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会社を辞めて、こうなった。【第57話】 ゴールはおろか、今何がしたいのかすらわからない。 「だったら、4歳のあなたに聞いてみたら?」。

写真/文・土居彩 — 2017.9.22
大学院へのチャレンジをいったん保留し、Greater Good Science Centerのインターンも辞め、目指す方向を見失った筆者・土居。父や元カレに指摘されたように、どうしようもない状態になって帰国することになるのだろうか…。貯金残高やビザのタイムリミットもちらつき、言いようもない不安感が押し寄せる。もはや神頼み、「内なる神さま、向かうべき方向を教えてください!」と心のなかで唱えていると、コーヒーショップで隣席に座っていた女性に思いがけず話しかけられたのですが―。

【土居彩の会社を辞めて、サンフランシスコに住んだら、こうなった。】vol. 57

 

【第57話】ゴールはおろか、今何がしたいのかすらわからない。「だったら、4歳のあなたに聞いてみたら?」。

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最近よくみる悪夢は、貯金が尽きてビザの期限も切れた。さてアメリカから日本に帰国しなきゃいけないのにこのままでは食べていけない。なんのスキルも無く、生活していけないといった内容です。威勢よく父や元カレに啖呵をきったものの、「彼らの言ったとおりの状態になっているなぁ。やはり彼らのほうが人生経験豊富だし、私は世間知らずのバカだったのだなぁ……」と、うなだれたりして。

「大変ですね」「頑張っていますね」と言われますが、目指す方向が定まっているときは、やらなきゃいけないことが山積みでもお金が無くても意外に大丈夫なんです。キツイのは、向かうべき場所がどこなのかがわからないとき。本当に自分がやりたいことが何なのかが定まらず、目を向けられないときです。そして、それはまさに今の私。

渡米理由だったGreater Good Science Centerのインターンを辞め、あのまま続けていても違っていたとはわかっているものの、ぽっかりと空いた穴は未だ塞がらぬまま。目覚ましをかけずに思いっきり寝られる、バンザーイ!と思っていたのも、つかの間の極楽・約1週間。その後は、言いようもない不安感と無価値観が襲ってきます。貯金には限りがあり、ビザのタイムリミットとともに「早く答えを出せ!」とジリジリ迫ってきて―。でも、ど、ど、ど、どうしたらいいのかわからない……。

本音に目を向けること=社会からはみ出してアウト?

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第34話では、直感カウンセラーのリン・ロビンソンさんにすべてのプロセスを信頼して、とアドバイスされましたが、心理的にそう悠長に構えてもいられないチキンな私。「内なる神さま、ヒントだけでもいいからどこに向かっているのかを教えてください!」。そうぶつぶつと祈りながら、UCSFオシャー・センターでのインターン業務前、データ計算を行うためにコーヒーショップへ。私にはデスクがないので、自宅やコーヒーショップを作業スペースにしているのです。『The Left Brain Speaks The Right Brain Laughs(左脳は語り、右脳は笑う)』というランサム・ステファン博士の本を机に置いて席を確保し、注文へ。いつものお決まり、本日のコーヒーとバナナブレッドを抱えて席に戻ると、隣の席に座っている女性が「それ、おもしろいのかしら?」と話しかけてきました。

「あ……これ前にインターンしていたところ (Greater Good Science Center)で借りた本で、まだ12頁ぐらいしか読めていなくて。だからおもしろいかどうかまだよくわからないです。でもややこしい脳神経学の専門用語をうまく説明しているなと思いますよ。なぜですか?」と答えると、「クリエイティブ・ライティングのコースを教えているから、どんなものなのかなってちょっと興味があったの。私はジェイ、はじめまして」。

そこで世間話が終わるかと思ったのですが、ジェイは依然としてがっつりと私側に体を向けています。そこで「あ、私はアヤです。この近くの研究機関で体内感覚と感情のつながりについての研究のアシスタントをしています。日本人と日系人を治験者としたものです」。「へぇ、なにかきっかけがあったの? あなたは研究者かなにか?」とジェイが。「いいえ。私は瞑想の実践者なのですが、その体験から自分が思考に巧みに騙されていると感じまして。では、体内感覚はどうだろうと興味を持って、お手伝いすることになりました。でも、この研究に関わりながら、私も含めて日本人にとって体内感覚に繋がるということもまた、難しいんじゃないかと感じています」と話しました。

