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会社を辞めて、こうなった。【第46話】 失恋の意外な副効用。 渡米2年で冗談が飛ばせるように。

写真/文・土居彩 — 2017.4.4
渡米前に「アヤの良いところがアメリカで失われないといいけどな」とモト彼に言われたことがあったんです。で、再びFacebookを通じてやり取りをするようになったとき、それは一体何?と聞いてみたら__。

【土居彩の会社を辞めて、サンフランシスコに住んだら、こうなった。】vol. 46

 

【第46話】失恋の意外な副効用。渡米2年で冗談が飛ばせるように。

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「アヤの良いところは、どこか全てを一歩引いて見ているところ。たくさんの人が飛び交う雑踏のなかにいてもアヤの周りだけちょっと空気が違うというか。そこがアヤの美しさなんだけど、アメリカじゃそういう態度は評価されない。上の世界まで行くとまたそういう視点や生き方が評価されるんだけど、その場所に到達するまでにはいろんなコードがあって。例えばどんな服を着ているかとか、どういう車に乗っているかとか、どういう家の出身かとかね。人間として大事なのはそんなところじゃないって言いたいけど、そういうものを重んじる関所もあるんだよ。で、今のアヤの立場は学生。『先生に評価されないと』『学校に認められないと』とまさに関所の真ん前にいる。だから控えめな美徳をもち続けようとしたところでアヤの良さが認められなくて、傷ついちゃって……。その結果アヤがどうしようも無くなったら、悲しいなって」。と失恋する前、元カレに言われた。

「なるほど。ありがとう」と電話を切ったあとに、号泣した。図星だったからだ。私はアメリカでジタバタするばっかりで、何者にもなれていない。今のプログラムだって、4学期間必死に勉強したところで学位はとれない。お金と時間ばっかり使って、いったい何をしているんだろう……? ふと我にかえって、夜中に目が覚めてゾッとすることもある。この彼の言葉から最初は優しさを感じた。この人は、本当に私のことわかっているなぁと。でも、次第にものすごく悔しくなった。何者でもないと自覚しているので矛盾しているのだが「私ってそんなアメリカでダメな感じ? このままの私じゃ、やっぱりどうしようもないって思う? 自分なりに精一杯やってきたんですけど」と。私の一生懸命って、そんなに取るに足りないどうしょうもない状態なのかなぁ……。

とはいえまぁ現実問題、大学院を受験するためにはGPA(大学の成績)も重要だと言われてガリ勉生活、全教科Aをマークしているけれど……神様の評価って残酷。オックスフォード大学院卒の同プログラム生に「講義の音源、録っといて♡」と頼まれ、彼女はハンサム、エリート、金持ちと三拍子揃ったダンナとマレーシアの無人島にバカンスへ。そんな彼女は早々とプログラム卒業前にケンブリッジ大学院に合格し、さらにはビル・ゲイツ財団からのフルスカラーシップもとったという(私なんて大学院の受験申し込みすらできていない……)。世の中にはこういう人がいるのだ。アメリカ南部出身の金髪美人、10歳年下、感じもよくって頭も良くてすでにお金持ちなのに奨学金で名門校へ。まぶしすぎて直視できない……。彼女が春休みを利用して愛するダンナとバカンスへ行っている間、私は何をしているかといえば70歳の同級生おばあちゃんに「あなた、99点とったんだって!?」と懇願され、彼女の追試のためにケトナー博士の授業『Human Emotions(人間の感情)』のテストポイントを教えている……。Ms.地味 in California! ねぇちょっと、神様。これってあまりにも不公平じゃない? 

