会社を辞めて、こうなった。【第54話】 人生初! クンダリニー瞑想で変性意識の世界を垣間見る。

写真/文・土居彩 — 2017.7.11
「羨ましい」「あれを持たないと」「私は至らない」と、人と自分を比べてしまう。世界を自分と自分以外に切り離して見てしまうことがすべての苦しみの原因だとはわかっていても、毎回同じことの繰り返し……。そんな迷える筆者・土居は、たまたま遭遇したスピリチュアルセンターでスワミ(ヒンドゥー哲学の先生)のもと、クンダリニー瞑想の手ほどきをうけることになるのですが……。

【土居彩の会社を辞めて、サンフランシスコに住んだら、こうなった。】vol. 54

 

【第54話】人生初! クンダリニー瞑想で変性意識の世界を垣間見る。

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トリカシャラ・クンダリニー・メディテーションセンターは、バークレー西部にあるクンダリニー瞑想センターです。トリカシャラとは、インド・カシミール地方で興ったヒンドゥー教シヴァ派の宗派のひとつ。ちなみにサンスクリット語でトリカ(Trika)とは、意識、エネルギー、(犬だったり、石だったり、あなたや私だったりという…)固有の形式で存在する生きとし生きるものの顕れ、という三位のこと。そしてシャラ(shala)は学派を意味します。

具体的にここで何をやっているかというと、スワミ(ヒンドゥー哲学の先生の意味)ケチャラナタ(通称・ナタジ)がクンダリニー瞑想を無料で教えているのです。ちなみにクンダリニーとは、「とぐろを巻いたもの」「螺旋状のもの」「ヘビ」という意味。人間のもっている潜在的な力であり、それは宇宙に存在する根源的なエネルギー。普段はとぐろを巻いたヘビのように眠っていますが、チャクラと呼ばれる7つのエネルギー中枢を覚醒させ、尾てい骨から頭頂を走るクンダリニーエネルギーを目覚めさせることで、心と体を解放できるというのです。怪しいですか? 笑。もしよかったらついてきて下さい……。

ハートを解放させるダブルブレス呼吸瞑想。

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どうしてわたしがこのセンターに行き着いたかというと、ヨガを再開しようとインターネットでスタジオ検索しているときにたまたま見つけたんです。訪ねてみると「…ヨガクラスのお問い合わせで」というのがはばかられるほど、本気度がビシバシ伝わってくる、エキゾチックな場所。瞑想教育を中心に提供しているスピリチュアルセンターといいますが、ヨガに関してはワンクラス、カーヴィーヨガというものがあるといいます。ハタヨガの一種にそういうものがあるのかな?と「カーヴィー(曲線的)な動きをするものでしょうか?」とたずねると、「カーヴィーな(身体にお肉がついている豊満な)人向けのクラスということです」と言われ、「あ、文字通りのカーヴィーなわけですね」。「ははは、そう文字通り(Yes, literally!)」と、センターの老紳士とともに和やかに会話を交わしました。痩せっぽちの私がそのクラスに参加している構図を2人で想像し、同時に違和感を覚えて苦笑い。「ヨガは週に一度ですが、火曜日と木曜日の夜はスワミによるクンダリニー瞑想のクラスが、そして月・水・金の朝は瞑想室をみなさんに開放していますよ」と言われました。「参加費用はいくらですか?」と聞くとキョトンとされ、「無料ですよ」と当然のように言われます。

「は? このべらぼうにお金がかかるベイエリアで(家賃は東京の倍以上)無料とはどういうこと?!」。その太っ腹さも気になり(カーヴィーヨガはしないけど)、帰宅しても気になってしまい、どうにも落ち着きません。どんなに克服しようとしても、”私は不十分だ“、”自分以外の人が羨ましい“ と、人と自分を切り離して比べてしまう思い癖が治らないことも重なり、参加の場合は事前連絡をと教えてもらった問い合わせ先にいてもたってもいられずに電話。すると「瞑想は19時からですが、初めて参加なさる方にはその前に1時間イントロの時間を設けて、心構えなどを指導しています。そこで18時にいらしてください」と言われました。