「おもしろいわね。それはどうしてなのかしら?」とジェイ。「”出る杭は打たれる“ ということわざが日本にあるのですが、ご存知ですか?」とたずねると、ジェイが肩をすくめます。「アメリカ人に比べて日本人は集団の和の中で生きています。目立ちすぎないように注意を払い、規制し合って、助け合って、均整をとる。例えばスターバックスのトイレだって、こちらアメリカと違って日本のものは驚くほど清潔に保たれています。でも体というのは個々のもので、誰ともシェアできませんよね。だから悲しみを感じると胸がギュッとするとか、何か釈然としないとお腹のあたりがざわつくといった体内感覚に繋がるということは集合的な価値観から独立した “自分” とアクセスするということ。それは私たちの感情にもつながっていくことだと感じています。でも、そういった体内感覚に敏感になってしまうと、和を保つために “我慢” が重んじられる日本社会にうまく適合できなくなるんじゃないかという無意識の不安やタブーが私たち日本人にはアメリカ人よりもあるんじゃないかなと感じるんです」。

「あなたもそうなの?」とジェイが身を乗り出して聞いてきます。「正直を言えば、そうですね。瞑想なんかをやっていますけど、体内感覚につながった結果、抑圧していた感情とも向き合わないといけないので、しんどいですね」。「でも大切なことよ。どうか、あなたの感覚を信頼して、愛情込めて自分を大事にしてあげて」とジェイ。「でも自分を大事にするという感覚がよくわからないです。集団の価値観の中で生きてきましたから、いきなり好きなことをやればいい、何がしたいの? って言われてもよくわからないです」。ジェイがびっくりした様子で聞きます。「それって子供の頃から?」。

あるがままの喜びを知るのは、4歳の頃の私。

「たぶん、子供の頃は違いました」。「じゃあどんなときに喜びを感じて自分を大事にできているなと感じた? 子供の頃を思い出してみて」。なんと突然ジェイによる公開カウンセリングが始まりました。コーヒーショップで、笑!「祖母の家で、ただひとりで落書きをしていたときですね。それは、完全な安全と安心感のなかで。描いた絵がうまかろうが下手だろうが誰にもジャッジされない。ただ絵を描くのが楽しいから描くというような、その先のことや評価を考えなくてもいい。ただ今やりたいことをやってOKという守られた感覚のときですね」。「それっていくつぐらいのとき?」。「4歳ぐらいかな」。「じゃあ、これから何かをするとき、4歳の頃のあなたに聞いてみたら? これ、本当に楽しい? やりたいの?って」。

「でも人生の大切な決断を4歳児にさせるって、だいぶリスキーじゃないです?笑」と私。するとジェイに「だけど、4歳のあなたしか、あなたの喜びがわからないんでしょう?」と言われ、まさにその通り。「でも私たちは学ばないと、知識を得ないと、経験しないと何かに到達できないと考えていますよね? 4歳児の私に比べて、今の私のほうが長く生きてきた分、それが多少あると思うんですが」。するとジェイが優しく辛抱強く私を諭します。「そうじゃないの。外側の何かは確かに論理的に物事を判断したり、整理する助けになると思うわ。でもね、大事なのはあなたの内側の感覚。嬉しいとか、悲しいとか、辛いとか、あなたの心と体が今何を感じているの? それを聞くのよ。そして、信頼して答えを待つの。その結果として、あなたのクリエイティヴィティとも繋がれるの。内側に聞いて待つ。必要なのはそれだけよ」。

するとどんどんどんどん私の自我が、ジェイの言葉を受け入れたいのにそれを無視しようと躍起になります。「ただ今を感じるなんて、贅沢すぎませんか? 私はマインドフルネスの実践者でもありますが、いっぽうで “今を生きる” ということに罪悪感を持ってしまうんです。未来や過去に対して無責任な気分がして。ただ自分の感覚とつながって、今を感じるって、それっていいの?って。社会に対して何も還元できないばかりか、自分の人生をも放棄しているようで…」。するとジェイがキッパリと言います。「それは違うわ。今という瞬間にしっかりコミットすることで、過去や未来も獲得できるの。むしろ全てとさらに強く関わり合えるのよ。”ただあなたである“ というのは、人生を放棄して漫然と好き勝手に遊ぶというのとは違う。今に寛ぎ、それを味わうことで、何をあなたが感じているのかを知る。そこから気づきや本来やるべきことに導かれていくのよ」。

私たちをもろくするものは、私たちを美しくするもの。

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初対面にも関わらず90分ほど話し込み、「いつでも連絡ちょうだい」と最後に名刺をくれたジェイ。彼女は作家だった。17歳で子どもを産み、38歳で夫を亡くして未亡人となり、45歳でスタンフォード大学で学士を取得し、孫が産まれた年にフィレンツェへ海外留学。自分より半分以上年下の同級生とともに学んだ、とインターネット上にありました。全く違う部分もたくさんあるけれど、どこか私の人生と重なる部分もある。しかし人の人生にはそれぞれにそれぞれのタイミングとドラマがあるものですね。体内感覚のように誰ひとりとして全く同じ体験は無く、それが美しい。

