女子を襲うていねいな暮らしマジック。

2015.8.22 — Page 3/5

1万円+作業時間に夢破れる

 食べかけの弁当を放り投げ、私はiPhone片手に「クックパッド」でレシピを検索する。ちなみに、大好きな松浦弥太郎さんは現在「クックパッド」にいらっしゃるそうだ。なんたる因果! 味噌なんて小学生の家庭科で作って以来、自家製にしようと思ったこともなかったが、材料は大豆と麹と塩で、これらを発酵させると出来上がる。自家製味噌で作るみそ汁を、レースカーテンから朝日が差し込むダイニングでいただく。目の前には優しく微笑むステキな男性がいた日には、嗚呼、ていねいな暮らしサイコー!! 妄想しながら夜中に一人でうっとり微笑む。
 明日はオーガニックショップ「ナチュラルハウス」で材料を買おう。そう心に決めながら、iPhoneで「楽天」を開き、適切な味噌を作る“かめ”を探す。番組で使用していた物と似た容器を見つけ、手が止まる。
「そ、送料入れると6000円?! 結構高い」
 かめが6000円に材料も入れると約1万円。1万円で魔法が現実のものとなり、ステキな自家製味噌ライフが手に入るのは、安いか高いか…
「ダンゼン安いでしょ!」
 思い立ったら止まらない性格が、購入のボタンを押し――
「っと待った。サイズ大丈夫かな?」
 危うく発酵場所の確保をせずに、かめを購入するところだった。メジャー片手に、今度はキッチンにダッシュ! 久しく開けていないシンクの下の扉を開け、中を確認する。大して料理もしないのに、乾麺や調味料が思いのほか揃っている。そうだ、ここは元主婦の家だった! そんなギャグを一人かましながら、かめを置くスペースを計っていると、その手がぴたりと止まる。
「こ、これは…」

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