気に入られようと必死だったワタシ……。

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いったい今まで私はどう生きてきたんだっけと、よくよく自分の行動を振り返ってみると、とにかくモト彼に気に入られたくて頑張っていたのかもしれない。3か国語を巧みに操り、海外で仕事をし、立派すぎる学位を持ち、家柄もいい彼。離婚した妻との間に子どもだっている。いっぽうでろくすぽ英語も話せない、学歴だって中途半端、親になったこともない私。もっとキレイにならないと、もっと賢くならないと、もっと洗練された人間にならないと。かつ、何をされても常に微笑みを絶やさず、不満は言わない……。相手にとって好ましい人間にならないと、という無意識の脅迫観念があったのではないかと今は思う。でも気に入られようと努力したところで期待通りの結果が得られるとは限らない。たとえ評価を得られたとしても、一生「理想通りの(都合の)いい女」を演じ続けなければいけない。それって、しんどい。で、それをやり抜けるほど根性も据わっていない私には、やっぱり無理。

会社を辞めてアメリカで過ごしてきたこの2年間、「子どもも産まずに何しているの!」とか、「おばあさんの世話をしながら居候生活なんて、情けない」とか。いろんな人に助けられてきたいっぽうで、いろいろ言われたり、利用されたり、無視されたりしてきたけど、彼の言葉がトドメを刺した。「こう見られたい」とか「これをしたら、気に入られるかも」だとか。もうどうだっていいわ……。別に好かれなくてもいい、他の人とズレてていい、評価されなくてもいい、これが自分なんだし仕方がない、と。ある意味負け犬の遠吠えだが、そう開き直るとずいぶんラクになった。まさに肩の力が抜けたという感じ。

エリート美女に垣間見た、成功者の秘訣。

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あるときエリート美人な彼女が「アヤ、お茶に行こうよ」と誘ってきたので、彼女のお気に入りのマッチャラテを一緒に飲みながら正直に思っていることをぶちまけてみた。「あなたがケンブリッジに受かったって聞いたとき、すごく誇らしかった。立派だなぁって! でも同時に嫉妬心と劣等感と自己批判を感じたよ。私ってあなたに比べて全然ダメだなぁって。あなたってなんていうか完璧なんだもん。感じが良くて美人で理想的なダンナさんがいて、人生をちゃんと楽しみながら一生懸命努力もして。生き方のバランスが良い。そのうえケンブリッジじゃん!」。バカと思われようが、子供じみた狭量な女と思われようが、もうどうでもいいのだ。まさにやけっぱち。すると、彼女が話しだした。「ほら私オックスフォード大学院に行ってたでしょ。最後の論文をね、気に入ってくれた教授とこんなもん話になんないわってズタボロに言った教授がいたの。で、結局卒業したけど学位は取得できなくって、打ちひしがれていたときに論文を評価してくれた教授が『ケンブリッジでこういう研究があるから、キミ興味があるんじゃない』って研究チームを紹介してくれたの。で、そこのプロジェクトを手伝って人脈を作って……。今回の結果なの。ストレートに見えるかもしれないけど、ここまでってホント紆余曲折。意外と時間がかかっているのよ。人生とか評価なんてどこでどう転がるかわかんないじゃない。だからガーッと頑張るけど、あとはなんていうかさ。どうなるかっていうのはもう運に任せるしかないわよね」。

彼女の思考パターンを観察しながら、あぁこういう人が成功するんだなぁと妙に納得した。そこで「あなたは白鳥だったのねぇ」と彼女にいうとキョトンとしているので、「ほら、湖面で優雅に漂っているように見えて水の中では必死に足を動かしているという比喩ね」と説明すると、彼女が「まぁ、でも私はラッキーよね」とニッコリ。うまくやっているように見える人も、それぞれ苦しみや痛みを経験しながら、努力している。そして浮き彫りになったのは、私の不必要なウェット感。これはもうそろそろ手放そうか。必死にやれることをやるだけやって、あとは野となれ山となれ。