ジェイに会った翌日はインターン業務も無く、完全なオフでした。そこで「よし自分を大事に喜びで満たしてあげるぞ」と、あのカフェに行って名物チャイを飲み、あの映画を観て……といろいろと妄想するも一応、4歳児の私を心の中に思い浮かべ確認してみます。「何がしたい?」と。すると、「家に居て、GREの勉強がしたい」と言うのです。意外!! 実は前日に「いったいこれからどうするんだ?」と、心配したおじからもらったメールにも「今は大学院を目指す意味がわかりませんので、もうGREは勉強しません」ときっぱり返信したばかりだというのに。ビザだってあと2年しか残っていませんよ? 貴重なアメリカ生活、目標も定まっていないのに、部屋にこもって参考書を読んで潰すのーーー?!

で、ふと気がついたのです。頁を開くたびに意味不明でため息すら出てしまう、GREの参考書。文章題を解こうとするたびに「私って、救いようのないほどのバカ……」と自己肯定感もひたすら下げてくれる、G・R・E! 今の私にとってGREというのは「やってもムダ」「時間がもったいない」「ムリだ」「結果は出ない」「(人と比べて)今の私って(歩みが遅くて)恥ずかしい」という私のネガティブな自己知識や信念体系を最も顕著に投影してくれる存在だったのです。

でも4歳児の私にはただそれを「やりたいからやってみて悪いの?」「結果が伴わなければ、チャレンジしてみたいって気持ちをムシしなきゃいけないの?」「絶対にどこかに向かってないとやっちゃいけないのかなぁ……?」と、なぜ熱意において成功の保証が必要なのかと、疑問でならないのです。

そこで、今に集中して完全に不安や思考からフリーな状態になれていたあの頃を思い出してみます。「あぁ、そういうことなのか……」と、とりあえず参考書に向かってみました。今やっていることが何なのか、その先にゴールがあるのかすらも正直わかりません。さらには未だに大学院を目指したいのかもわかりません。でも、結果を手放し今に集中するというレッスンをしているんだなとわかりました。GREというのは単にそれをわかりやすく表現してくれているひとつのフォームに過ぎないのです。この先、これに変わる別の対象物が見つかるのかもしれないし、これこそがその対象物に向かうための必要な過程なのかもしれません。それはまだ今の私にはわかりません。

ただ、私の体験からみなさんにもお伝えしたいことがひとつあります。思考にトラップされて、言いようのない不安を感じることがあっても、自分が存在するのに値しないという恐れがあったとしても、助言が必要なときに心を開いて待てば、必ず答えはいつかやってきます。それがいつになるのかはわからないし、その形もさまざま。例えば今回の私のケースのように通りすがりの人の言葉だったり、または友人からのメールだったり、ふと目にした看板のメッセージだったり、耳にした音楽のフレーズや本の一節だったり、です。そして「答えが欲しい」とすがるような気持ちにさせてしまう、心をもろくするものこそ、私たちを美しくするものなのかもしれないとも感じます。

See You!

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猫の写真:
愛想笑いなど一切しない近所の猫。でもどうしても友だちになりたくて、おそるおそる近寄ってみたら、くしゃみをされて鼻水をぶっかけられました。自立について学びます。

Activistの写真:
学生活動家などのアクティビストたちが盛んにそれぞれの意見を述べたり、抗議のデモや集会をするバークレー。トランプ大統領就任以降、『Black Lives Matter(黒人(も白人もみんな)の生活は大切だ)と書かれた紙が貼られた窓を数多く見かけます。正直私はどこかいつも取り残されたような気分になります。なぜだろう?

Bouquet marketの写真:
CAVIER & CIGARETTEのオーナー・ブロンディに誘われて足を伸ばした、ブーケ・マーケット。バークレー 4th streetで定期的に行われる感度の高いマーケットで、デッドストックショップや新参デザイナーのジュエリーや家具などが揃います。

SEE YOU!
週一で友達に教えているヨガでの一コマ。これが公園だというのだから、すごく贅沢。バークレーの豊かな自然にはいつも深い安らぎとインスピレーションを与えられます。



【これまでの「会社を辞めて、こうなった」】

【第1話】37歳で再スタートって、遅いですか?
【第2話】サンフランシスコ式クリスマスの過ごし方。
【第3話】まるでBar状態! サンフランシスコ図書館は、フレンドリーすぎ!!

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