当日ドキドキしながら向かうと、イントロ講習の生徒は私ひとり。スワミのお弟子さんが先生です。「か、貸し切りレクチャー??」。バークレーで4学期間、一学期につき約200万円というべらぼうに高い学費を払い続けてきた私としては、目が点です。インド哲学の流れとクンダリニー瞑想の歴史、瞑想の流れ、心構えなどを説明してもらった後、「では少し練習してみましょう」と10分間の呼吸法を教えてもらいます。それは、このセンターで教えるスワミ・ケチャラナタの師のひとりであるスワミ・ルドラナンダ(ルディ)が開発した、ダブルブレスというもの。具体的には……。

【ハートを開く、ダブルブレスの方法】

1.深呼吸をします。手放し、リラックス。
2.1の呼吸にはスピリチュアルな力と滋養が満ちていることに気づきます。
3.息を吸い、それがハート・チャクラ(胸、心臓のあたりに位置するエネルギー中枢)へと向かっていくように意識をします。呼気が喉に位置するチャクラに流れてきたら、飲み込みます。息を力づくでコントロールしようとするのではなく、自然とあなたの胸を満たしハートを開いていくようその流れに身を委ねます。ハート・チャクラをリラックスさせて。意識が拡大していく様子、心身を成長させたいというあなたの深い願いを感じます。深くハートを開き、心に浮かぶ心配事や問題、区別性を手放します。呼吸を10秒間ほど、もしくは自然とリリースされていくまで胸に留めます。
4.3の呼吸の1/5程度をリリースします。胸のなかにあるエネルギーに意識を留めます。
5.再び呼吸をし、呼吸と意識をハートを通過させた後、おへそのあたりにあるチャクラに向けていきます。息を優しくおへそにあるエネルギー中枢に留め、深くリラックスします。拡大されていくエネルギーとともにお腹が柔らかく、開いていくのを感じます。10秒間ほど息と意識をおへそのあたりのチャクラに留めます。息を吐くに従って、性器のあたりに位置するチャクラと背骨の下に向かって自然とエネルギーが拡大していくのを感じます。
6. 背骨の土台をリラックスさせ、背骨の下から頭上に向かってエネルギーが上昇していく様子に身を委ねます。エネルギーを感じます。

ダブルブレスの後に頭がボーッとしていると、「質問はありませんか?」とスワミのお弟子さんに笑顔で聞かれます。そこで「ハートのチャクラに呼吸と意識を向けたときに、詰まりのようなものを感じました。スムーズに呼吸やエネルギーが流れません」と相談。「ハートを開くのは誰にとっても大変難しいことです。そこで、少しずつやっていきましょう。スワミも30年以上アシュラムに住み、1971年から現在まで46年間実践・指導なさっていますが、まだまだご自身には成長できるスペースがあるとおっしゃっています」。

「私は両親に愛されて育ち、恵まれた環境で生きてきたのに、なぜでしょうか? どうしてしばしば人と自分を比べてしまい、心を閉ざしてしまうのでしょう」とたずねると、「ひょっとすると現人生での経験した結果とは関係なく、魂そのものが持つ個性も影響しているのかもしれませんね。私たちには誰にでもクンダリニーの力が潜在しています。そこで私たちができることはクラスに参加し、自分自身を清めてエネルギーを強くすること。”いつ自分を解放させることができるのか“ と心配するよりも、ダブルブレスを自習し、クラスに参加してただ練習をするのです。実践し、経験しながらすべてを自然な成り行きにまかせることで、必要なタイミングで必要な能力が身についていきますよ」。

ついにスワミが登場!

