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異性愛が ”当たり前” なのではない 〜LGBTについて理解を深めよう〜|多様な性、LGBTの世界 #1

2017.3.10
最近、“LGBT” という言葉を聞くことが多くなりました。でも、LGBTっていったい何? そんな風に思っている方もいらっしゃるでしょう。LGBTとは、セクシュアル・マイノリティ、性的少数者の総称です。そうした人たちへの理解を深めてみませんか?

異性に ”当たり前” のように恋をしている世界。ぜも、それは決して ”当たり前” ではない

【多様な性、LGBTの世界】vol. 1

私は女性。だから男性に恋をする−。僕は男性。だから女性に恋をする−。幼い頃からそれが ”当たり前” になっていませんか? でも、それは本当に ”普通” なのでしょうか? 性自認が体と心で一致していること。異性を愛すること。それは、いわゆるマジョリティであるだけ。そうではない人も存在するのです。

あなたはいつ、女性だと認識しましたか? もしくは男性だと認識しましたか? それに違和感を覚えることなく、今に至っていますか? 恐らく、違和感を覚えずに女性・男性と認識している方が多いことでしょう。私は体が女性です。しかし、思春期の頃、声変わりをするものだと信じていました。生理なんて来ないと信じていました。でも、実際には喉仏はできず、生理も来ました。初潮を迎えた日、私はそれを信じられずに、ひたすら自分のお腹を殴りました。何で私に生理が来るの? 私は女性なの? 女性として生きていくの? そういった気持ちでいっぱいになりました。あなたには、そのような経験がありますか?

私のように性自認を迷う人間は、マイノリティなのかもしれません。しかし、私のような、いや、私以上に苦しみを持っている方はたくさんいます。”LGBT” という言葉を耳にする機会が多くなった今、あなたもその理解を深めてみませんか?

性の多様性について考えてみましょう 〜LGBTの意味〜

LGBTという言葉は聞いたことがあるけれど、実際に意味を知らない方もいらっしゃるでしょう。そこで、まずはLGBTの意味をご説明します。

Lはレズビアン、Gはゲイ、Bはバイセクシュアル、Tはトランスジェンダー。それぞれの頭文字を取ってLGBTと呼んでいます。レズビアンとゲイは、平たくいうと同性愛者です。バイセクシュアルは、同性も異性も恋愛対象になる方のことを指します。そして、トランスジェンダーは、生まれたときの性別と性自認が違っている方のことです。性同一性障害の方もこれに含まれます。レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルにトランスジェンダーを加えてLGBTとするのは、性の多様性をより象徴できることからです。

セクシュアリティは、大きくわけて三つ。生物学的な性、心の性、性的指向です。生物学的な性は、身体的であるのでわかりやすいかと思います。心の性は、いわゆる性自認のこと。ジェンダーアイデンティティともいいます。性的指向は、好きになる対象の性や表現する性です。異性愛が ”普通” なのでは決してありません。恋愛対象が同性である方もいます。四つ目の性ともいわれる表現する性とは、身体的には女性である方が男装をしたり、男性である方が女装をしたり、社会的に自分が心地よい性別でふるまうことです。

苦しみやつらさを抱えて〜LGBT の実情〜

身体的な性は、前述した通りわかりやすいものです。しかし、セクシュアル・マイノリティは可視化されないもの。目に見えないものは、怖いと思われたり攻撃の対象になったりすることがあります。とある企業では、LGBTは全体の7.6%だと発表されています。これを少ないと捉えるか多いと捉えるかはその人次第ですが、そういった人も確かに存在するのです。性的なことは公には話さないですよね。だから、当事者がセックスモンスターだと思われてからかわれてしまうことがあるのです。その苦しみは想像を絶するものでしょう。

“おかま” と言って差別されることもあります。今では、”ミスターレディ”、”ニューハーフ”、また、おかまに対抗して ”おなべ” という言葉もできています。LGBTはマイノリティではありますが、少しずつ、マジョリティに声が届いている証拠ではないでしょうか。

国連は、2011年にLGBTを基本的人権として決議しました。イスラム教などでは同性愛者が死刑になる実情も踏まえてです。日本も2011年にこれに賛同しましたが、実質的な動きがなかったため2014年に勧告を受けたというのが現状です。一方、欧米では同性婚が進んでいます。日本では、渋谷や世田谷で同性のパートナー同士を婚姻に相当する関係として認めたのが、耳に新しい話ですよね。

当事者である子どもたちは非常に悩んでいるという実情もあります。いじめが起きやすく、先生までもがからかう現場もあるそうです。親も同意してくれないことになると、完全に孤立してしまい、精神疾患を抱えたり、登校拒否になってしまったりということもあります。セクシュアル・マイノリティではない子どもに比べ、自殺率は6倍というデータもあり、社会問題にもなっています。これを踏まえ、学校でのカリキュラムにLGBTの概要を入れることが議論されています。しかし、入らない可能性が高いのが現状です。

あなたは ”たまたま” マジョリティであるだけ。”当たり前” も性的指向の一つ

あなたは、何の疑問も抱かずに性自認をしてきたかもしれません。”普通に” 恋愛をしてきたかもしれません。しかし、そうではない人もいるのです。

セクシュアリティは多様。例えば、レズビアンがいたとしても、ある人とある人とでは異なるセクシュアリティを持っているのです。前述した三つのセクシュアリティはグラデーションのようになっています。ひとりひとり、そのグラデーションを持っているといえるでしょう。最近ではSOGIという言葉もできました。セクシュアル・オリエンテーション(性的指向)&ジェンダーアイデンティティ(性自認)の略で、多様な人間全員を表す言葉です。

LGBTという表現だと、私はLGBTではない、という認識をしてしまいがち。あなたは、SOGIのどこかにいるのです。あなたの ”当たり前” も、グラデーションのなかのひとつの在り方なのだと認識してみてはいかがでしょうか?

取材協力

認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ

http://goodagingyells.net/

代表・松中権