受けるのは相当な生活貧困者だろうと思っていたのですが、そうでもなかったんですよ。20年以上サンフランシスコで暮らすという30代の彼女はオシャレな花屋に勤めながらこちらの短大であるシティ・カレッジで何コマか授業を受けていました。彼女にはアルバイトとはいえど毎月収入がありましたが、家賃を払ってたまにカフェに行ってというので生活がやっと。「ここ数年の家賃の異常な値上がりで普通に生活できない」と、彼女のように今までサンフランシスコで暮らせていた人たちも生活がどんどん厳しくなっています。

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実際に彼女とハウスオーナーと3人で暮らした写真の家は昨年秋に売りに出され、オーナーは北カリフォルニアに引っ越しました。そこはサンフランシスコで初めて自力で問い合わせて住めた家だったので、売り出しの看板を見た途端、想い出が失われるようななんともいえない気持ちが。「サンフランシスコは、もう俺の知っている街ではないよ」と最後に言った、その家で生まれ育ってきた50代後半の彼の言葉は、忘れられません。

どうやっても家は買えない。だから、買うことができるたまの贅沢としてヒップなトーストとサードウェイブコーヒーを楽しむという姿勢は、たしかに刹那的ではあります。でも実際にベイエリアで暮らすミレニアム世代を見ると、それはある意味彼らの厳しい現実における自然選択なのではとも思えるのです。

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SEE YOU!

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