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イントロ後、美しい絨毯が敷かれた講堂に通されました。「またひとりだったらどうしよう…」という心配は杞憂に終わり、瞑想ホールには約40名が集い、人種比率は、8割以上が白人。インド人を含めたアジア人が2割、黒人はいませんでした。けれども参加者の年齢は20代から80代と大変幅広い。これはバークレーで参加したマインドフルネス瞑想のサンガと異なる点でした。インドのギター・シタールなどの生演奏のもと、まず全員でチャンティングといってマントラをメロディーに合わせて詠唱します。実はなんとなく宗教的なイメージを受けて最初は引いてしまったのですが、普通にメロディーとして美しい。そこで先入観を手放し、目を閉じてその音とエネルギーに心を傾けてみることにしました。チャンティングも終盤になり、スワミが登場し祭壇に。想像していたのとは違い、白人の男性でした。「なんて強いオーラがある人だろう!」

その後、目を開けた瞑想、オープンアイクラスが行われます。瞑想中はスワミとアイコンタクトをします。スワミは瞑想参加者それぞれと1,2分程度目を合わせ、それが5,6回繰り返されます。エネルギーのことを一般的にシャクティ(shakti)といいますが、トリカシャラではスワミの目を通じて、直接シャクティが伝送されます。その際に私は摩訶不思議な体験をすることに。4回目のアイコンタクト中でしょうか。目の前の世界がものすごく強い光に包まれたのです。麻酔をかけられたときのビジュアルってありますよね。そのような蛍光色の強い、強い光の中の世界です。そのなかにスワミの目があった場所に、2つの黒い点が見えます。オープンアイクラスも大詰めを迎えると、痙攣しだす女性がいたり、腕を上げたり下げたりし始める人、そして後ろに座る男性はずっとゲップをしています。

「なんじゃあ、こりゃあ?!」と仰天たまげて、開いた口が塞がらない。自分でもわかるんです。バカみたいにあんぐりと口を開けているのが。でも閉じることもできないんです、唖然としすぎて。「うわぁ……キレイだなぁ……。もっとこの景色のなかに居たいなぁ」と思っているうちにスワミは他の人へ目線を向けます。その途端、また普段通りのビジュアルの世界に戻ります。

スワミが目を閉じた途端、オープンアイクラスから、目を閉じる瞑想に切り替わります。しばらくすると、スワミが私の額に手を触れ、第三の眼(サードアイ)がある眉間のあたりに指をぐっと食い込ませて開き、クンダリニーが通過しやすくなるように姿勢を正します。すると、目の奥に青い光のようなものがボォッと浮かんでくるんです。

最後にQ&Aです。ぶったまげすぎて何も質問ができなかったのですが、ある人の質問に対するスワミの答えが私の体験へのアンサーでした。「クンダリニー瞑想とは、心を開き、体験したことを手放す。そして制限のある自分の物の見方や理解から自由になるためのものです。感覚が鋭敏になるとか、超能力を身につけるとかそういうたぐいのものではありません」と、キッパリ。「今まさにわたしが取り組みたい課題だ……」。

満たされた気持ちでいっぱいになりつつ、何か理解を超えたものを体験したことで、頭をボーッとさせながら家に帰ったとたん、おばあさんの遺産相続人の方からメールが入っていました。そこには「学生であるあなたと、今後さらにお世話を必要とする彼女がこれ以上一緒に暮らすことは、あなたのためにも彼女のためにもやはり難しい。そこで今月末で出ていって下さい。今まで本当にあなたの思いやりあふれる彼女への対応を感謝します。引っ越しの際はお手伝いしますので、おっしゃってくださいね」というメッセージが……。「え……」。ショックを抱えながらも、「この出来事は、いったいどういう意味なんだろう?」。「この状況で、私はどうハートを開けと言うんだろう?」。偶然にも年に2回のリトリートがたまたま2週間後にあるということで、参加を決めるのです。

See You!

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センター外観の写真:
大きな窓に差し込む光線が、まるで虹のよう。

講堂の写真:
毎週木・金の19時〜1時間半程度瞑想とQ&Aが行われる。初めて参加する場合は、INTRO(18時〜)を受ける必要が。

Peaceの石の写真:
ハートを開き、体験を手放すことで平穏が手に入るとスワミ。またそれは無関心、無感覚になるということではないという。いったいどういうことだろう…?

SEE YOU! 写真:
センターのトイレが超ゴージャスで思わずパチリ。



【これまでの「会社を辞めて、こうなった」】

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