「しゃーないやん、これが今のワタシなんだし」。

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と、あらゆることへの期待値を下げ、目の前のことだけに集中して過ごしていたとある日。バークレーに仏教瞑想が脳に及ぼす効果について研究していることで有名な脳科学者がドイツからやってきた。「アヤ、彼女の研究に興味があるでしょ?」と大学院生のひとりが誘ってくれ、脳科学者、ケトナー博士、ケトナー研究室の大学院生たちと一緒にランチをいただくことになった。私は彼女の論文について聞きたいことがたくさんあったから、尻尾を振りながら馳せ参じた。輪を囲んで大学院生たちが自分の研究について簡単に説明しながら自己紹介をしていく。私は大学院生ではないので、「あ……嫌だな。この流れ」と思ったのだが、今の私は「しゃーないやん、これが今の私なんだし」の開き直りモード。そこで「えーと、私は大学生でも大学院生でもなく、文字通り中道をいっております(仏教研究だけに)」と自己紹介をしたら、ウケた。

よし、お役目果たした、次! と思っていたら、優しいケトナー博士がこのままでは私が浮かばれなさすぎると気遣って、「アヤは日本のジャーナリストで、この間アメリカの禅について素晴らしい記事を書いたんだ!」(BRUTUSのZEN特集でお仕事させてもらったとき、ケトナー博士にエサレン研究所の偉い人を紹介してもらった。そこで先生に掲載誌を届けたことから、「こういうことをしている人なんだ」と把握してくれた様子)とフォローしてくれるも、科学者とはほかの研究者がどんな研究をしているかには興味があっても、日本からやってきたジャーナリスト(?)の端くれがどんな記事を書いているかなんてほぼ興味が無い。そんな冷めた空気をひしひしと感じるなか、どんな記事だったかを必死に説明してくれるケトナー博士。先生、いい人すぎるよ……涙。アメリカでとても権威のある科学者である先生にこんな浮かばれない思いをさせてすみません……。普段ならこんなふうに無視されることってないですよね? 今度から先生が言ってくれた私の人生のハイライト的な自己紹介文を一字一句丸暗記して、責任持って自分で宣伝します……(いや、しないな……)。とはいえ、また先生の優しさを知ることができた。

失恋も悪いばかりじゃない。

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失恋は辛いし、いいもんじゃない。できれば正直避けていきたい。でも、100%悪いことだけっていうわけでもない。周囲への期待値が下がると、意外にも目の前の人のことがもっとよく見えるようになる。自分のこともそうだ。「こうじゃないと」と、アメリカで構えすぎていたのかもしれない。いったい何が起こっているかがわからなかったのは、英語がわからないってことだけじゃなかったのだ。「どう見られているか」ということに自意識過剰になりすぎた結果、アメリカのことが全然見えていなかった。他人の評価からいったん自立すること。これは今の私のテーマだと思う。とはいえ自分の生きざまを貫いた結果ホント周りに誰も居なくなって、野垂れ死にするかもしれない−−−。だから、バランスが大事。自分の考えを持って、それを試してみる勇気を忘れないこと。トライした結果や相手の反応は手放すこと。そして自由に生きながらも、自分とは違う人の生き方を尊重することも忘れない。で、ま、やるだけやってみないと、わからないってことですよね。

See You!

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★今回は、バークレーっていいなと思った写真をご紹介★
キリンの写真:
近所を散歩していたら、窓辺にキリンが!

グラフの写真:
バークレーの先生が選ぶ教科書は、ものすごくお茶目なジョークを飛ばしてくれることも。読んだ(教科書の)章が増えるにしたがって、精神的な豊かさが減っていくという架空の相関図。

花の写真:
生まれて初めて、バークレーでフレッシュなジャスミン(左)の香りを嗅いだ。

THE GHOST FACEの写真:
「いいなぁ」と、羨ましかったTシャツ。イカつめな自分のルックスを把握したうえでファッションを楽しんでいるベーカリーの店員さん。ホント、ウィットに富んでてオシャレ。

本に虹:
コーヒーショップでBRUTUSのZEN特集用にアラン・ワッツの『THE SPIRIT OF ZEN』を読んでいたら、ページに虹が♡



【これまでの「会社を辞めて、こうなった」】

【第1話】37歳で再スタートって、遅いですか?
【第2話】サンフランシスコ式クリスマスの過ごし方。
【第3話】まるでBar状態! サンフランシスコ図書館は、フレンドリーすぎ!!